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眩しさの中、最初で最後の恋をした。  作者: 織原深雪


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お昼を食べ終わったあとは有名なローカル線に乗り、本格的に観光した。


大仏が有名なお寺や、境内までの参道にある有名なお店通りでは手焼き煎餅を食べたり、さつまいもソフトクリームをパクついたりした。


そうして訪れた八幡宮は広い境内をひたすら歩き、参拝。

そこで、わたしは折鶴の形の根付守りを買った。

見た目が可愛らしくかつ、綺麗だと感じたからだ。


たまに、猫が歩いたり、木上をリスが走ってったり。

境内の中は意外と動物がいて驚く。


「リス、可愛い! けどすばしっこいね!」


「確かに! 動き早くて写メ撮れなかったよ」


そんな話をしつつ、観光地を後にして私達は帰路についた。

その頃にはすっかり夕方近くなっていた。


学校の最寄り駅についたのは19時頃。


「おやつ食べたけどお腹減ったよね! ご飯食べて帰ろうよ!」


その日菜子の声に、私達は放課後にもたまに立ち寄るファミレスへと足を向けた。


ファミレスでもすっかり皆で食べながら話し込んで、気付けば午後は十時に差し掛かっていた。


「さすがに、そろそろ帰らないと不味いな!」


そうしてお開きになる。


当たり前のように、私の隣に来て手を繋ぐ要くんに聞いた。


「要くん? もう帰るんでしょう? 日菜子と歩きじゃないの?」


そう、疑問を口にすれば要くんはあっさり返す。



「日菜子は蒼が送ってくし、この時間だから有紗は俺が送ってく」


改札を抜けようとするのを、腕を引いて止める。


「大丈夫だよ!今から電車に乗るって連絡入れれば、車でお姉ちゃんが迎えに来てくれるから」


送る必要のないことを伝えたのに、要くんは手を離してくれない。


「俺がもう少し有紗とふたりで居たいから、送らせてほしい」


今日一番の要くんからのストレートな言葉に、私は息を詰めて押し黙ってしまった……。

要くんも、少しばかり恥ずかしそう。

それでも、ここは譲りたくないのか手は離れないまま。


私は握られた手に落としていた視線を上げて、要くんと視線を合わせる。


「ありがとう。それじゃあ手間になっちゃうけど、お願いします」


なかなか普段こんな時間に出歩かないし、電車も乗らないので、私は要くんに甘える事にした。


「うん。でもって、俺の言ってる意味分かってる?」


その言葉に、ん? と首を傾げれば、


「わざとなのか、天然なのか……。もう少し俺の発言が、どんな気持ちから来るか考えてみて?」


そう言われつつ、手を繋いだまま私達は日菜子と蒼くんと別れて改札を抜けて私の自宅最寄り駅へと戻るべく、電車が来るのを二人で待った。


その間ぐるぐる巡ったのは、要くんの言葉の意味だった。


もう少し、二人で一緒に居たいって……。


だから送って行くって……。


まさか……、ねぇ?

だって、要くんはサッカー部で話題のイケメンだし。

校内では同級生からも、下級生からも人気でイケメンともてはやされてる。


そんな要くんが、こんな取り柄もない私が気になるとか?

そんなこと、ある訳ない、ない!


そこまで考えてふぅと一息ついて首を横に振っていたら、要くんが少し呆れた声で言う。


「有紗。考えて、自己完結して落ち着いたとこ悪いけど……。有紗が考えないようにした方が正解だぞって言っとくな。じゃないと俺、どこにもいけないし、なにも出来なくなりそうだから」


要くんは私を見つめて、じつにいい笑顔を浮かべている。

私は言われた事に、ギョッとするとなんとか返事をする。


「要くん?そんなこと言われると私、どうしたらいいのか分からないよ……」


じわじわと理解して、言葉を返すけれど私の顔はきっと今真っ赤に染まってることだろう。


「ほら電車来るから、お姉さんに連絡しろ」


そう言われて慌ててお姉ちゃんにメールすれば、これからここに止まる電車に乗っていると言う。

今日は仕事が忙しかったみたいだ。


「来る電車にお姉ちゃん乗ってるみたいなの。お姉ちゃんと合流して帰るよ」


メールの返信から伝えると、要くんは少し残念そう。


「じゃあ、乗るまで見送らせて」


「うん、ありがとう」


ホームに電車が来るアナウンスと音楽が流れ出した。


そうしてきた、電車には確かにお姉ちゃんが宏樹さんと乗っていてびっくりしつつ合流。


「要くん、ありがとう。また月曜にね!」


要くんはお姉ちゃん達に頭を下げつつ、返事をくれた。


「おう、また月曜にな」


そうして、今日ほとんど繋がれていた手が離れた。


少しの寂しさを伴って……。


そんな私たちの様子を見ていたお姉ちゃんと宏樹くんはにっこり笑って言った。


「楽しかったみたいだし、充実した一日になったみたいね?」


「うん、楽しかった」


そう、楽しかった。

今日、手を繋いで歩いた水族館も観光地も。

どれも新鮮で、ちょこちょこ握られる手にドキドキして……。


なにより、よく笑っていた要くんの笑顔が輝いていて、眩しくって……。


不覚にも高鳴る動悸を、なんでもない顔をして誤魔化すのでいっぱいいっぱいだった……。


もうじき、ジメジメとした季節は終わりを迎える。


私の切られた期限も刻々と迫ってきていた……。



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