第3話
●惑星「乱打」
○年蔵の娘カリン登場
年蔵家の庭で、一生懸命に剣の稽古をするおかっぱ女の子がいた。
「とりゃーーーー!!」
棚に置いていある巨大な岩を十字に斬った。
割れた岩が地面に落ちて、ものすごい地鳴りがした。
「凄~~~~い。カリンちゃん」
パチパチと拍手をして褒める、カリンと同い年の男トルンガ。
「こんな岩を斬った所で、何の自慢にもならない」
「そんな事ないよ。普通の人間では、出来ない事だよ」
「汗」
「はいは~~い」
トルンガは手に持っていたタオルをカリンに渡した。
「もっと強くなって、紅を強くするんだ」
「おお~~~!!さすがカリンちゃん。言う事が凄~~~い」
「フフ。当然だ。」
笑みを浮かべるカリン。
「カリン様。年蔵様がお呼びです」
使用人が伝えに来た。
「何だろ?」
「ボクとの結婚話とか?」
「バーーーカ。冗談じゃない。弱いアンタに興味は無いんだよ。」
ボディにパンチを入れた。
「ゴフ。痛いよカリンちゃん。」
地面に崩れ落ちて抗議するトルンガを置いて、さっさと父の所に行った。
「カリン。好きな男はいるか?」
「は、はい? いきなりどうしたの?」
動揺するカリン。
「そろそろ嫁に出す年頃だと思ってな。」
「イヤ。弱い男の所に行くのは絶対にイヤ。」
腕組みをして、頬を膨らませた。
「そうか。今度、武力大会を開く案がある。」
「え!!本当に!! やったーーー!! 見に行きたい。見に行きたい。」
嬉しそうに踊りだす。
「それで、カリンに出てもらう。」
「やったーーー!! ありがとう」
年蔵に抱きつくカリン。
「景品としてな」
「へ!? ど、どう意味?」
渋い顔をする年蔵から離れて、困惑するカリン。
「大会に勝った者と結婚してもらう。」
「ウソでしょ。」
顔を左右に振る。
「ウソーーーーーだ!!」
大声で答えた。
「強い者と結婚したいんだろ? ちょうど良いではないか」
「イヤイヤ。父上。その話は無し無し」
手でバッテンをして拒否する。
「なぜイヤなのだ?」
「戦場に出れなくなるから」
「それは、夫になる人次第ではないか」
「もし。ダメっと言ったらどうするの?」
「さぁーー」
「ほら、そうなるじゃん。イヤイヤ」
「もう決めた事だ。観念せい。」
父は部屋を出た。
「イヤだ~~~~~」
地面に崩れ落ちた。
外にいたトルンガと目が合う年蔵。
「そういう事だ。」
ポンとトルンガの肩を叩いて去った。
トルンガは両手で強く握り締めて、震えていた。
しばらく、みんなには言えない悪口を言って、スッキリしたのか
良い事を思いついたカリン。
「待って!!誰でも出られるって事は、変装して大会で優勝すれば結婚しなくてすむはず。
私って天才!!!!!!!!!!!!!
そうと決まれば、トルンガ、トルンガ
・・・あれ?どこ行ったのアイツ」
●惑星「ガルバン」
○スズのちょっかい
「ふぁ~良く寝~~た。」
ボサボサの髪で冷蔵庫を開けた。
「プゥハーーーーー。
やっぱり、起きた時は炭酸に限る。」
ゴクゴクと炭酸のペットボトルを飲んだ。
「あれ。あれれ。何も無い。あ~。買うの忘れてた。ふぅ~~~
お腹空いた。今から作りたくないし、ピザとかピザピザピザばっかり食べたから飽きちゃったなぁ。
何かないかなぁーーー!!あ!!」
「フフフ。良い事、思いついちゃった。」
ニヤニヤするスズは、ベランダの方にある窓を開けて、
そろりそろりとベランダから隣の部屋に行った。
「よし完璧」
味見したカズオは、料理を食器に注いだ
「今日も良い天気だなぁ」
窓を眺めた。
スズは、ばれないようにチラリ、チラリと中の様子を伺った。
「フフフ。気づいていない。気づいていない。突然飛び出して驚かしちゃお!!」
笑いを堪えて、楽しくて仕方がないスズ。
窓をコンコンと叩いて、窓の下にあるスリガラスに隠れた。
「うん。何だ今の音?風か?」
「ククク」
笑いが止まらないスズは、両手で笑いを堪えるのに必死だった。
もう一度、コンコンと叩いて隠れた。
「まただ。何かあるのかなぁ?」
カズオは窓に近づいた。
(よーーし。来たーーー!! 開けたら驚かすぞ!!)
