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眩しさの中、最初で最後の恋をした。  作者: 織原深雪


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楽しかったキャンプも終わると夏休みも残り少しで、あっという間に新学期を迎えた。


九月に入るというのに、相変わらず日差しはきつく暑さはまだまだ残っている。

残暑と言うより、今年の夏は酷暑だ。

連日35度を超える超真夏日には、元々暑さが苦手な私はうんざりしていた。


「なぜ、この暑さの中を制服着込んで学校に行かなければならないのか……」


朝食の席でグチグチと天気と暑さに文句を垂れていたら、母は仕方ないという顔をしてひと言。


「今日のおやつは大好きなアイス買っておくから、いってらっしゃいな」


ちなみに今日は父もお姉ちゃんも朝早めの出勤だったため、ダイニングには私だけである。


最近のお母さんは洋食にハマったらしく、朝はトースト、スープ、サラダとエッグベネディクトが出てくる。

卵料理に関しては朝の気分で変えるみたい。

そんなカフェ朝食をカフェ・オ・レと共に食べると、私も洗面所で出かける前の身支度を整えて玄関へ。


「それじゃあ、行ってきます」


そうして、うんざりする日差しの中を歩いてバス停へ。

バスを降りれば電車に乗り、電車を降りればまた学校へと向かって歩き出す。


学校に着く頃にはひと汗かいているのだ……。

朝からげんなりである。


下駄箱で靴を脱いで上履きに履き替えてるところで、声を掛けられた。


「おはよう、有紗。体調はどう?」


そう声を掛けてきたのは、この学校の養護教諭、田中美智子先生。


先生だけれど、実は私の叔母でもあるので校内で周りに生徒がいない時は名前呼びである。

今朝も早めの登校なので周りには生徒がいない。


「おはよう、美智子叔母さん。暑さに参ってるけれど病気の方はまぁ、まだ大丈夫」


ニコッと答えれば、叔母さんも微笑んで話してくれる。


「そう、今月は体育祭もあるから。そういう時は課題持って保健室にいらっしゃいね」


体育祭の練習になると授業がほぼ体育になる。

私は病気のことを考慮して去年から診断書も出して、体育の授業は免除されている。

だからいつも見学なのだけれど、体育祭の練習となると一日外に居るのも大変なので、別教科の課題を持って保健室で勉強させてもらっている。


そんな保健室の主たる養護教諭が身内なので、そういう時そこでは結構ゆるっゆるな感じになってしまっている。


「そうだね、今年も体育祭当日以外は保健室にお邪魔するかも」

「普段の体育の時間も来てても構わないのよ?」


その叔母のお誘いには首を横に振って、言った。


「友達が楽しそうに運動してる姿を見るのも好きだから、普段の時は良いの。それに体育祭の練習風景は保健室から見えるしね」


私の返事に叔母は納得するかのようにひとつ頷く。


「それなら、良いのよ。ただ、なにかおかしいと思ったらすぐに来なさい。いいわね」


その叔母の言葉に頷いて、私は叔母と別れて自身の教室へと向かった。


教室について、ササッと制汗スプレーやシートで汗の処置をして机周りを整える頃には続々とクラスメイトが登校してくる。


「汐月さん、おはよう」

「おはよう」


そんな声をかけ合いつつ、私は持ってきた文庫本に目を落とす。


朝のチャイムまであと五分。

その位の時間に要くん、蒼くん、日菜子が登校してきた。


「有紗! おっはよー!」


飛び掛からん勢いで日菜子はこちらにやって来た。

それを、後ろから苦笑しつつ見守ってる蒼くんと要くん。


「おはよう、日菜子。今日も元気そうだね」

「もっちろん! 今日から新学期だし、再来週は体育祭だもの」


さすが、体育会系。

運動会に燃えているね。


「おはよう、有紗ちゃん」

「おはよう、有紗」


ふたりも遅れつつ挨拶をしてくれて席に着く。

私達は教室の窓際後ろに席がかたまっているのだ。


一番後ろに日菜子と蒼くん。

蒼くんの前が要くん、日菜子の前が私だ。


正当なるくじ引きでこの席順だから、私たちのくじ運が強かったのだと思う。


「そうね、日菜子のお楽しみの体育祭は再来週だね! その前に模試だけどね」


この時期は夏休み明けに大体公立高校は全国模試をする。


うちは中間あたりの学校なので、そこまで難しくない。

