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6 要side

side 要


明日は日菜子と蒼、有紗と一緒に水族館へ行くことになった。


前日の今日、俺はなぜか蒼に呼び出されて現在駅ビルに居る。

確か、昨日日菜子と有紗も買い物に行くと言っていたような……。

そう思い返して、ついボソッと言ってしまった。


「蒼、もしかしてストーカー?」


「んな訳あるか! 俺は日菜子が選んだ服に合うものをと思って!」


肩にポンと手を置きつつ、俺は首を横に振って言った。


「気持ちは分かるが、行動はストーカーと変わらんぞ?」


俺の言葉にちょっとショックな顔をした蒼を見つつ、俺も実は有紗がどんな服を選ぶのか気になる。


制服姿以外を見た事がないから、気になる……。

それに、有紗は時々遠くを見てることがある。

その姿を見ると、いつか急に居なくなってしまいそうな。

そんな気配を感じて、俺はときどき不安になる。


この春初めて出会って、少しづつ仲良くなって……。

俺は有紗に特別な好意を持つようになった。

優しく、思いやりがあり、気遣いのできる有紗。

いつも楽しそうに笑っているけれど、ふっとした時に有紗が遠い目になるのを見つめているうちに気づいて気にしていた。


きっと蒼や日菜子は気付いていない。


それでも、明日は有紗も笑顔が絶えないと思うからそんな有紗の隣で俺も楽しめる様に……。


そんな決意をしつつ、今日は仕方ないと蒼の行動に付き合う事にした。


二人は明るい色の服や小物が並ぶお店に入ると、アレこれと楽しそうに見始めた。


女の子らしい買い物の風景に見える。


そんな二人を眺めていると


「今更ながら思ったけど、やっぱり俺ら怪しい?!」


俺を振り返って、またもやショック! みたいな顔をする蒼に、俺は同意を示した。


「まぁ、そうなるだろうな……」


するとガックリ肩を落としつつ、蒼は言った。


「なんとなくあの水色の花柄ワンピな気がするから、離れるか……」


「そうだな、それが良いだろ」


そうして離れる間際、振り返ると有紗はレモンイエローのスカートを持っていた。

その色は有紗らしい、明るく柔らかな色だった。


そこから離れると、俺たちはドーナツ屋さんで脱力しつつお茶をしていた。

すると、しばらくしたら買い物を済ませた二人もやってきた。


入口を背にしている蒼は気付いていない。


二人はドーナツと飲み物のトレーを持ち、俺たちからは少し離れた席に座った。


「蒼、日菜子と有紗も来たぞ。お前の斜め後ろ」


そう言うと、チラッと振り返って確認した蒼は


「ちょっと、バレないようにするしかねぇな……」


幸い、ここは男でも入りやすく既に何組か男同士の客が居るので怪しくはないだろう。


すると、日菜子と有紗の会話が聞こえてきた。


「明日はダブルデートだからね! 有紗もしっかり今日の服で可愛くしてくるのよ!」


ビシッという音がしそうなくらい、腕を振って言う日菜子の姿が目に入る。

すると、有紗の答える声が聞こえた。


「久しぶりの遠出だからね。綺麗にはして行くよ。どんな生き物が居るのかな? 今からすごく楽しみ!」


有紗の返事は、しっかりしつつも日菜子の会話から少しズラしているのが分かる。

有紗の返事を聞いて、ガックリしている日菜子。


しかし、有紗がにっこり笑顔で答えていたので日菜子もそれ以上追求できなかったみたいだ。


その会話を聞いていて、なんとなく気づいた。

有紗からは、あまりその手の話を聞いたことが無いことに……。


「なぁ、蒼。お前、有紗の好きな人とか、付き合ってたとかの噂を聞いたことあるか?」


蒼はそういう話を、よく聞いて覚えている。


「有紗ちゃんの? 告白されても断わるって話は聞いたことあるけど。そう言えば、誰かと付き合ったとか言う話は聞かないな……」


それを聞いて、俺はなんとなく察した。

あの、しっかりした有紗が避けて通るものが恋愛であるということ。


普段しっかり受け答えして気遣いを見せる有紗が、日菜子との恋愛話はそこから逸らすような受け答えをしていたから……。


それに気付いて、俺は少なからずへこんだ。


有紗の態度の意味するところを考えれば、俺の気持ちを伝えても、有紗がそれに応えてくれる可能性が低いと気付いたからだ。


それでも俺は諦めきれない。

今の距離から、少しづつでも彼女に近づきたい……。

出来れば蒼や日菜子みたいな関係になりたい。


でも、有紗はそれを望んでいない気がする……。

ならば、ゆっくりやって行くしかない。

俺は、覚悟を決めた。


少しでも有紗と近くなれるように。

でも拒絶されたら困るから、少しづつ、一歩ずつ距離を縮めていくことを。


明日のダブルデートはその一歩になるだろう。

楽しめる様に、俺は有紗をよく見ていようと、その後も楽しそうに会話している二人を眺めながら明日へと思いを馳せていた。



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