表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/24

1-2 檻の中

 気がつくと俺は檻に閉じ込められていた。


「は…………?」


 思わず息が漏れる。


 テディベアのような獣人についていった俺は森に入り、その住処であろう木材と藁で造られた住居がいくつかある集落にたどり着いた。

 集落には同じような獣人がたくさんいて……

 そのまま住居に招かれたかと思えば檻小屋に閉じ込められていた。


 檻を隔てた先では俺を連れてきた獣人と、その両親だろうか、何を話してるかはわからないがまるで人間の家族のように和気藹々と談笑している。



「よお、新入りか?」

「!?」


 突如背後から声をかけられて振り向く。

 俺の理解できる言葉だ。

 見ると檻の隅、ちょうど暗がりになっていたので最初は気づかなかったが金髪を立てたガラの悪い男が座っていた。


「俺はスパイク。三日ほど前に、あんたと同じようにベアタンに捕まった口さ」


 スパイクと名乗る男は、見た感じ俺と同じくらいの歳に見えた。


「あ、どうも……。俺は赤羽当真。ベアタンって、あの獣人のことか?」


「アカバネトウマ?トウマでいいか?あんた、ベアタンを知らないのか?」

「ああ、ちょっと遠いところから来てな、この辺のことはよくわからないんだ」


 違う世界から来たなんて言っても警戒されるだけだろうから、適当なことを言っておく。


「異国のもんか。確かに、見慣れねえ服装ではあるな。執事が着るような燕服のようにも見えるが。おそらくその身なりが奴らのお眼鏡に叶ったんだろうぜ」


 俺は現実世界で死んだ時に着用していたスーツのまま転生してきていた。


「友好的だからホイホイ付いてきちまったんだが、奴ら俺たちのことを食うつもりか?」

「いや、ベアタンは肉食じゃねえ。ただ、奴らは俺たち人間をペットにする習性を持ってやがる」



 ええ……。



 ということは、俺はなにか、道端にいた野良猫のような扱いでここにいるってことか。


「なんてこった……スタートからとんでもない展開だ……」

「まあそう不安になるな。奴らだってせっかくのペットを殺したりはしねえさ。……機嫌を損ねねえ内はな」


 スパイクと話していると、ベアタンの一匹が檻に近づいてきた。俺を連れてきた奴だった。


「おっと、飯の時間か。いいか、トウマ。今俺たちは奴らのペットだ。今は従順なフリをしとけ。いつか脱出のチャンスはある」


 そんなスパイクの頼り甲斐のある言葉を聞き、俺は安心感を覚える。

 いきなりモンスターに捕まったのは不幸だが、その先で同じ境遇の人間がいたのは不幸中の幸いと言えるだろう。


 ベアタンによって檻の扉が開かれる。


「俺に続け、トウマ。なに、一時我慢するだけさ。こんなとこ隙を見てすぐに脱出してやる」

「………!ああ!」


 そんな頼りになるスパイクの背中が、俺にはとても大きく見えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