かと言って簡単でもない。

うちの学校は六割が進学で四割は就職だ。

進学の子は大体塾で全国模試等を受けているので、学校は対策的に就職向きの全国模試だったりする。



そんな、ことを思い出しつつ言えば日菜子がガックリ項垂れた。


「また、テストなのぉ。やっと課題終わったのに……」


今年は受験生だから夏の課題は少ない方だったのだけれど、日菜子はそれも叫びながら頑張っていた。

二日前まで毎日我が家に通って、課題を頑張っていたのだ。

そして、夏休み終了前日にやっと終わったのである。


「大丈夫。夏休みの課題が出来てれば模試はそんなに難しくないよ」


励ますと、ガバッと顔を上げた日菜子はニコニコしている。


「あ、でも今回もう部活動停止とかないから死ぬ気で頑張らなくても!」


キラっと思い出したように、輝かしい表情で言い出した日菜子に蒼くんが言った。


「あれ? 日菜っちは受験しないの?」


問われた疑問に日菜子は答える。


「私は実家を手伝うから良いのよ!」


どうやら日菜子は家業の手伝いをしていくみたいだ。

それならこの地元を離れないんだなと思う。


日菜子のうちは、工務店でリフォームから、新築まで施行する地域密着型の工務店。

日菜子のお父さんは豪快な職人って感じの人だ。


「日菜子、お前オヤジさんになんて言われてたんだ?」

ギクッと肩を跳ねさせた日菜子は、要くんを見つつ言う。


「模試で校内で半分より上になるようにすることが実家の工務店への就職条件です……」


日菜子のお父さん、流石は一国一城の主たる社長さんだ。

実の娘だろうと、就職して雇うとなればそれなりの事は必要だ。

そして、模試の結果を採用基準にしたのだろう。

模試の結果なら勉強の得手不得手の範囲もわかりやすいだろうし、判断基準にするのだろう。


「それじゃあ、頑張らないとな。フリーターはいやだろ?」

「当たり前じゃない!」

「じゃあ、努力しろよ?」

「言われなくても、わかってる!」


要くんと日菜子の掛け合いは実にテンポがいい。


「そう言えば、聞いてなかったけれど要くんと蒼くんは進路どうなってるの?」


この会話の流れで気になったので聞いてみた。


「俺は大学進学予定だよ。指定校推薦貰えそうなんだ」


進学を口にしたのは要くんだ。

確かに英語が足を引っ張っていたけれどほかは平均値以上だし、何かやりたいことも決まっていそうなのでいいのではないかと思う。


「あ、俺は声がかかったからJリーグの入団テスト受けるんだ」


サラッと言われて、聞いてから理解すると目を見開いて驚いてしまう。


「蒼くんJリーグのチームに入るの?」


「まだ、わかんないよ。結果次第じゃないかな? 一応だから進学の予定で俺も指定校推薦貰う予定」


みんな、それぞれ先が決まってきてるんだな。

ちょっぴり羨ましくなった。


「有紗は?もちろん進学だよね?」


日菜子の笑顔に、私は少し考えてから答える。


「うん、一応その予定」


そう、私も進学はする。

ただし、普通の専門学校とはいえない特殊な進学先の予定だ。

詳しくは言わないけれど……。

そこは上手く笑顔で交わしたのだった。


新学期がスタートするとあっという間に時間が流れていく。


体育祭の練習も佳境で、各々出場する競技の練習もかなり進んだ。


日菜子は綱引きと二人三脚にリレー。

蒼くんと要くんは綱引き、騎馬戦、障害物競走にリレーだ。


ふたりはかなり運動神経が良いので、体育祭ではクラスの主戦力だ。

目玉競技への参加が多い。


なにしろスタミナとスピードが出せるふたりだから、かなりクラス全体から当てにされている。


「あんま、休みがない」


ボソッと呟いていたのは要くん。


この暑い中これだけの競技に出るのは大変だろう。

ちょっと心配ではある。


「有紗。体育祭の日、お弁当作ってよ」


言い出したのは日菜子と要くん。


「楽しみがなきゃ頑張れない!」


なんと、要くんも暑いのは苦手らしい。

それでもこれだけ出るのだ。

私は見学だし、労うくらいしか出来ないと思ってたのでその提案は渡りに船だ。


「みんなの分作ってくるから頑張ってね! めっちゃ応援するから」


げんなりしつつも楽しそうな三人に私はそう、返事を返した。



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