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春 高校最後の年、君に出会う


君と出会って、私は諦めていたことを知る。


そして、諦めていたとしても


その気持ちは抗い難い事なのだと知った


出会いの季節の名の通り


この春


私は君に出会うことが出来た。




掲示板を見た後、私は日菜子と一緒に南棟三階の三年生のクラスの集まる階へ。


「あったあった!三年二組。ほら、有紗早く!」


日菜子はいつも元気の塊みたいな活発な女子。

部活は女子テニス部で昨年の三年生引退後からは部長さんだ。

明るく面倒見のいい日菜子は、同級生からも下級生からも人気がある。


反対に私はどちらかといえば大人しく、部活も家庭科部で副部長。

先頭に立って仕切るより、サポートに回る方が向いているタイプの私。


だからなのか、二年生で同じクラスになってから意気投合。

共通の趣味は少女マンガやアニメという意外な共通点と好みが似たオタクな部分も合わせて、私たちは仲良くなった。

この一年で、すっかり昔からの付き合いなの?ってくらいかなりの仲良しである。


「ねぇ、有紗。今期のアニメどう思う?」


「そうね、あの水泳アニメが私は好きよ」


「あれ、とうとう三期だもんね!大人気よね!イケメンにイケボの集団だよ!堪らん!」


日菜子は大の声フェチである。

声優さん大好きで、推しの声優さんが出るアニメは全てチェックの人。


私はストーリー重視で、お声は絵に合ってればOKな感じで声にこだわりはないけれど。


こんな話を教室の片隅で平気でするくらいには、私と日菜子はオープンなオタクである。


そこに、急に黄色い声が混じる。


「やった!松島くんと水木くんと同じクラス!!」


「もはや自慢にしかなんない!」


「ビバ!イケメン!」


等などの女子特有のお声が聞こえたので、教室ど真ん中付近にいた私と日菜子は声のした方向、教室後ろのドアを振り返った。


そこには背が高い男の子が二人居た。


一人は明るい髪で弾けるような笑顔で楽しそうに話している。

もう一人は話している彼に相槌を返しつつも、少しつまらなそうにしている顔がなんだか可愛いと思って、ついクスッと笑ってしまった。


「げっ、男子に誰がいるか見てなかった……。まさか要と同じクラスなんて……」


「ん?日菜子何か問題でも?」


そう聞くと、日菜子は抱えていた頭をガバッと起こすと私の両手を握ってクワっと目を見開いて言う。



「あの、明るい髪で笑顔の男子は、女子に学年で一番人気の水木蒼くん。サッカー部の部長でゴールキーパーで高身長なイケメンで人当たりもいいから、かなりの女子が熱を入れてるわ」


「へー、確かに。顔良し、人当たり良しなら人気あるんだろうね」


私のあっさりした返しに、日菜子は少し驚きつつも続きを話してくれる。


「それで、問題は面倒そうな顔した黒髪のアイツよ!」


拳を握りしめて、ちょっと嫌そうな顔をする。そんな日菜子の態度は珍しい。

険悪な仲なのだろうか?

ちょっと心配しつつ話しの続きを待つ。


「アイツもサッカー部で、エースストライカーで副部長。松島要。アレはあの見た目とあまり話さない態度からクールでカッコイイとか騒がれてるけど……。単なる面倒くさがりなだけよ。家が隣で幼なじみなの。不本意だけど!」


なるほど、日菜子と松島くんは幼なじみ。

この年頃なら幼なじみでも仲良し、よりかはギクシャクしたりするんだろうな。

良いなぁ、幼なじみ。

ちょっと羨ましい関係だ。


「もしかして、入学当初仲良くしてて周りに騒がれた系?」


疑問形で聞くと、ため息をつきつつ日菜子が答えてくれた。


「そうなのよ。それ以来お互い部活が忙しいのもあってやや疎遠ね。幼なじみで同い歳だけど兄妹みたいなもんで、お互いを意識なんてしたことも無いのに……。奴のルックスのせいで、一年生の時大変だったのよ……」


ガックリ項垂れて机に寝そべった日菜子の頭を、よしよしと撫でてあげる。


「美男美女の幼なじみ同士には、そこそこ苦労があるもんなのね。そんなに気にしなくても、私がそばにいるよ」


にっこり笑って言えば日菜子はうるっと瞳を潤わせて、ぎゅっと抱きついてきた。


「あー!もう、有紗!大好き!」


日菜子は本当に、感情表現が豊かで素直だ。

そこが私も大好き。一緒にいて気分が良い相手なんてそうそういない。貴重な友だちだ。


「ふふ、ありがとう。私も日菜子大好きよ」


私達のやり取りを、教室に入って騒がれていた二人が見ていた事に私達は気付いていなかった。


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