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4/10

屋敷での誕生日パーティーが、1か月後に迫っている。そのためジファール家での、4人のお茶会は一時休止になった。私は招待状の準備やパーティーの準備、女主人として采配することが増えて、あのドレスの一件の時に手紙を送ってから、ダニエル様とも会う時間が取れない状況になっていた。


本来なら今年はダニエル様に婚約者として、婿になる方として色々と取り仕切ってもらう予定だったのだが、あのドレスを送り返した理由を書いた手紙、その他にも何通か手紙を送ったが全く返事がない。


手紙の返事がないことは父にも伝えて、婚約者の正式発表どころか、このまま婚約を続けていくのは難しいのではないかと、思っている。去年の誕生日の頃は婚約したばかりで、発表するのは来年の誕生日にしようと両家で取り決めていたのだ。


ダニエル様の失態にも繋がる話なので、家同士の話にせずにダニエル様と直接、話をしたいのだが…返事が来ないのでなんともしようがないのだ。

まあ、毎日忙しく考えることが多すぎてダニエル様のことを考えるのは、私と父の間でもつい後回しになってしまうのだけれど…。


あれから妹は、今の屋敷の現状ではジェレミー様も招待出来ないので、ラヴァル家での花嫁修業の時間を増やしてもらって、向こうの屋敷でお茶会や、お出かけをしてジェレミー様との交流をしている。

その合間に、招待状のデザイン選びや、パーティーの花選びなどを手伝ってもらっている。妹も手伝いが嬉しいのか、機嫌良く庭の花の植え替え指示を楽しそうにしてくれている。


今日は招待客の出欠の最終チェックと、やっとドレスがアルエット商会から届いたのでサイズチェックをする日だ。今日は妹はラヴァル家で花嫁修業の日。妹がいない日を選んでドレスを持ってきてもらったのだ。ドレスを見て妹が『とりかえっこして』と言ってこないように。


「アネットお嬢様、本当に良くお似合いです!」


「デザイナーも喜びます!」


「当日が楽しみですね」


口々にみんな褒めてくれる、少し光沢のある生地が柔らかいカーブを描いて色々な表情を見せてくれている。


「ありがとう、このドレスなら生地の魅力を充分伝えられそうだわ」


商会の従業員たちにもお礼を言って、労う。

同じ生地のアスコットタイも一緒に持ってきてくれている、ダニエル様とお揃いで着けるためにお願いしていたけれど、このまま手紙の返事も無ければ、ダンピール家に送ってもどんな扱いになるのかわからないし、まだ発表前の生地を迂闊に送れないので当日までこちらで保管するしかなさそうだ。


そんなことを考えながら、ドレスを手早く脱いでメイドに声をかける。


「いつもの場所に鍵をかけてしまっておいてね」


「はい、かしこまりました」


ジファール家には開かずの間があって妹に見られては駄目な物を保管している部屋があるのだ、そこに厳重に鍵をしてもらってアスコットタイも、ドレスと一緒に部屋に持っていってもらうことにした。


そうして忙しくしている間に、誕生日当日を迎えた。

結局、ダニエル様からは連絡がないままになっていたので、今日は婚約者として紹介はせずに、パーティーの後でダンピール家とジファール家で話し合いをすることになった。

父にお願いして、ダンピール家には時間をもらえるように手紙を出している。


ドレスアップして招待客を出迎える為に、父と妹と庭のパーティー会場の入口に3人一緒に立っていると、ジェレミー様が1番に到着して妹の婚約者としてホスト側に立つ。ダニエル様にも手紙で早めの時間に来てもらえるように伝えていたがやっぱり来ていない。


「アネット嬢、お誕生日おめでとうございます」


「ジェレミー様ありがとうございます。今日はよろしくお願いします」


「あれ?ダニエル卿は、まだですか?」


「えぇ…少し遅れているみたいね」


そんな話をしていると、ジェレミー様のご両親と弟、弟の婚約者が到着した。にこやかに挨拶の言葉を交わしているとそこにダニエル様が1人でこちらに向かってきて、何故か妹の前に真っ先に立ち周りに聞こえる声で嬉しそうに言った。


「ミシェル!やっぱりそのアクセサリー凄く似合ってるよ」


「ありがとうございます!ダニエル様。いただいたアクセサリー凄く素敵で、このドレスにも似合ってるでしょう?」


その瞬間周りの空気が凍った…。楽しそうなのはダニエル様と妹だけだ。ものすごく不味いことに、この場にはラヴァル家の方々がいらしてこのやり取りを聞かれてしまったと言うことだ。


