レリーナ2
レリーナ視点。
それからは、彼との逢瀬を楽しんだわ。
世界は私と彼しかいないの。
いつ一緒になれるの?って聞いたら彼は今の奥さんと離縁しないと出来ないって。
彼ってば既婚者だったのね。
でも奥さんより私が魅力的だったのね、なら仕方ないわ。
奥さんより私と先に出会っていればすぐに結婚したのにね。
彼と会えない日は、彼と会う日の為にドレスや宝石を新調するの。
だっていつでも綺麗な私を見てほしいじゃない?
お父様は苦言を漏らしていたけど、私はいずれ王妃になるのよ?
これくらい、贅沢でもなんでもないわ。
先行投資だと思えばいいじゃない。
そうやって過ごしていたけど、しばらく経って彼とは全く会えなくなった。
もしかして何かあったのかしら、と思って王城に行ったけれど、門番が入れてくれないの。
私は王妃になる女よ!って言っても全然相手にしてくれなくて・・・
いいわ、私が王妃になったらあの者はすぐクビにしてやるわ!
あれから何度も王城に行ったけれど一切入れてくれないの・・・
心配にもなるわ、だって一度も会えないんだもの。
そしてようやく王城から呼び出しがきた。
なかなか会えないからやきもきしてたところよ。
お父様も召喚されたから一緒に王城へ向かっているのだけど、お父様ったら緊張のしすぎよ、そんなに顔色悪くして。
これから嬉しい報告があるのだからもっと気を楽にしなきゃ。
謁見の間に呼ばれ、しばらく待っていると彼がやってきた。
久し振りに見る彼はどこか疲れているように見えた。
「バローナム子爵、バローナム子爵令嬢」
彼の真横に立っているおじさんが私達親子を呼んだ。
「此度の件、子爵は理解しておられるな?」
「は、はい・・・」
「これは国を揺るがす一大事である。これは子爵家の総意か」
「い、いえ!それは絶対にありえませぬ!我が子爵家は初代より王家に忠誠を誓っております!王家に背く事など絶対にありえませぬ!」
「お父様・・・?」
一体何を言ってるの?
私と彼が結婚する事がそんなに重大なのかしら?
それに彼は一度も口を開いていないわ・・・
「では、そなたの養女の独断だと」
「さようでございます・・・全ては私の躾不足でした・・・」
「そうだな。では沙汰を言い渡す。バローナム子爵はひと月、王城への出入り禁止を申し渡す。そしてレリーナ・バローナムに関しては、一生涯、修道院から出る事を禁ずる。修道院はヴェロム修道院である」
「ヴェロム修道院・・・!」
何?どういう事なの?
誰が修道院に行くというの?
何が何だか分からないまま話が進んで、私は理解できなかった。
「まって・・・待って!これはどういう事なの!?」
思わず声を上げてしまった。
でも、理解できないのだもの、ちゃんと説明してよ・・・!
「わた、私が修道院に行くって・・・どういう事なの!?私はあなたと結婚して王妃になるんじゃなかったの!?ねえ!!」
「・・・レリーナ・・・」
叫び声を上げる私に、彼はその疲れたような顔を私に向けて、ようやく名前を呼んでくれた。




