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それからの王城は、花が咲いたようだった。


国王陛下にまで気に入られた彼女は早急に王城へ招かれ(この時、彼女の父親であるヴォルフレー公爵は怒り狂って応接室のソファーの肘掛けを握り潰した)、お妃教育が施された。

史学などその他の授業は、ノエが教える事になった。

五歳ながらに優秀だった彼女は、スポンジが水を吸い込むかのように覚えが良かった。


王妃の主催するお茶会では子供ながらに、貴族間の会話を理解し。

参加の許された夜会でオレリアンと踊る事になった時は、自分の身長差のせいでヘンテコな踊りを披露する事に悔しがって。

それでも努力する事を諦めなかった。


その頃には立派な女性といっても過言でない程成長していた彼女は、人知れず気を落とすオレリアンを、言葉を尽くすのではなく、ただ、傍にいるだけだった。

それが功を奏したのか、オレリアンはようやく彼女を一人の女性として見たようだ。

一年の喪に服した後、二人は結婚式を挙げた。


妻になり、母になった彼女は、どんどん魅力を増していき。


いつの間にか、わたしも彼女に恋をしていたのだ。


いや、もしかしたら最初からかもしれない。

それでも、この想いは誰にも打ち明けられない。

これは自分の主君に背く事となる。

それでも。

それでも、想う事だけは許されたい。

心の中でだけは、彼女を愛したい。

あの碧い瞳に見つめられるだけで、わたしは幸せなのだから。



* * *



「・・・わたしの想いは、一生告げるつもりはありませんでした。この想いはわたしだけのもの。そう決めていたのですから。それでも状況がこうなった以上、わたしは、わたしを止める術を知りません。あなたを愛する事が出来るというのなら、国を捨てでもあなたを愛したい。地位も名声も、あれば困るものではないが、なくても困らないものです」



元々話すつもりのなかった事だ、どう転ぼうと自分の想いは告げるべきタイミングだったのだ。

後悔はない。


ソフィアは、茫然として聞いていた。

ここまで熱く自分の事を語られたのは初めてだった。

夫であるオルレアンでさえ、ソフィアにそんな想いは抱いていないだろう。


 ――胸が、熱く高鳴る。


胸元できゅ、と握り締め、張り詰めさせていた息を小さく吐いた。



「・・・本当に、後悔はない、のですね?」

「ええ、勿論」

「・・・わたくしと陛下は夫婦でしたが、恋をして夫婦になったわけではありませんでした。元々は政略です。幼い頃は憧憬を抱いていましたが・・・わたくしはあなたの知っている想いがどんなものか、知りません」



顔を俯かせ、小さく話すその姿は、まるで迷子になった少女のようだった。

そしてその少女が顔をあげた時――。



「わたくしに、教えていただけますか?」



恋の仕方を。

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