すぐにジェレミー様と目を合わせ妹とダニエル様を、さり気なく屋敷に連れて行ってもらう。ラヴァル家のご当主様には、後ほどお話をと、伝えて了承してもらった。会場にいた家令にも3人の後を付いて行ってもらったからきちんと手は打ってもらえるだろう。


「お父様、わかってますよね。今大切なのはお出迎えです、ミシェルのことは、ひとまずジェレミー様に任せましょう」


「あぁ、わかった」


ミシェルが心配でオロオロしていた父を落ち着かせて、招待客が揃って挨拶をするまでは乗り切ろう。ダニエル様のお父様とお母様がいらしたが、ダニエル様が私の隣にいないことを何か聞きたそうにしていたが、こちらの雰囲気を読んで挨拶が終わるとキョロキョロしながら離れて行った。きっとダニエル様を探しているのだろう。


一通り出迎えが落ち着き、挨拶をする頃にはジェレミー様だけが会場に戻ってきて、私と父のところに来て2人を別の部屋で閉じ込めて見張ってもらってる事を伝えてくれた。


「ジェレミー様、妹とダニエル様が大変な失礼を、本当に申し訳ありません」


「うん、そのことはパーティーの後にゆっくり話そう。とりあえずこのパーティーは大切なパーティーでしょう?」


「本当にありがとうございます」


「あ、まだ言ってなかった。アネット嬢ドレスとてもお似合いですよ。」


「ありがとうございます」


ジェレミー様と話していたら、本来の目的の生地のお披露目をするのを思い出し、ドレスを褒めていただけたことで、少し力が抜けた。ジェレミー様のおかげで、お集まりの皆様への挨拶も気負いすることなく終わり生地の良い宣伝も出来た。

妹がいないことを聞いて来る方には、急な体調不良で乗り切り、ダニエル様のことは婚約者として紹介した方が、今まで少なかったので隣に居なくても不自然に思われなかったようだ。

代わりにジェレミー様がエスコートしてくださったり、父にしてもらったりでパーティーは切り抜けた。


そして、最後のお客様をお見送りしてこれから話し合いになる。

ダンピール家とジファール家のこれからについて話さなければならない。ラヴァル家の方々にはこの話が終わるまで、別室で待機してもらうことを了承していただいた。ジェレミー様が協力してくださって、家族とお茶でもして待っているから時間がかかっても大丈夫だと言うことだ。本当にありがたい。


まず妹の部屋に行って自分が何をやらかしたのかを、理解してもらうことにする。それが終わってからダンピール家との話し合いだ。ダンピール家のご夫妻は、ダニエル様が問題発言をした時にまだ着いて無かったので、事情はわかっていないが、ダニエル様が会場に居なかった事で良くない話がなされると、薄々は勘付いているようだ。


妹の部屋の前で、声をかけて父と一緒に入る。妹は私の顔を見るなり泣きはらした顔で飛び込んできた。


「お姉様、私せっかくドレスアップしたのにどうして閉じ込められたんですか?」


「わかってないのね、ミシェル」


また新しい涙が出てきたようだ。とりあえずダンピールご夫妻を待たせているので、妹に手短にドレスもアクセサリーも一緒なのだ、婚約者とアルエット商会以外の物を身に着けることは出来ない、それも今日のパーティーのように改まった場所で、付けていたことが問題なのだと伝える。そして、確認しなければならない事を妹に尋ねる。


「どうしてダニエル様から贈られたアクセサリーを付けたの?いついただいた物なの?」


「いただいたドレスが着れなくなったとお詫びのお手紙を書いたら、返事と一緒に届いたの。お姉様とお揃いで付けてということかと思って、素敵なアクセサリーだったし、嬉しくなって今日つけたのよ」


「そう…ミシェル…私にはアクセサリーは届いてないわ」


「え?」


「届いた時に私かお父様に報告すべきだったわね」


父は話している間妹に寄り添い、背中を撫でながら慰めている。

とにかく、ラヴァル家の方々に知られてしまったので、ジェレミー様のお顔を潰す行為をしたことを謝りなさいそして、ダンピールご夫妻にもドレスの一件からの事をきちんと謝りなさい、それだけを妹に伝えて一緒にダンピールご夫妻が待つ応接室へ急ぐ。


「とにかく3人で、ダンピールご夫妻の所まで行くわよ」


父と妹に声をかける。

さぁ、これから長い1日になりそうだわ。

ありがとうございます。


誤字脱字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 妹はバカだけど、ダニエルは狙ってやってそうですね。
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