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プロローグ

 何か大きなことを成し遂げたいとか身が打ち震えるような感動体験がしたいとか、そんな大それたことは考えたこともなかったが、それでも人はそれぞれ生きる意味を持ってるものだと思う。


 それは俺にとっての、やり残してる仕事だったり休日のささやかな趣味の一時であったり……病床に臥す妹のためであったりするわけだ。


「だからまだ死んでる場合じゃねえんだ」

「いや、死んだんじゃよ?お主」


 どのタイミングで俺がこの真っ暗い空間で偉そうな白ひげを蓄えた神を自称するおっさんと話し始めたのかはわからない。


 ただ、このおっさん曰く、俺は事故に遭い病院で心肺停止、死亡したらしい。


「俺何してたんだっけ」

「履歴書によるとじゃな」


 おっさんがパラパラと数枚の紙をめくる。

 なんだそれ、俺の死亡歴まで載ってる履歴書なんてどこから湧いたんだ。


「赤羽当真、二十三歳男性。職業サラリーマン。大型トラックに乗ってた車ごとぺしゃんこにされたと書かれとるわい。そんな状態で五体満足でいられたなんてラッキーじゃの」


「ラッキーなわけあるか!代わりに一番大事なもん飛んでっちまったよ!五体あっても仕方ねえよ!」

 適当なことを言う自称神についカッとなって食いかかる。


 ……ああ、でも思い出した。


 あれは外での仕事を終えて帰社途中だったか、帰りの国道で事故に巻き込まれた。


 バックミラーいっぱいに迫ったトラックを認識した瞬間、一瞬の衝撃とともに目の前が真っ暗に____

 思い返すだけで身震いするような体験だ。


「で、俺は死んだわけか」

「そうじゃと言っとろう」


「死んだヤツはみんなこういうとこに来るのか?なにここ?天国には見えねえぞ。暗いし。それになんであんたみたいなおっさんといるんだ?可愛い天使や美しい女神様ならともかく」


「お主失敬じゃのお……ホントに失敬。我、神ぞ?本来なら涙流して敬う存在ぞ?」


「俺、神様って信じてないんだよね。俺がパチンコで大負けした時、最後の最後で激アツ演出が外れた時から俺は無神論者だ」


「俗物じゃ……俗物じゃのう……こんなのでも地獄行きにならんのじゃなあ」


 やかましい。神なんぞ信じていないが地獄に行くほど悪いことをした記憶もない。


 むしろ真っ暗な空間で胡散臭いおっさんと二人っきりのこの場所が地獄に感じる。


「で、俺はなんでこのよくわからない暗闇にいるんだよ。死んだのはわかった。渋々ながら納得した。理不尽な死だが承知しよう。そして地獄行きじゃないこともわかった。そんな俺は天国に行くだけじゃないのか?」

「まあそう急くでない。いやな、生前の世界に未練のあるお主に良い話があるんじゃ」


 胡散臭さが増す発言だ。

 何を言いだすんだこの自称神は。


「お主、世界を救ってみたくはないか?」


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