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ep7.備えなくば憂いに身を投じず

「よっすー。お疲れ。」


「なんだよその言葉……で、なんで居るんだよ……」


「いや普通にソラのこと待ってたんだけど?」


 門の前に姉ちゃんがいた。しかも俺よりも多くマルラソウが入ったバスケットを持って。

 ()()()()二人でギルドに向かう。


 昼食を食べ終えて外出する人が増えてくるこの時間帯。街の中は人の往来に騒がしい。

 しかしギルドに近付くにつれて、そこから更に人の目も増えていく。そしてある一言が響いてしまえば、雑踏はピタリと全ての活動を止める。


「あれま、勇者様じゃないの! 本日もお元気そうで何よりです。」


 優しげな眼をした年配の女性。決して大きいとは言えないその声はしかし、その場にいたほぼ全員の耳にしっかりと届いた。


「あら本当!」「ゆうしゃしゃま!」

「……美しい。」「えっ、勇者様?」

「お変わりないですか?」


 今『勇者』と呼べば、勿論父さんのことを指す事がほとんどだが、勇者の称号と能力を引き継いだ姉ちゃんの事を呼ぶこともできる。特に功績、というか賞されることはしていないが、その圧倒的な美貌とハーフエルフという種族的にも珍しい姉ちゃんはしっかりと有名人だ。ついでに俺もその弟として、姉ちゃんを知っている人の半分ぐらいには認知されていると思う。───血の繋がりが無い事を知っている人は極少数だが。


「あ、あはは、皆さんこんにちは……」


「お元気そうで!」「美しい……」

「今日は弟さんも一緒なんですね!」


「え、えぇ。お陰様で。はい、ありがとうございます……。」


 どんどんと人が増えていく。───と、その中で魔力構築が成されていくのを感じ取る。この独特な雰囲気は、間違いなく()()だ。

 俺はスルリと人の間を抜けて、その根源へと一瞬で辿り着く。


 そこには予想通り、長方形の木枠に透明な幕が張られた魔法道具を構えた男性がいた。枠内の景色を写し取り保存することのできる、写撮機だ。一回きりの少し高価なものだったりする。


「すいませ~ん、盗撮はご遠慮いただいているんですけどぉ。」


「っ! とっ、とうさ、盗撮だなんて、あ、いや、そんな、っ!」


「大丈夫っすよ。姉ちゃん優しいんで、頼めばちゃんと撮らしてくれます。ツーショットとか?」


「ツーっっ!!」


 大の大人が顔を真っ赤にしながら声を失って固まっているので、腕を引っ張って姉ちゃんの元へと連れて行く。男性は無事姉ちゃんの写真(横に並ぶだけで意識を失いかけたのでツーショットは叶わなかった)を手に入れ、ほくほくした表情で帰って行った。

 ちなみに盗撮禁止、なんてのは俺が勝手に言ってるだけだ。姉ちゃんはそういう所のファンサービス(?)は面倒だからと言って断る人ではないので、ちゃんと真正面から話して、撮りますっていう状況ならまだ許せる。……姉ちゃんがいつの間にか撮られてるってのは、なんとなく嫌だ。



 その後なんとか人々に囲まれながら道を歩いて行き、ギルドに着いたはいいものの、この時間帯のギルドも人がいない訳はなく、同じく囲まれて時間を喰ってしまった。それでも嫌な顔一つできないのが勇者様とその弟である。


 かなり人が減ってきた時、先に受付行って良いよ、という風に視線を送ってきた。そのくせに、俺がバスケットをカウンターに置いた瞬間に走って隣に置いてきた。なんだこいつ。


「えっと……マルラソウの採集依頼、ですか? あの……等級証を……」


「あ、すいません。」


 なるほど、ここでも必要なのか。まぁ当然と言えば当然か。


 等級証を確認したあと、沢山の溝と、ものさしのような目盛りのある板が合わさった薄い箱を取り出した。何をする道具かと思いきや、なんとマルラソウを全て入れてその器具を少し振っているだけで、本数と長さが分かるという優れものだった。


