プロローグ
―栗原村住人たちの紹介―
元作さん……十七歳のとき、栗原村に来て鉄道会社に就職。以来一筋、蒸気機関車ドングリ号に乗る。
お夏さん……亡き夫が村の駐在所の駐在員であったことから、住人たちに頼りにされている。
新吉さん……村では一番若く六十歳。元作さんとともに日ごろから村の世話をする。
綾乃さん……東京生まれの東京育ち。夫が栗原村出身であり、夫の死後も村で暮らしを続ける。
徳治さん……頭はボケているが、体はいたって元気である。トキと夫婦。
トキさん……徳治の妻。認知症の徳治の世話に追われている。
吉蔵さん……病気で倒れた妻、タマの介護を自宅でしている。おスミさんは実の姉にあたる。
タマさん……吉蔵さんの妻。脳梗塞で倒れて以来、体半分の自由を失う。
菊さん……夫を鉱山の落盤事故で失って以来、女手ひとつで三人の子供を育てあげる。
スナばあ……九十七歳で村一番の高齢者。独り暮らしだが、いたって健康。
おスミさん……夫の戦死で嫁ぎ先から村にもどる。以来、再婚もせず村で暮らす。吉蔵さんの姉。
鶴じい……九十歳なかば。踊ることが趣味。息子が一人いたが戦死する。
ゴンちゃん………栗原村の最後の駐在員。栗原村が気に入り、そのままいついている。
弥助さん……鉱山が開業してからは農業をやめ、閉山するまで鉱山で働く。独り暮らし。
喜八さん……高齢のため足腰がめっぽう弱い。妻はミツさん。
ミツさん……喜八さんの妻。夫の体の具合をいつも心配している。
冬次郎さん……妻と死別し、子供が帰省しなくなってからアルコール依存症となる。
庄太郎さん……鉱山のダイナマイトの爆破事故で右手の手首から先を失う。
おツネさん……離婚して村にもどって以来、ずっと独り暮しをしている。
澄みきった秋の夜空に、満天の星。
星たちは呼吸をしているかのごとくまたたき、神秘の光を絶えまなく地上に降り注いでいる。
それはまさしく、生命ある星がこの地球へ、宇宙に秘められたエネルギーを注いでいるかのようだった。
その夜。
ひときわ明るい流れ星がひとつ、地球の大気に燃えながら、夜空に一筋の青白い線をひいて流れた。
ほとんどの流れ星は、地上に届かぬまま燃え尽き消滅してしまう。ところがこの流れ星、小石ほどのカケラを残し、山の稜線をかすめながら山あいの小さな村に落下した。はるか遠い宇宙から、まさにそこを目ざして飛んできたかのように……。
この山村、地図のうえでは豆粒ほど。
むろん地図に村の名前は載っていない。が、そこには鉄道が走り、ひとつきりだが駅もある。小さな無人駅で名前を清流駅という。
ただ木造の駅舎はひどくさびれ、プラットホームはひとつだけ。しかもこの駅で、終点の行き止まりとなっていた。
夜光灯だけが灯る構内に、現在では容易に見られなくなった蒸気機関車が停まっている。このこじんまりとした駅に似合って、機関車と客車、わずか二両編成である。それでも星明かりに、機関車のがっしりとした車体が見てとれる。
大きな車輪と銀色のピストン。正面には目玉のようなライトがひとつ。そして頭には、太くて短い煙突がついている。
この蒸気機関車、まさに時代の産物と呼ぶにふさわしい。
黒い車体が青い炎を放ち始めた。
やがて……。
その青い炎は、透明に近いブルーへと変わっていったのだった。