虚言
貴方が言っているのは、
虚言です。
ドクターは訝しげに言った。
ようやく分かったのは、
彼だった。
ドクターは少し困ってさえいる。
自分自身が正しいと思っていたのは、
自分自身。
母からも言われた。
貴方はなんでもないのよ。
その通りだった。
街は守ってくれる。
親家族は守ってくれる。
友達も親切だ。
なのに、僕は人間が嫌いだ。
彼は気づくと
苦しみから解放される子を決めた。
彼女がいい。
街で一番頭の良い娘。
本当に人に愛を与えられる人。
その娘は遂に彼がいる街から解放された。
愛を蝕んだ彼を弓に変えて
戦に進む。
ちょっと待ちなさい。
ドクターは彼をじっと見て、
それが虚言だって言っているだろ。
と彼に言い、彼は、
やはり自分自身がわかっていないことが
なんとなく分かり、
ドクターに挨拶をして、
診察室の扉を開けた。