「はい、依頼達成です。お疲れさまでした。ソラさんは規定長73本でしたので、銅中貨1枚と銅貨20枚。レイラさんは規定長119本、規定外1本ですので、銀貨1枚、銅貨1枚となります。残りはお返しいたします。」


 銅中貨というのは、銅貨50枚相当の、銅貨の中央に穴が開いているものだ。銅貨も銀貨も金貨も純金属を使っているわけではなく混合物と塗装なので、重さが軽くなるのに、などという話は生まれない。

 俺と姉ちゃんはバラバラで依頼を受けているので、余りを合わせて10本→銅貨10枚というわけにはいかない。というか返すと言われても……


「───? あ、余剰分は、依頼としては受け取れませんが、あちらにある『商業ギルド』で売ることが出来ますよ。」


 そういって受付嬢が指したのは、休憩所のテーブルと椅子の並ぶ奥の通路だ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 受付の方から見ていた限りでは分からなかったが、近くに来ると横幅も縦幅も少し狭めのアーチ型になっていた。



 奥へ入って行くと明るく開け、横に広いカウンターと、その奥にも何かが広がっているようだ。巨大な二枚扉で仕切られていて見えないが。


「……誰もいないのかしら?」


 他の冒険者もいないようだった。カウンターの中央に置いてあった呼び鈴を押す。


『あー、悪ぃ悪ぃ、今行く!』


 扉の向こうからか、野太い声が飛んできた。それなりに重厚そうなビッチリと閉まった扉なのに、目の前で叫ばれたのではないかという程の迫力があった。いったいどんな大男が───


「っっ!? あ、あれ……?」


「どうしたのよソラ。」


 一瞬、幻覚が目に映った。扉が両側に開いていき、真ん中から予想通りの大男が姿を現したわけだが、その白のタンクトップとスキンヘッドに筋骨隆々とした姿が、()()()と一瞬重なった。こちらの男性は迷彩柄ではなく黒の作業着のようなダボっとしたズボンにサスペンダーを付けている。


むわぁっ


 首を振って意識が戻ってくると、今度は扉の向こうからやってくる異臭を知覚してしまった。甘味と苦味と酸味と生臭さとが混ざった臭いだ。


「すまねぇな、お客さん。って、勇者様の娘さんと息子さんじゃねぇか。何の用だい。」


 扉が閉められるとすぐに臭いはしなくなったが、鼻が少しの間ばかになっていた。


「私達冒険者になったんです。さっき依頼を受け終わって、この余った分のマルラソウをここで売れるって聞いたんですけど。」


「あぁ。ここでは素材になるものは何でも買う。そんで、店とかに流すんだ。価格を一定にする為にな。直接ここに来なくても、国中の全てが一旦商業ギルドの管理下に集まる。物流の源泉さ。商業ギルドは偽造品とか薬物の検査も行ってるが、監視の目を潜り抜けて取引してる奴等をとっ捕まえるのも仕事さ。───っとこんな話はいらねぇな。で、マルラソウだっけ?」


 13本のマルラソウをカウンターに置く。


「今日採ってきたのか。まだ青くて良いな。んーと、5cmにいってねぇのが1本あんのか。」


 広がった状態を目で見ただけで長さを言い当てた。衣装というか口調というか、職人らしい人だな。冒険者ギルドと違って受付にも一人だけだし、もしかしたら一人でここを回しているのかもしれないな。


 買取価格は長さでは決めないらしく、計量器を取り出し、

「銅貨5枚だ。ありがとな。」


 銅貨を受け取ってその場を後にする。この空間に対して狭くした通路は、臭いをできる限り通さない役割もあったのかな。

 

 色んな場所で人に囲まれて時間を喰ったせいで、もう陽が傾いている。学園の登下校の時間は、人通りも少ないうえに同級生と一緒に歩いたりしていればあまり気付かれなかったのだが、やはり時間帯が違えばそうはいかないものだな。


