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やるべき事は粗方済ませた。

仕事の速い侍女達は、ソフィアの思うようにしてくれたようだ。

この部屋で過ごすのは後数日だろう。

ソフィアは手にした書類を見下ろし、溜息を吐いた。


この時間、オレリアンは自室に戻っているだろう。



(教会の認可も下りた。後は陛下のサインを貰い、議会に出すだけだわ)



シュットフェル教会の認可が下りているなら、議会で反対されようと誰も文句は言えない。

神の御使いとされる教皇が認めたのだ、議会に参加する大臣達がなんと言おうと、覆される事はないだろう。


またも小さく溜息を吐いたソフィアは、部屋着の上にローブを羽織り、隣に続く部屋の扉をノックした。



「陛下、今よろしいですか?」



尋ねてから数秒、間をおいて返答があったのでそのまま入室する。

どうやら風呂上がりだったようで、まだ濡れた髪を拭いていた。



「お寛ぎのところ、申し訳ありません。こちらにサインをいただきたいのです」

「なんだ?」

「教会から下りた認可証と、宣誓書です。この箇所にサインを」



一人掛け用の椅子に腰を下ろしオレリアンに渡したソフィアは、テーブルの上に置かれた果実酒を見て、グラスに注いでおく。

オレリアンが寝酒を嗜むのはこの数年でよく知っていた。



「・・・問題はないな。少し待て」



認可証と宣誓書を読んだオレリアンは、筆を取りに立ち上がった。

まだ拭いきれていない髪先から滴が落ちるのを見て、ソフィアは目を伏せた。

サラサラとサインが書かれる音を聞いて、これで終わる、と思うと胸を撫で下ろした。



「書いたぞ」

「・・・ありがとうございます。後は議会に提出するだけですわね」

「議会の日程は?」

「丁度四日後の予定が空いておりますのでその日に。招集状は出しておきましたのでご安心を。当日はガルト教皇が証人としていらしてくれるそうですわ」

「ガルト教皇が?」



シュットフェル教会はリシャール王国でも最大規模の教会だ。

その教皇ともなれば、一年のほとんどを各地に飛んでいる程忙しい人物なのだが、運良く王都に滞在してくれていて今回ばかりは助かった。



「ええ。ガルト教皇がおられるなら議会も反対の声を挙げようもないでしょう?数分で纏まる議会です、心強いかと」

「確かにな・・・しかし思った以上にすんなりといったな。教会側はもっと渋るかと思っていたが」



オレリアンは、果実酒の注がれたグラスを手にした。

ソフィアは薄く微笑む。



「わたくしが強くお願いしてまいりました。神の誓いを破れど、この国と民を愛したのは事実です。ガルト教皇は、神もそれをご存知だと」



国王であるオレリアンより、王妃のソフィアが教会や修道院、孤児院の支援をたくさん行っているというのはリシャール王国に住む者なら誰でも知っている話だ。

ソフィアもまさか、ここで役に立つとは思ってもみなかったが。



「サインもいただきましたし、わたくしはこれで失礼させていただきますわね・・・髪の毛、もう少しちゃんと拭きとった方が良くてよ。風邪を召します」

「あ、あぁ・・・」

「おやすみなさいませ」



これ以上居座っても話す事などない。

そう思い、実はずっと立ったままだったソフィアは、オレリアンから返してもらった認可証と宣誓書を手に自室へ繋がる扉に向かった。

最後に、気になる髪の毛の滴に口を出してしまったが。


ぽかんと気の抜けたような顔を見て、少しだけ笑ってしまった。

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