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 ――ノエ・ローレン。


リシャール王国の南端にあたるローレンシア領を治めるローレン伯爵家の長男として生まれ、幼いながらも利口で、将来は王城にて文官にでもなれるだろうと皆の期待を背負ってきた。

本人は父の後継としてローレン伯爵を継ぎ、ローレンシア領を豊かに出来ればいい、くらいにしか思っていなかったのだが。


六歳になった頃、王家主催のパーティーがあり、父親と共に登城した。

その時に出会ったのが、今の国王であるオレリアン・リシャールだった。

オレリアンも周囲の期待を小さなその背に背負い、厳しい勉学と剣術に励んでいた。

子供達だけの小さなお茶会で、たまたま隣同士に座っただけの間柄。

少しの会話を交わした時、自分より一歳下の子供の手のひらの剣タコを見た時、驚く。

五歳の子供の手は、痛々しかった。


それから数年後、貴族学院に入学してきたオレリアンと再会する。


小さかった彼も成長し、背も伸びていたし、顔つきも変わっていた。

彼もまた、色々な重責を理解してきた年頃だった。


ノエが学院を卒業する頃、当時の宰相閣下より、補佐への打診を頂いた。

その頃には賢い弟がいたので、領地を離れても心配ないだろうという思いと、将来国王となるであろうオレリアンを傍で支えてやりたいとも思った。


成長した外見とは裏腹に、繊細な内面を持つ彼を支える人間が必要だ。


学院に在籍している間、その意識を変える事は出来なかった。

確かに彼の周囲には優秀な人間が何人もいた。

それでも、ついぞ、彼の心を支えられる程の者は現れなかった。


オレリアンより一足先に学院を卒業したノエは、宰相補佐として忙しい日々を送る。

全てはオレリアンの為に。


彼が学院を卒業し、王太子としての仕事もだいぶ慣れた頃。

国王陛下より、オレリアンの婚約者候補を紹介された。


 ――ソフィア・ヴォルフレー公爵令嬢。


まだ五歳だという婚約者候補に、オレリアンもノエも茫然とした。

確かに貴族の中には年の差が親子程ある夫婦もいるが、それにしても他に候補はいなかったのか、と考えてみるも、確かにこの国唯一の公爵家の令嬢である彼女以外はいなかった。

十三歳差の相手に、オレリアンは年上らしく外面を保って接した。

そんな彼に、碧い双眸をぱちくりと瞬かせた。



『金色の・・・小麦みたい』



一瞬、何の事を言ったのか、分からなかった。

が、少女の目がオレリアンを見て言っているのが分かり、思わず噴き出してしまった。

そのせいでオレリアンには睨まれてしまったが。

そんなオレリアンも、無意識に笑っていた。

それに気付いた時、思ったのだ。


この少女なら、彼の心を溶かしてくれるだろう、と。

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