 帰りはできるだけ絡まれないように、先に街の中央、零番街まで一気に歩いて、そこから家に帰った。



 家に帰ると「帰りが遅いから心配したぞ~! 怪我してないか? 痛い所は? まさか依頼受けてくるなんて思わないだろ~!」と父さんがいつも以上にウザかった。ただ母さんも、冒険者の登録だけして帰ってくると思っていたらしいので悪い事をした。確かに普通に考えても、入社試験当日に一日中働く人とかいない。人手不足のアルバイトぐらいだ。


 姉ちゃんから、てきとうに取った依頼が薬草の採集だったからまだ良かったが、害獣駆除や魔物討伐だったら武器も持たずどうするつもりだったのかと少し厳しめに怒られた。そもそもナイフも持って来てもらわなければどうにもできなかったわけだし、明日武器などの冒険者として必要な物を買い揃えに行く事に決まった。

 父さんが、伝説級の聖剣とか、絶対に傷つかないという盾とか、解読不可の古代紋章が刻み込まれた(ロッド)とか、家に保管しているとんでもないのを大量に俺達に渡そうとしたが、


「そんな大仰で目に付くモノ嫌よ。今日も大変だったんだから。」


「そ、そうか? そんな目立つかなぁ……」


「ただでさえ私達は結構な人に顔知られてるのよ? 甲冑ぐらいなら使っても良いけど。」


「それは駄目だ! レイラの可愛い顔が見れなくなる!」


 姉ちゃんから父さんに平手が飛んで行った。……都合よく盾で防がれたが。というか聖剣とか格好いいから使いたかったんだけどなぁ。


「それに、聖なる武器なんていらないわよ。魔王が攻めて来るわけでもないんだし。目立つだーけ。」


「───っ。」


 正直さっきは声が出なかった。『魔王が攻めて来るわけでもない。』あぁ、そうだった。俺の目的は現魔王を倒す事。人間の体に生まれ変わってしまったが、元魔王の尊厳にかけて、部下の裏切りによる暗殺などはいそうですかと大人しく受け容れてやるものか。

 確かに裏世界の者を倒すには聖なる武器は大きなアドバンテージとなるが、魔王たるもの勇者の持ち物を諸手を挙げて受け取れない。


 魔王ザードが勇者レイク一向の前で倒れてから20年以上の月日が流れている。その間魔王関連の事件は一度も起こらず、人々の記憶からは魔王の脅威、裏世界の住人の存在は薄れ始めている。勿論、学園を筆頭に様々な場で歴史や記録は伝えられているが、若者のほとんどに実感はなく、そしてほとんどの人が魔王は滅んだと思い込んでいる。脅威は完全に無くなったと信じたい心も柱となっていることだろう。


 この世界を()()ためにも、真実を知っている()()やらなければいけない事なのだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 次の日の昼過ぎ、俺は姉ちゃんと2人で街の東側・商業地域をブラブラしていた。

 というのも午前中は、昨夜だけでは懲りなかった父さんが、どこに仕舞っていたのか勇者の家系に伝わる物々を引っ張り出してきたので家から出られなかったのだ。


 冒険者として活動していく上で、買っておいた方が良いものはいくつかある。

 何かを倒すため・自らの命を守るための戦闘能力を底上げするもの。自らに留まらず、他者を危険から護るもの。様々な状況に対応・不測の事態に陥った際に扱えるもの。その他便利道具。


 そういった物は冒険者だけでなく、貴族や商人からも買い手がつく。王都であるここヴィルセイアには人が多く集まる上、腕利きの職人が多いこともあり、剣から縄から薬まで様々なものを扱っている店───一般的に武器屋と呼ばれる店が数軒立ち並んでいる。


「姉ちゃんは何買う予定?」


「とりあえず戦う為の武器よね……でも自分に合った武器が分からないから、とりあえずてきとうに、良さそうな安いやつを買ってみるわ。」


「じゃあ俺もそうするかぁ。」


 学園で木刀は使ったことがあるが、それ以外の武器は触ったことが無い。家にあるものも、小さい頃は危ないからと近くに行かせてもらえなかったし、そもそもほとんど収納場所が分からない。いや、盾ぐらいなら触ったことはあるが。……前世も武器らしい武器を使って戦ったことは無かったので、俺も自分に合った武器など分からない。