ガラガラと窓が開いた。
(よし、今だ)
「ヘビだ」
「え!!」
スズが飛び出そうとした瞬間に、ヘビが現れた。
「キャーーー!!」
スズはしりもちをついて、絶叫した。
「ハハハハハハ は、腹が痛いいいいい。おもちゃだよ。おもちゃ」
お腹を抱えて笑うカズオ。
状況が解らないスズは、呆然としていた。
「何で解ったの?」
「ハハハ バカだなぁ。隠れたつもりかもしれないけど、見えているよ」
「え?この下のガラスは見えないんじゃない?」
「見えるよ」
「ウソだぁーー」
「ホントだって、じゃ見てみな」
スズを中に入れて、カズオが外に出て見せた。
「ほら。どうだ見えるだろ?」
楽しそうに、おどけるカズオ
「う~~~ん」
「ハハハ。おバカちゃん。」
「え!!」
スズは怒って、窓を閉めた。
「フーーンだ」
「おい。冗談はよせよ。おい」
ドンドンと窓を叩く
「スズをバカにしたバツ」
あっかんべーをした
そして、テーブルにあった食事をモグモグ食べ出した。
「うん。美味しい。やるーー」
「おーーい おーーい。開けてくれーーー」
何も聞こえないふりをして、美味しそうに食べるスズ。
すると、外が一気に曇りになり、ヒョウが降ってきた。
「オイオイまじかよ」
上を見上げるカズオ。
「スズに謝る?」
窓の方に近づいて、ニンマリとした表情で聞く
「誰が謝るか」
「あっそ」
テーブルの方に向って、またモグモグと食べ出した。
ヒョウがベランダの中まで入って、カズオを襲った。
「アイタ。イタタタ」
「バチがあたったのね」
嬉しそうなスズ。
「しゃれにならん。開けろ開けろ」
「何か言う事があるんじゃない?」
「悪かった。言ったぞ。開けろ」
首を振るスズ。
「気持ちが入ってな~~い」
「何だと!!! イタタタ」
さらに激しくカズオを襲う。
「ゴメン ゴメン」
「スズ様は?」
「はぁ?何言って イタタ すいませんスズ様」
「それから、スズがこれから食べに来てもいいって約束して。」
「それは関係ないだろ」
「だって、こんなに美味しい料理、お店以外では食べた事ないもん」
「そ~ぉ!!」
嬉しそうなカズオ
「ねぇいいでしょ」
目をウルウルさせておねだりする。
「わかったわかった。考えてみるから開けて」
「やった~~~」
ジャンプして喜ぶスズ。窓を開けた。
カズオが痛そうな顔で入ってきた。
「あ、あそこに何かあるぞ!!」
ベランダン奥の方を指差す。
「どこどこ」
「ほら、あそこだって」
「ガシャー」
スズが外に出た瞬間に窓を閉めた。
「あ~ 何で閉めるの? まだ食べ終わってないのに~~」
「お帰り」
「ずるい 約束したでしょ」
「考えると言ったんだ。考えてみてダメという決断になった。」
「ウソツキ、ウソツキ」
「ウソは言ってない。勝手に自分の都合が良い解釈をしたんだ」
「そんなの。へりくつだもん」
「とにかく、ダメ」
カーテンをビシッと閉めた。
「ムキーーーー。・・・・イタイタイ」
また、ヒョウが降って来たので、ダッシュで自分の部屋に帰るスズ。
「久しぶりに、大笑いしたなぁ」
写真立てを見て笑った
○やる気を無くした徳夫に、子供が話しかける
