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眩しさの中、最初で最後の恋をした。  作者: 織原深雪


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7


差し入れのソーダーのフルーツポンチは大好評で、高校生男子の胃袋にごっそりと持っていかれた。

暑い中の試合だったので、冷たいデザートはとても喜ばれた。

もしかしたら余るかな? なんて予測はかなり大間違いだったようで、あっという間に消えていったのだった。



そして、週末の今日は地元の夏祭り。

花火も上がる大きなお祭りは、花火の上がる三時間前から海岸沿いの道を歩行者天国にして両脇に多くの出店が並ぶ。

地域一のお祭りだ。


そこの近くのスーパーで待ち合わせ。

私と日菜子は私の家で浴衣に着替えた。

たまたま休みで居たお姉ちゃんが私と日菜子に軽くメイクをして、髪までセットしてくれた。

美容部員のお姉ちゃんは手先が器用で、ナチュラルな感じなのに、顔がいつもと違うのだ。

恐るべし、メイクテクニック。


褒めたら、ひと言返ってきた。


「だって、それが私のお仕事よ!」


そんな弾んだテンション高きお姉ちゃんは、お母さんと手分けしつつ、しっかり浴衣まで着せてくれたのだった。


待ち合わせ場所まで歩く中、キラキラとした目で元気に日菜子が言う。


「有紗のお姉ちゃん、すご腕の美容部員っぽいね! 器用だし、優しいし! あんなお姉ちゃん羨ましい!」

「あぁ、確か去年社内の売り上げ上位者研修でヨーロッパ研修に行ってたよ」


お姉ちゃんの仕事を直に見ていないから、なんとも言えないけれど、社交的で物怖じせず気遣いの出来るお姉ちゃんは確かに接客業向きの性格なのだ。



「えぇ!!有紗のお姉ちゃんって、あの大手化粧品メーカーの星花堂だよね?」

「そうそう。苑田百貨店の星花堂の美容部員」


答えると、ビックリしながら日菜子は言った。


「研修行けるほど売り上げ上げてるなんて、有紗のお姉ちゃんかなり優秀な美容部員だよ!」


多分、日菜子の言うとおりなんだろう。

お姉ちゃんは昔から器用で気立てが良く、要領もよかった。

きっと、大変なこともいっぱいあるだろうけれど笑顔を絶やさずに仕事も生き生きとこなすお姉ちゃんは、私にとって目標であり尊敬する人でもある。


「うん! 自慢のお姉ちゃんだよ」


そうニッコリ答えた頃、見えてきたスーパーの前には背の高いイケメン二人が並んでいた。


「蒼くん! 要! ほら見なさい、この可愛い有紗を!」


言うなり、私の背中をグイグイ押す日菜子。

押し出された先は要くんの前。


「有紗、今日は綺麗。人に見せたくないな……」

「有紗ちゃん、綺麗だね! 日菜っちも可愛いよ!」


そっから日菜子と蒼くんはすっかり二人の世界だ。

相変わらず二人は仲が良い。


今日の浴衣は日菜子は白地にオレンジや赤の金魚と朝顔の柄の浴衣。

私の浴衣は紺地に牡丹に蝶々の柄の浴衣だ。

この浴衣は本来はお姉ちゃんので、日菜子に着せたのが私のだったりする。

だから柄も色も落ち着いて大人っぽいのだ。


「柄が大人すぎたかな? これ本当はお姉ちゃんのなの。今回は日菜子も着ることになってこっちを借りて着たんだけれど……」


なんだか照れくさくて、ちょっと顔を逸らしつつ聞いた私に要くんは答えてくれる。


「似合ってるよ、すごく。大人っぽくて綺麗で困るくらい……。もしかして、今日は化粧もしてる?」


要くん、よく見てる……。


「うん、お姉ちゃんが珍しくお休みで家に居たからメイクしてもらったの。お姉ちゃん美容部員でメイクに関してはプロだから……」


メイク似合ってなかった?

そんなに派手にはしてないはずだけど……。

不安が顔に出てたのか、要くんが慌ててつつも返事をくれる。


「浴衣とメイクで一気に大人の綺麗な感じになったからちょっと焦っただけ。有紗は元から綺麗で可愛いよ」


要くんのストレートな賛辞に、私の顔は真っ赤になる。

そんな私達を蒼くんと日菜子は微笑ましげに見守ってくれていた。


「よし、それじゃあまずは花火まで出店を楽しんじゃおう!」


蒼くんと日菜子カップルを先頭に、私達はお祭り会場に向けて歩き出した。


この間の水族館デートの時のように、今日もしっかりと要くんと手を繋いで……。


辿り着いた出店の辺りは、両端にたくさんの出店が並びカラフルなテントと美味しそうな匂いと、賑やかな音に溢れていた。



「まず、なに食べる?」

「とりあえず、かき氷!」

「いや、俺は肉食べたい!」

「私も、かき氷かな?」


ここで男女の意見が割れる、ありがちなパターン。


「かき氷食べながら歩きつつ、美味しそうな肉の出店を探す! どうよ?!」


日菜子、かき氷はゆずれないのね。


「うーん。男子は肉を求めてて、女子はかき氷なんだね……。お互い近い店に並ぼうか? はぐれないように」


その蒼くんの提案は彼も肉が食べたい証拠だった。

聞き役だったけど、やっぱり食べたかったんだね。


そうして互いに焼き鳥屋とかき氷屋が隣合ってるところに並んで順番を待つ。

最近のかき氷屋さんはシロップかけ放題なのが嬉しい。

たっぷり掛けて食べるかき氷は甘くて美味しい。


順番が来て、お金を払いかき氷を受け取ると、前面に並んだシロップの中から選んでガッツリかけた。

私が選んだのはイチゴ。昔からかき氷はイチゴだ。


日菜子が選んだのはここ近年見かけるようになったぶどう味。


ちょっと気になったので互いのを一口ずつ食べる。

こういう気兼ねないシェアもお祭りならでは。


「んー! 冷たくて美味しい!」

「ぶどう味。初めてだけど、まぁまぁ美味しい!」


そんな感じで二人で食べてる所に焼き鳥屋さんで思った以上の焼き鳥を買ってきた二人が戻ってきた。

その手の袋はパツパツに膨らんでいる。



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