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第4話 羨望

ラブコメが好きだ。俺TUEEE系が好きだ。ハーレムものが好きだ。とにかく俺は、可愛いヒロインが出てくるアニメが好きだ。

ヒロインと主人公に介在する微妙な距離感、それに対するヒロインの行動が、頑張りが、非常に萌えを感じてならないのだ。


「それ、タイトルは?」


「AIっていう作品だ。アンドロイドの少女と人間の僕が恋をするっていう話だ」


「ふーん」


少し妙な感じがした。羨んでいるというか、何というか。とにかく、ネガティブな感情をその言葉に感じた。


「なんだよ」


「アイちゃんって子、好きなの?」


「ああ。俺の嫁だ」


「嫁?」


「えーっと、まあ、推しキャラってことだよ」


「なるほどねー。その子のこと好きなの?」


「勿論だ。嫁って言うほどだからな」


「ふーん」


「何か文句でも?」


「いや、羨ましいなって思って」


羨ましい?どういうことだ?とりあえず、続きを促す。


「アイちゃんと悟さんは絶対に結ばれないわけでしょ」


「そりゃ2次元だしな」


「それでも君は彼女のことを俺の嫁だって言った。絶対に叶わぬ恋なのに。誰からも理解されないかもしれないのに。それが私には羨ましい。それと、すごいなって思ったの」


なるほどな。そういうことか。


「俺は誰かに理解して欲しくて、アイちゃんの嫁って言ってるわけじゃない。アイちゃんと結ばれたくて嫁って言ってるわけじゃない。ただ、俺はアイちゃんのことがただ、好きだから嫁って言ってるんだよ」


「それで傷ついてしまうかも知れなくても?」


「ああ。好きって気持ちは、裏切れない」


「すごいな。私はもう、無理だ。素直に好きなんて言葉、言えないよ」


世界は残酷だ。こんな子にここまで重い業を背負わせるなんて。香菜はまだ、中学生なのに。中学生、なのに。


「香菜は告白したこと、後悔してるのか?」


「……うん。後悔してる。あんなこと言わなければ今も普通に話してたのかなって思うとなんか、悔しいよね」


「そうか。香菜はその子のこと好きだったんだよな」


「うん。大好きだった。小さい頃からずっと好きだったし、今になっても、拒絶された今になっても好きだよ。振られたくらいで嫌いになんて慣れるはずがない」


「そうか……。」


頭の中で何回か繰り返し、本当に言うべきなのか考える。傷ついている香菜にとってこの言葉は本当に必要なのだろうか?


「香菜は伝えたいことがあったんだろ。それで、伝えるための努力をした。それはきっと、価値のあることだと思うぞ」


「悟さん……。男ってみんな、私から大切なものを奪うだけの害悪だって、ずっと思ってた。でも、私に大切なものを与えてくれる男もいたんだね」


香菜は泣きそうな顔で笑った。


「悟さん、好きだよ」


「は?」


「友達としてね」


コイツ。やっぱ生意気だよ。でも、この笑顔を見れたなら、やっぱ良かったのかな。


「悟さんの呆気にとられた顔、間抜けすぎて好き」


いや、くっそムカつくなコイツ。せっかく俺が優しさを見せたというのに。


「さ、ご飯作るぞー!励ましてくれたし、今日はちゃんと作るよ!」


「今までちゃんと作ってなかったのかよ」


「えへへ」


やっぱり、香菜は笑った。不器用な奴め。素直にありがとうって言えばいいのにな。まったく。


ちょっとだけ香菜を小突く。暴力反対!と香菜が言う。生意気な奴め。だけど、俺はしおらしい香菜よりも、生意気な香菜の方が好きだ。


「キッチンは任せてくれていいから、リビングでリラックスしてて」


「ありがとな」


香菜は少し手を挙げた。ずり落ちた袖から見えた腕が、少しだけ気になった。

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