 とりあえず、刃物の斬れ味はヴィルシド一番と呼び声が高い、武器屋の情報などほとんど知らない俺達でも名前を知っている『剣の舞』という店に入ってみた。


 店内は狭く、というか、商品棚や展示商品は一切無く入ってすぐのところにレジが置かれていた。レジの右に奥に続く少し細めの通路があるが、とにかく圧迫感が凄い。しかし、それだけ商品に自信があるのだろう。

 レジには若い女性が一人。いらっしゃいませー、と明るい声だ。


「本日は何をお探しですか?」


「あの、私達冒険者を始めたんですけど、いろいろ揃えたくて。でも、何が良いのかとか、自分に何が合ってるのかとかもちょっと……」


「分かりました。戦闘はされますか?」


「あ、俺はします。」

「私も、多分。」


「ではいくつかご用意させて頂きますね。実際に使って頂くのが良いでしょうから、奥へどうぞ。」


 そう言って隣の通路を指し、女性はレジの裏へ消えていってしまった。言われた通りに、薄暗い通路の奥へ縦に一列になって進んでいく。

 すると、それなりに広さのある大部屋に出た。少しすると、レジにいた女性がキャスターの付いた箪笥のようなものを押しながら大部屋に入ってきた。そして引き出しを開けると、少し長めの剣を取りだした。


「これらは初心者の方にお勧めしている、基本的なものになります。先にお姉さん、どうぞ。構えたり、振ったりしてみて下さい。」


 鞘から抜いて両手で構え、上から一本振り下ろす。もう一度構え、前方に片手で突き、そのまま斜め上に振り抜いた。


「少し、重いですね。軽いのありますか?」


「そうですね、でしたら───」


 その後、細身の剣から、ダガー、槍など、様々な武器(全て刃がついたもの)の使い心地を試して、とりあえず考えるという事にした。

 俺も同じようにいろんな武器を触らせてもらったが、他の店、特に刃にこだわっている『剣の舞』とはまた違う方向性の武器も見たいので、一旦保留という事にしてもらった。

 ちなみにさっき見せてもらった初心者用、というものの値段は全て銀貨25枚らしい。少々お高めだ。


 盾や鎧などの防具も置いているらしいが、攻撃する得物を何にするかによって防具も変わってくるのでまだ決められない。


 また、武器以外は扱っていないらしく、同系列の魔法道具専門店『魔の宴』と分かれているという。そちらには、便利道具や魔法道具、薬などが揃っているという。


 『魔の宴』に向かう途中に武器屋が2店あったので、そこにも入ってみた。こちらは、商品棚は勿論、店の中でも高価な剣や盾などが壁に飾ってあったり、鎧を着せられたマネキンが数体立ったりしていた。値段は安いものだと銀貨10枚を切るものもあった。これが一般的な武器屋の雰囲気と価格帯なのだろう。

 一応武器以外の物の値段もざっと見てから店を出て、再度通りを歩いて行く。そろそろ昼食を食べ終えて外出する人が増える時間帯だ。少し急いだほうが良いかもしれない。



「ここが『魔の宴』っていう……店……よね?」


「そのはず、だけど。店員さんが言ってた通りに来たから間違いないはず……。」


 大通りから少し外れたところにある、少し大きめの建物。一軒家のような形だが、その屋根は朽ち、壁は剥がれ、ガラスは割れている。魔女の屋敷、と呼ばれても不思議ではない。


「商業地域にこんな建物があったことも驚きだけれど、この今にも崩れそうなのが店だとしたらそれが一番の驚きよ。」


 そう言いながら姉ちゃんが少し傾むいた扉に手を掛けた途端、ギギィーッという音ともに自然と開いていった。ギルドの出入り口と同じ雰囲気だ。

 それこそ崩れるのではないかと思う程の建物の中に入っていくのは少し勇気が必要だったが、暗闇の中に足を踏み入れる。


「いらっしゃぇぃぃ……」


 かすれた老婆の声が暗がりの奥から聞こえてきた。同時に、


ばたんっ!