徳夫は、公園でベンチの上で寝ていた。
「ねぇ~おじさん。おじさんってば」
小学校くらいの男の子が、徳夫を揺さぶった。
「ふぁ~。なんだ」
眠たそうに起きる。
「そこ、ボクの席なんだけど。」
「ははっは。ここは、みんなの席だよ。」
「いつもこの時間は僕が座っているの」
首を振って、自分の席だと主張する男の子。
「う~ん。困ったな」
ぽりぽりと頭をかく。
「おじさん。僕が悩み事を解決したら譲ってくれる?」
「ハハハハ、悩みを解決してくれるんだ。」
笑って相手にしない様子をムスッとした顔で見つめる男の子。
「解った。解った。そうだなぁ。
頑張っているけど、結果が出ない時はどうしたらいい?」
「うーん。うーーん。うーーーーーん」
手で顎に触って、考え込む
「やっぱり、無理だよね。子供には」
「お母さんに聞いてくるから、明日ここに来て。」
「いいよ。そこまでしなくても」
「だって、僕も知りたいから」
「わかったよ。また、明日来るよ」
「じゃね。おじさん」
手を振って、走って帰る子供。
「子供っていいなぁ。」
自然と笑顔になる。
「俺にも子供が居れば・・・、いかんいかん、考えるのは良そう。
でも、なんかだか今日は気持ちの良い日だなぁ」
背伸びをして、笑顔になる徳夫だった。
○おばさんに連れて来られた勝彦
「はぁ~~~大きな家ですね」
両手に大きなビニール袋を持って、豪華な家の中に入った。
「私、ここの家主と友達なの。それで、良い家政婦がいないか探してって頼まれてね。」
「はぁ」
「今から、テストをします。」
「テストですか?」
「そうよ。働き振りを見ないと紹介出来ないでしょ。」
「そ、そうですね。でも、あんまり自信が・・・」
戸惑う勝彦
「じゃ辞める? ここの給料は良いはいいわよ」
「やります。やらせて下さい。自信だけしかありません。」
満足そうなおばさん。
「じゃ。1時間上げるから、料理と居間の掃除をお願い」
「はい。」
敬礼をした。
「うぁ~~~汚いなぁ。」
洗ってない食器が沢山あったり、床やテーブルなど全く掃除されてなかった。
「よし!!やりますか。」
エプロンを着て気合を入れた。
溜まっていた食器を洗って、乾燥機に入れたり、モップを掛けてた後、掃除機を使って掃除をしていた。
そして、料理の材料も手馴れた手つきで、心地良い音で切って鍋に入れた。
猛スピードで動く勝彦を見て、驚くおばさん。
1時間後。
「出来ました」
「早いわね」
時計を見るおばさん。
そして、出来上がった料理の味見をしてもらう。
「うん。美味しい。合格」
手でOKのサインを出した。
「ありがとうございます。」
深くお辞儀をした。
「後は、部屋にある洗濯物を洗ってくれる?」
「はい。わかりました。」
部屋に入ると、お菓子が机の上に置いてあり、ベッドの上にネマキやブラジャーなど散乱していた。
「汚い。女性の部屋なのになんて汚いんだ。」
眉をひそめた。
「結構大きなブラジャーだなぁ」
ブラジャーを手に取った。
いきなり、ガチャっとドアの扉が開いた。
反射的にドアの方を見ると、そこには勝彦にクビと言った女が立っていた。
しばらく、見つめる二人。