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リバーシ!  作者: 大野 大樹
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9.俺の13年間

「‥なんか、スミマセン‥」

 右側のベッドサイドに、王子とミチル。

 左側のベッドサイドに、もう、ぴったりと張り付くように、母さん。

 父さんなんて、枕元に俺を支える様に立ってる。‥ベッドをわざわざ動かして立つ場所を作ったんだ。

 そうやって皆不測の事態の為に‥というか、俺が無駄に動かないように監視してるんだ。

 動かないよ! ‥さっき、だいぶん痛かったもん‥。

「無理しちゃだめだよ」

 王子は、呆れたって顔はしなかった。

 俺を心配して、無理したことに対して怒っていた。

 ‥人間出来てるって感じする。

 横で、大笑いしているミチルとは大違いだ。

 おい、ミチル。地球人が皆お前みたいに性格悪いと思われたら困るから、もう少し大人しくしていてくれ。

 俺は、こっそりとミチルを睨みつけたが迫力がなかったからか、ちっとも効果なし。(迫力ないってのは、よく言われるからもう慣れてるけどね! )

 王子は俺に注意した後は、

「私に気を遣ってくれたんでしょう? そういうことは、無用だからね」

 ってロイヤルスマイル。

 ‥心が洗われるようです。

「‥ホント、スミマセン‥」

 後で、ミチルにリハビリをしてくれるお医者さんを教えてもらおう。王子に聞いては駄目だ。借りとか作りたくない。

 それにしても‥

 この人は‥、普通に善良な人って感じがする。

 キショいとかいって、ごめんなさい。

 ‥それとも、また俺が単純に信じすぎてるだけかな。

「ゆっくり日常生活に慣れて行けばいいのです。少しの間はこちらだけで暮らしますか? 」

 つまり、ミチルみたいにこっちに12時に来て、あっちに朝5時に帰るんじゃなく‥ってこと。

 朝もこっちで起きて、夜もこっちで眠る。(って、俺は眠らないけど)

「‥そんなことも出来るんですか? 」

「こちらで産まれたリバーシの方があちらに行くことは、寧ろ少ないですよ? 何か技術を学ぶために留学するってことは過去にもありましたが」

 王子は丁寧な口調で教えてくれる。「そんなことも知らないのか? 」なんて一切言わない。

 いちいちミチルとは違う。‥でも、ミチルも「そんなこと知らないのか? 」なんて言わないな。さっきは疑ったけど‥実は別に悪い奴じゃないって思ってる。

 ミチルは、あっちの世界の出身で、あっちで暮らしている。そして、ミチルのあっちの身体が眠っている間に、こっちに来て働いているらしい。

 俺は、あっちで暮らしている時、12時になったら意識はなくなってたけど‥その間何をしていたのかは知らない。(帰ったら母さんに聞いてみないと‥そんなこと考えたこともなかった。身体があるから「身体が眠る」のであって、意識だけの俺の身体は‥もしかして消えてたのかな?? )

 ‥まあ、それはそうとして、ミチルは地球出身だから生活基盤が地球。だから地球に昼間いる。だけど、こっちが生活の基盤だったら? ‥(生活の基盤ではない)地球に行くのは夜中ってことになる。技術を学ぶために留学するっていっても、夜中じゃ学べることも少ないだろう。

 その為、今の母さんたちみたいに身体ごとあっちで移住するんだけど、その際の手続きなんかが凄く大変なんだ。

 (あっちの)戸籍だってないわけだしね。

 あっちとこことは随分違うらしいし。移住は大変だったろうって思う。

 母さんたちには苦労させてきた。

 これからは、やっぱりこっちに帰ってくるべきなんだろう。

「でも、急にそうするわけにはやっぱり‥。あっちで今まで暮らしていたわけですから」

 ‥急には、無理だ。

 やっぱり、仕事をやめなければならないとか家の売買だとか‥手続き的なことはしなければいけないだろう。今まで暮らして来たんだから、やっぱりいろいろある。それは、父さんたちも同じ。

 ‥それに、寂しくもあるしね。

 やっぱり、きちんとお別れを言いたい。

 ‥実はというと、‥こっちで暮らすなんて、‥俺には考えられない。

 黙っている俺に頷いたのは、ミチル。やっぱり、あっちの世界の人間だからその気持ちがよくわかってくれるのかもしれない。

 でも

「今まで働いて得た知識をこちらで活かせることが出来ると思います。こちらに戻ってくるのが楽しみです」

 父さんたちは王子に言っている。

 嬉しそうだ。

 そりゃそうだ。こっちに帰ってきたいよな。

 もともとこっちの出身なわけだし。

 俺だってそれは同じなはずだ。だのに‥。

 だって、13年間だ。10年以上もあっちに居たんだ。

 それが、全部嘘でなかったことにしないといけない‥っていうんだったら、俺の13年間は何の意味があったんだろう。

 父さんたちと違って、何かを学び取ろうなんて意欲は無かった。別に地球のこと、何も学び取れていないし、何も知らない。

 ただ、暮らして来ただけだ。

 きっと、あっちの便利さに慣れてしまってるから、‥こっちで生活できる自信は無い。

 ‥こっちの、俺。

 眠り姫は目が覚めて、見ず知らずの王子と‥


 本当に恋におちたんだろうか?


