70.俺が思っている以上に、‥俺は凄いのかもしれない。~引き続き、ヒジリの話~
「思った以上に悲惨な子供時代だったってわけだな。‥だから、お前は自分の身を守る為にそんな粗野な言葉遣いになったと」
ふうん、と、サラージ様がちょっと眉を寄せた。
なんだかんだ言って、サラージ様はいい奴だから心配かけてしまったな。‥ツンデレだけど。
でも、会った時に比べたら随分素直に‥?‥は分からないけど‥なった気がする。
慣れてくれたのかな?
けど、まあ‥相変わらず口は悪い。
女だのに、ぞんざいな言葉遣いで、男っぽいとか、男っぽいとか! わざわざ言わなくていい。
俺は、女の見かけになってる方が寧ろ違和感ある。
だけど、まあそんなことサラージに言っても仕方が無いか。
「‥それは関係ないです。あの頃は、‥こうじゃなかった‥と思う。多分。髪だって伸ばしてたし。確か、毎日髪だって櫛でとかしたりして、それなりに女の子らしくしていたと‥。あの頃は、男のようにしよう‥なんて思ったことはなかった‥と、思う」
‥「少しは綺麗になりたい」ってこっそり櫛でといてたなあ、あの頃の俺は‥。だけど、「でも、どうせ、気休めにしかならない」って、そのことを隠してた。可愛いナツミと居たから、余計に自分の地味顔がコンプレックスだったんだろう。
今では気持ちは分からないが、あの頃の俺は「女の子」だった。「男のようになりたい」なんてこれっぽっちも思ってなかったはずだ。
ナツミみたいになりたい。
‥ナツミより、あの人に良く見られたい‥。
あの人って? ‥インテリ眼鏡だ。
‥恥ずかしい。
ないわ~。そういう想い出とか、‥黒歴史だわ~。
「‥なんでそこで顔を赤くする‥」
‥サラージ様にドン引きされてる。
「昔の思い出なんて、黒歴史でしかないことが多いもんです‥」
さらに顔が‥熱い。
絶対、半端なく顔赤いんだろう。
恥ずかしい‥。
「さっき話してた中に何かそんな要素あったか?? 」
サラージが眉を寄せて首を傾げている。
‥こいつは、‥デリカシーとかないな。そんなんじゃ、モテないぞ。俺は女とかじゃないけど‥ないけど! 女だとオマエが思うならば、困らせる様なこと言うんじゃない!!
いや、俺は‥別にいいんだけどさ!!
「サラージ、あまりヒジリを困らせないでください」
ふう、とラルシュ様がため息をついている。
そう! ここで、それを言えるのはラルシュ様だけなんだから、言ってやってください!!
まったく‥もう。
「それで、ヒジリちゃんとナツミちゃんがクラスで浮いててどうなったの? もしかして、卒業までそんな調子だった? いや‥ヒジリちゃんは卒業まで学校に行っていない? 」
ナラフィスさんが苦笑しながら話を元に戻した。
ああ。学校の話でしたね?
「はい。‥ナツミは知らないですが、俺は卒業してないです。途中で眠ってしまってましたから。それと‥クラスで虐められてた件ですが‥、キレたナツミが派手に暴れて、ナツミと俺だけ他の教室に隔離されて授業を受けることになりました」
‥そうそう、‥ナツミが俺について来てくれたって思ってたけど、正しくは、「俺が」キレて大暴れして隔離されたナツミの巻き添えを食らったんだった。
「で、そこで受け持ってくれた先生ってのが変わり者の魔法オタクで‥。新しいスキルやら攻撃魔法を自分たちで考えたりすることに授業時間の殆どを使ってました。‥それこそ理論よりも‥」
‥だから、学校に少しとはいえ行ってたはずなのに、物知らずなんですよ~。
決して、授業を真面目に出てなかったとかじゃないんです。
学校は好きでしたしね。
自分で教科書を読んで自習する程は勉強は好きじゃなかったけど。
「魔法オタク‥」
って、ナラフィスさん。
「ナラフィスみたいだな」
ってこの毒舌はサラージ様。
自覚してるっぽいから、そっとしておいてあげて?