と扉が閉まった。


「「っっ!!」」


 二人して叫びそうになるのをなんとか堪えた、次の瞬間、ぼんやりと紫色の照明が点き、ようやく視覚の参加が認められた。

 入って前方すぐの所にカウンター……いや、レジ。先程の声の主であろう、紫色のローブを被った老婆が立っている。それ以外の3面の壁中に貼られたお札は、悪霊退散とかそういった類の物ではなく、書かれている内容を見る限りメニューのようだ。どちらにしろ見た目の怪しさは甚だしいが。


「あ、あの、ここって『魔の宴』で合ってますか?」


「そうじぁよ。何をお求めかえ?」


 壁に貼られたメニューに書いてあるのは、他の武器屋にも置いてあったような一般的な便利道具や魔法道具だ。一応薬もある。そして、そのどれもが他の店よりも半額ほどの値段だ。


「この店で良いんじゃないか?」


「そうね。えーっとじゃあ、」


 どういったものを揃えておいた方が良いかは、母さんが教えてくれていた。


 大きめの布、細めの紐は、作成の際に魔力が込められて丈夫なもの。【水属性】の魔法が組み込まれている事によってどんな汚れも一瞬にして拭き取ることができるハンカチ。全て二人分だ。

 ナイフはマルラソウの時に使った折りたたみのやつで良い。切れ味が良いというだけで聖紋等があったりする訳ではないし。


 あとは薬だ。と言っても、風邪薬とかではない。例えば戦闘などで大怪我をすれば場合によっては痛みでショック死してしまう。そういった事を防ぐために飲む痛覚鈍化薬などだ。これらの薬は効果内容によっては危険なものもあり、服用頻度に気を付けなければいけない。

 バラバラに揃えようと思っていたが、様座な種類の薬が数粒ずつ、仕切られて小さな箱として売っていた。セットとして買った方が安いのでその薬箱を買った。


「これで全部かしらね。」


 代金を払い、店を出ようとしたその時、


「お前はんたち、久々のお客様じゃて、ちょいとこっちの()()も見ていかんかえ?」


「裏品?」


老婆に呼び止められた。そして渡された紙には、《素材》《商品》《代金》の3つが書かれていた。しかしそこに書かれた名前は見慣れないものばかりで、代金も異常なほど高かった。他の商品の10〜20倍以上だ。


「これはの、素材を直に持ってきたら作る品じゃ。素材が希少しゅぎて流通は無し。ついでに扱える職人も無し。これが一番安く作る方法なのよ。商業ギルドも公認、御国からもこれで注文があるぐれいじゃ。」


 ここに書かれている商品がどういったものなのかは分からないし、そもそも希少素材なんて持っていないが、頭の片隅にでも『裏品』の存在を残しておこう。

 国中の全ての物流は商業ギルドの管理下にあると言っていたのに、そこから特例で認められているという事は凄い店なのだろう。しかし先程も久々の客だと言っていたし、この店の噂など聞いた事も無かった。店の外見か、雰囲気か、はたまた立地か、あまり繁盛しているとは言えなさそうだ。隠れた名店、かな。


「こんなのがあるんですね。でも私達まだ新米なので、珍しい素材が手に入るようになったら、お世話になりますね?」


「そうかいそうかい。楽しみにしちゃるよ。」



 『魔の宴』を後にした俺達は、結局普通の店で安めの武器を買った。と言っても、あまり安すぎるというのも考え物なので、それなりの、だが。

 あまりひねくれた考え方はせず、2人とも何の変哲もない両刃の両手剣だ。少し大きさと重さに違いがあるが、同じ型のものを買った。鞘の色は選べるようになっていたが、深茶色の悪目立ちしない物を選んだ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 魔王ドラスって誰? 読み飛ばしていたらすみません。 [一言] まだ途中までしか読めていませんが。 楽しく読ませていただいてます。 これからも応援しています。
2021/06/29 17:14 退会済み
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