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眩しさの中、最初で最後の恋をした。  作者: 織原深雪


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6

夏休みに入って数日後、今日は日菜子の引退試合の日。


私は前に日菜子に差し入れて喜ばれたマフィンを作って、試合会場である学校のテニスコートに顔を出した。


『スパーン』


ボールが勢いよく飛んでいく音や、弾むボールの音。

話す人の声。


運動部の風景はたくさんの音に溢れている。

動きも早くて、振り抜く音も、ボールの音も鋭い。


日菜子のサーブ姿勢はとっても綺麗。

一連の動きが流れるようにスムーズ。

それでも県大会ではベスト4止まりなのだ。

運動の世界はシビアで厳しい。


見ているだけしか出来ないけれど、日菜子の楽しそうにテニスをする姿を見るのは大好きだ。


日菜子は試合中どんなに押されても、押しててもどの状況でも楽しんでるのがよく分かる。

きっと、テニス自体がすごく好きなんだと思う。


楽しげにアップをしていた日菜子は私が来たのに気づくと、バーっと駆け寄ってきた。


「有紗! 見に来てくれたのね、ありがとう!」

「ふふ、そりゃ日菜子の勇姿は見に来るわよ。今後はなかなかそのテニス姿が見れないんだし」


ニッコリ伝えれば、日菜子も満面の笑みを浮かべて言う。


「それで、その手提げは?」

「もちろん、日菜子の大好きなチョコバナナマフィンだよ! 頑張ってね、応援してるから」


私の言葉にやる気モチベーションが上がった日菜子は、その瞳をキラキラさせて答えた。


「絶対勝つ!!」


そうして試合が始まった頃、要くんと蒼くんもテニスコートにやって来た。

二人は練習着姿なので、どうやら部活中にグラウンドから抜け出して来たみたい。


「二人とも、お疲れ様」


声を掛ければ、二人もニッコリしつつ首にかけたタオルで汗を拭いながら答えてくれる。


「有紗ちゃんも、この暑い中お疲れ様。日菜っちどう?」

蒼くんは試合の始まったコートを見つつ言う。


「まだ、始まったばかり。交流引退試合だからワンセットマッチなんだって。すっごく気合い入ったみたい」


言いながら私は手提げを見せて、微笑む。


「有紗の美味しいおやつの差し入れ付きなら、日菜子も俄然やる気出すだろ」


ニヤリと笑った要くんに、蒼くんも頷いて言う。


「有紗ちゃんの手作りお菓子美味しいもんね! そりゃ日菜っち、やる気だわ」


会話をしつつも、私たちの視線の先には今日も楽しそうにテニスをしている日菜子の姿がある。


スポーツを楽しむ友達の姿は、キラキラと夏の日差しの中で輝いてる。


コールを聞けば日菜子が先にポイントを取った。

しかし、今日の対戦相手は因縁の相手。

そのうち追いつかれ、激戦の末、日菜子は県大会の雪辱を晴らした。


見事勝利を勝ち取って仲間と笑い合っている日菜子。

素敵な試合を見られて、私も自然と笑みが浮かぶのだった。



中一日置いて、次はサッカー部の三年生の引退試合。

こちらも我が校に交流のあるチームを招いて試合をするのだという。


その日はとっても暑かったので、調理室を借りて日菜子にも手伝ってもらって差し入れの準備をした。


この日準備したのはサイダーを使うフルーツポンチだ。

フルーツをカットして、1番大変なのは小玉とはいえスイカをくり抜く作業だった。

これを日菜子と半分に割ったスイカを二人でこれでもかとくり抜き、フルーツもサイダーも冷蔵庫を借りて保管した。


その準備が済む頃には、試合がそろそろ始まるので私と日菜子は大急ぎで試合会場のグラウンドへと向かった。


うちのサッカー部のユニホームは黒に白なのでゼブラな感じだ。

上だけタテ縞で下は黒一色でソックスも黒。

ソックスは折り返し部分に白のライン二本入りの物。


ユニホーム姿は初めて見るけど、結構カッコ良い。

みんなスラッと背が高く、足の長さが際立つ姿をしている。


フェンス越しに眺めている私と日菜子に、キーパー服で暑そうな蒼くんが気付いた。


「日菜っち、有紗ちゃん。今日は見に来てくれてありがとう。俺もバシッとキメるし、要は最高にかっこいいからしっかり見といてやってね」


走り寄って来て、そう声をかけると蒼くんは再びグラウンドの中央付近へと戻って行った。


今回の試合は引退試合とは言え他校との交流戦で、三年生のあとは下級生同士でも一試合やるらしい。


まずは三年生からで、ホイッスルが鳴り響き試合が始まった。


高校生男子のサッカーの試合は迫力があった。

ボール回しも本人達の動きも、テレビで見るプロ選手に引けを取らずとっても早いのだ。

見ていてハラハラしたりドキドキしたり、忙しない動きに見ている方も気持ちが高揚してくる。


そして、相手が攻めてきたボールをしっかり止めるキャプテンの蒼くんはゴールから仲間に声を飛ばしている。


「石津!中に飛ばせ!要もボール貰ったら攻めろ!」


そんな声がけとともに、蒼くんがボールを蹴り飛ばす。


この激からの、みんなの動きはさらにスムーズになり互いに声をかけあいつつ、相手のゴールへと攻めていき前半十分で先に先制ゴールを決めた。


入れたのは要くん。


綺麗に相手選手をドリブルで交わしてパスも回しつつ、最後はかなり強い力でガツンとゴールを決めた。


その姿はとてもカッコよくて、笑顔は弾けるように眩しかった。


その後も気づけば順調に点数を重ね、一時間ちょっとの試合はあっという間に終わる。

うちの高校が完全勝利をおさめて、要くんたちは気持ちよく引退試合を終えた。


三年の試合が終わるとちょうど昼になり、交流校と一緒にお昼休憩を挟んでから下級生の交流戦になるようだ。


それを見越して、私と日菜子は急いで調理室に戻り差し入れのフルーツポンチと取り皿、スプーンを携えてグラウンドへと戻った。


「蒼くん! 差し入れだよ!!」


そんな日菜子の掛け声に、サッカー部の部員がワっと喜びの声が上がる。


私もお皿などを持って、更に大きなタッパー四つにごっそり詰まったフルーツを抱えていると、要くんが走ってきて荷物を持ってくれる。


「調理室からここまで重かっただろ? 言ってくれれば運んだのに……」


少し、眉根を寄せている。

そんな顔もちょっと不満げなのに、かっこいい。


「試合で一時間駆け回ったあとの選手に声掛けれないよ。お疲れ様。初めて見たけどカッコよかった……。もっと早く知って、たくさん見とけば良かったって思ったよ」


微笑んで言えば、要くんは薄らと頬を染めつつ言葉を返してくれた。


「それは、俺も少し残念だけど。有紗とはまだこれから沢山思い出作るし、一緒に過ごすだろ?」


その言葉に私は微かに笑みを浮かべるだけにとどめた。

私は日菜子にも蒼くんにも、要くんにもしっかり話せていないから……。


「この夏、たくさん遊ぼうね!」


私は確かに出来ることにしか、上手く答えられなかった。


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