「なんでラルシュ様は、俺を助けたんですか? 」



「君に一目で恋に堕ちたから」

 なんて言われたら、俺は多分ドン引きしていただろう。

 それに、‥そんな王族、まずいだろう。

 だけど、ラルシュはそんなこと言わなかった。

「私しか多分助けられないと思ったから」

 と。

 ラルシュは、静かな声で言った。

「それは、そうだろうな」

 ミチルも頷いて

「呪いを解く方法は、その魔道具を外すことだけだ。だけど、俺もこれまで散々努力したけど、それを外すことはできなかった」

 と付け加える。

「あ、そういえば子供の頃俺もこれが外れなくて困った。小学校に付けていくのは流石にアウトだろ? って思って‥で、結構頑張ったんだけど、結局取れなくて、ずっと包帯で誤魔化してた。だから今の今まで何となく「これはもう取れないもの」って思ってた。いやあ、あっさり外れたね。今まででも外れたのかもね。子供の時以来試したことなかったや」

 子供の頃は力が無かったから取れなかった‥ってことかな? 

 兎に角、俺は「出来ないもの」って思い込んで、それ以来何も試してこなかった。それこそ、つけてるのが当たり前‥みたいになってた。

 それ程には「馴染んできていた」ってわけだ。

「そういうもんなのかね。俺なんかそういうのつける習慣ないから、絶対ずっと気になって触っちゃうだろうなあ‥」

 ミチルが首を傾げる。

「俺も別にアクセサリーとかつけないぞ? 」

 気が付けば、ミチルに話すときに敬語を使ってなかった。(それはミチルも同じだ。ミチルはでも最初から‥丁寧語すら使ってなかったような‥)

 俺はそう「初対面の人間にフランクに話しかけられる人間」でもないんだけど、いろんなことがありすぎて‥うっかりため口に成る程には‥ミチルを「顔見知り」設定していた‥ってことなのかな。

 不信感いっぱいで、‥信じちゃいないけど、今王子の前でその態度を出すのはどうかと思うし。

「子供の頃は試しても取れなくて、今はあっさり。‥魔力の使い方が分かるようになった‥とか、スキルが増えたとか‥かもなぁ‥」

 ミチルがすっと、真剣な目で俺と目を合わせた。 

 かちり、って音がするくらい、だ。‥あれ? この感覚に覚えがある。

 なんかこころの内を探られるような‥居心地悪い視線‥。

「ミチル! 」

 王子様が怒ってる‥。何、ミチルまた王子様に怒られることしたの‥‥?



ヒジリ

性別:女

称号:スリーピングビューティー

状態異常の皇帝

スキルの創造主

状態異常:水の状態異常

「接触面」の状態異常(接触点からの、発展形)

    石の状態異常



「ん? スキルが‥ない。状態異常の皇帝とスキルの創造主。こんな称号初めて見たけど‥。ああ、もしかして、創造したスキルが何でも使えるから、わざわざ書く必要がないって感じなのかな? ‥無敵すぎるな。まあ、属性のしばりはあるんだろうけど、‥何だろ。属性が分からない。こんなことあるんだろうか。しかし、凄い魔力だな」

 ‥何。急になんか難しいこと言い出した。(難しいっていうか、厨二なことだな! )

 ミチルの声で、我に返った。

 なんだ? さっき‥

「ミチル! 勝手に何を! 」

「だって非常事態じゃん? 」

 王子は激怒して、ミチルは‥シレっとしてる。

 だから何を怒ってるんだ? それにさっきの画面‥俺のステータスじゃなかった? 名前のところ俺になってたし。何、ゲームみたい。

 そういうのって‥俺しか見ちゃダメなやつじゃない? ゲームだとそんな感じだけど‥。

「さっき、何したの? 」

 俺はミチルを睨みつけてきつめに聞いた。

「ん? ああ」

 ミチルは、ちょっと首を傾げ、そして頷く。

「鑑定だよ」

「鑑定。ん。鑑定ね」

 ‥勝手に鑑定するなよ‥。個人情報とかだろ、それ‥。

 キショいし‥。

 そりゃ王子様も怒るはずだよね。だのにミチル動じないとか‥。

「もう勝手に見ないでよ」

「ごめんごめん」

 って悪いって思ってないよね絶対‥。


 にしても‥

 魔法‥さっきのって(ゲームでは)鑑定魔法って言われる奴じゃない? 

 ‥ミチルやっぱり魔法使えるんだ。


「確認したいんだけど、こっちでは魔法は使えるけど、あっちでは使えないんだよね? でも、ミチルはあっちでも魔法使ってたよね? 」

 俺は、訝しそうにミチルを見てしまった。

 いや、そんな顔する気なかったんだけど‥ごめん、ちょっとそんな顔になっちゃった。

 ミチルは、また一瞬ぽかんとした顔になって、そしてふふ、と笑った。

 その一言は、俺をさらに混乱させ、ラルシュを呆れさせるものだった。



「使ってないよ。だって、あっちでは魔法は使えない。こっちでしか使えない。こっちでのみ使えるものがある。そんな面白みでもなかったら、こんなとこ来ない」


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