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眩しさの中、最初で最後の恋をした。  作者: 織原深雪


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5


終業式。

夏休み前の長い校長先生の話を聞き終え、クラスに戻り通知表をもらう。

今年は受験生のため夏休みの課題は最低限。


そんな中、運動部の三人は来週に引退試合を控えている。

サッカーはインターハイも県予選敗退だったので、引退試合は顧問同士が仲の良い強豪校を招いての親善試合だという。


日菜子のテニス部も有力選手は関東大会に行くものの、日菜子自身は県のベスト4で終わり、同じく引退試合は親善試合だという。


どちらも、自校に招いての試合だそうなので、その日私は応援に来る予定だ。


「来週の三人の試合楽しみにしてるね!」


私が声をかけると、蒼くん要くんはニッコリ笑って答える。

「楽しみにしてて、見てて楽しい試合だと思うから」


「有紗が来るなら、俺頑張れるわ」


「いや、要! いつでも頑張ってよ!?」


「いつも以上に頑張る」


コントみたいな会話をする二人を見つつ、日菜子は実に黒い顔している。


「ふふふ、この試合こそ勝つ! 勝ってスッキリ引退だ!」


……。


「日菜子、どうしたの?」


その疑問には蒼くんが答えてくれた。


「引退試合の相手、県大会の準決勝戦の相手で因縁の対決らしい」


なるほど、気合い十分なのねと見守って引退試合の時間などを聞きつつ駅前へ移動を始めた。


今日はファミレスでみんなで夏休みの予定を計画する。

みんなで遊んだり出掛けたり出来るのは、本当に楽しみで仕方ない。


私の駅へと向かう足取りはいつになく、軽くフワフワしていたので危うく転びそうになると、隣を歩いてた要くんが腕を引いて助けてくれる。


「楽しいのは分かるけど、危なっかしいな。ほら、行くぞ」


危ないと判断されたらしく、しっかりと手を握られて歩き出した。

目の前の日菜子と蒼くんも手を繋いでいる。

あちらはカップルなので恋人繋ぎ。


私達は普通に繋いでるけれど、背の高い要くんは手も大きくて。

普通に繋いでも包まれてる感じになる。


これが嫌じゃないんだから、困る……。

私は恋はしないって決めてるのに……。

でも、このムズムズして落ち着かないのに嫌じゃなくて……。


手を離せない……。


なんとなく自分でも分かってきているけれど、認めたくなくて、必死に否定している。

自分の気持ちなのに、ままならない。

思いは複雑だった。


だけど、この夏は楽しみたい。

素敵な思い出が欲しい。


だから、このムズムズとする感覚からは目を逸らして、私は四人で遊ぶ計画の話に楽しく参加して、夕方には家へと帰ったのだった。


帰宅して、今日もいつも通りにすごして夕飯を食べ終えた頃にお姉ちゃんが帰宅した。


「お姉ちゃん、お疲れ様。最近遅番なんだね?」


帰宅したお姉ちゃんに声を掛けると、お姉ちゃんは少しだけ疲れを浮かべた顔で答えた。


「8月の頭に夏季休暇取るためにちょっと今はシフトがきついのよ。でもそこは宏樹と休み合わせてるから頑張らないとね」


恋人とのお出かけ休暇が待ってるなら、お姉ちゃんも多少の疲労が伴っても仕事を頑張るんだな。

大人になるって色々あるのね。


「そっか。私も来週は友達の引退試合を応援に行って週末の夏祭りと花火大会に行く約束したの。あと8月に入ったら1泊2日でキャンプしようって。今年の夏は楽しみだよ」


私のいつになく弾んだ声での予定の報告にお姉ちゃんは少し驚いたようだけれど、ニッコリ笑って言ってくれた。


「そのキャンプ、なんならお姉ちゃんと宏樹も一緒に行こうか? 車があると荷物も運べるし、遠い場所でも行けるよ?」


その提案に驚きつつも、自然の中に行くキャンプに心惹かれる。


「ほら、宏樹はアウトドア好きだからキャンプやるよなんて言ったら張り切って準備してくれちゃうからさ。ここは頼ると喜ぶよ! なにせ有紗が可愛くて仕方ないんだから」


お姉ちゃん、それドヤ顔で言うのもどうなの?

思わず呆れ顔しつつも、思い出した件を話す。


「宏樹さんって、高校に入ってから呼んだらすっごい凹んでたよね?」


大人になってきたし、さすがに呼び方は考えないとと思って改めてみたらかなりのショックと悲壮な顔をして宏樹くんはお願いしてきた。

お願いだから、せめて宏樹くんで。

今まで通りヒロ兄ちゃんでも良いんだよ! って言ってくれた。

その時、宏樹くんは新社会人。

とっても大人に見えたから、今までの呼び方はやめようかと思ってのことだったがそれはいらぬ考えだったらしい。


それを話すと、お姉ちゃんは思い出したのかクスクス笑って言った。


「あれね! 宏樹ってひとりっ子だから、私と付き合ってから出会った有紗が可愛くて仕方ないのよ。妹が出来たと思って可愛がってて、お兄ちゃんって呼ばれて内心すっごい喜んでたのよ」


確かに宏樹くんはいつも可愛がってくれてて、お土産やら受験の時は家庭教師のように教えてくれた。

お姉ちゃんが文系を理系は宏樹くんという受け持ちで勉強したおかげで、私は塾に行くこともなくかなり助かったのだった。


「妹同然に可愛がってた有紗にさん付けで呼ばれて、距離取られたみたいでショックだったらしいわ。だからヒロ兄ちゃん呼びに戻したら、きっと歓喜の涙を零すと思うよ?」


ニヤニヤ笑っていうお姉ちゃんに、考えたあとに言った。


「それ、オネダリする時に有効だね?」

「確かにね」


クスクスと姉妹で笑い合って、こうして夏休みの予定は楽しくなりそうな感じになった。




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