「‥その先生、僕らの担当教諭かもしれないね‥」
ぼそ、っと呟いたのはラルシュ様。
僕ら、ってナラフィスさんとラルシュ様。どうやら同級生だったらしい。
インテリ眼鏡、あれで結構長いこと先生してたみたいだから、知り合いだとしても、驚かないな。寧ろ、大納得だよ‥。ナラフィスさんと性格ちょっと似てそうだもん。‥勿論魔法オタクってとこが‥。
そういえば、インテリ眼鏡の名前、知らないな‥。
「スバル先生? あり得るね」
ナラフィスさんとラルシュ様がこそこそ、って小声で言葉を交わした。
魔法使いだろうとリバーシだろうと、それ以外だろうと、初等教育は同じだ。王族も、貴族も同じ学び舎で学ぶんだ。もっとも、長男以外は、だ。サラージ様もそこで学んだらしい。
「ヒジリちゃんが物知らずなのは勉強不足で頭に入ってないんじゃなくって、先生から教わっていなかったからなんですね、」
ナラフィスさん大納得。大きく頷いています。
‥イエ、スミマセン‥。忘レテル分モオオイデス。
にしても‥物知らずで勉強不足‥。
言っちゃったよ、この人。わざわざ言っちゃったよ。‥それ、スルーすべきとこじゃなかった??
ナラフィスさんも大概毒舌ですね!! 毒舌王だと思ってたサラージの上を余裕で行きますね!! サラージ様が「あ~あ、こいつ言っちゃったよ」って顔してますよ!!
「俺に、状態異常の皇帝、スキルの創造主って称号をくれたのも、そういえばその時の先生でしたね」
苦笑いして、傷ついてないフリしましたよ。‥俺は大人ですからね。学者ってのは、ちょっと浮世離れしてるから、考えなしに毒舌吐いちゃったりするのも仕方ないですからね。
‥っていうか‥
この厨二な二つ名。
そういえばそうだった。
あれはインテリ眼鏡が命名したんだった。‥100%嫌がらせだね!!
「なんだ、その変な称号‥」
サラージ様がドン引きしている。
サラージ様ならば苦笑すると思ってたのに、まさかのドン引き。かえってカッコ悪い‥。いたたまれないからせめて笑って欲しい‥。
‥厨二って思うな、俺が言ったんじゃないから!!
ナラフィスさんは
「状態異常‥例えば? 」
素だ。
うわあぁああ。
「‥金属でなんでも止める金属の状態異常、なんでも水に変える水の状態異常、石を魔石に変える石の状態異常」
平常心平常心。
ナラフィスさんは、ポカンとしてる。
ソウデスよね。ポカンですよね。‥それにしても、口に出したら、‥なんてセンスないんだろ。
サラージ様を見たら、‥プルプルしてる。
もういっそ、爆笑してほしい。
ミチルには一度説明したことあるから、表情も変わってない。(っていうか、さっきから静かだ。一言もしゃべってないね? )ラルシュ様には言ったことあったっけ。まあ、初めて聞いたんだとしても、爆笑はしないだろう。‥人間出来てるから。(※会って直ぐ位の時にミチルがヒジリのステータスを公開している)
「なんだそりゃあ!! その‥何でも止める金属の状態異常? 見せて!? 」
‥とうとう爆笑したサラージ様。
‥馬鹿にしてるなあ。
「見せてって言われても‥。ああ、ラルシュ様、剣かなんか貸してください。折れてもいいやつ。ああ、鉄の棒とかでもいいです」
「え? 」
急にそんなこと言われて、驚いたらしいラルシュ様が俺を振り向いて、首をちょっと傾げる。
俺は、そんなラルシュ様に頷く。
「鉄の棒? 」
戸惑うラルシュ様を横目に、俺は俺のリハビリ用にと置かれていた鉄製の‥鉄かな? 杖を手に取って目の前に横向きに構える。
「サラージ様、思いっきり、俺に何かを投げて下さい。なんなら剣で打ち込んできてくれても構わないんですけど、‥サラージ様の剣の重さ‥っていうか威力が、俺のこの杖より重かったら、防ぎきれないから‥」
にこ、
っと微笑む。
サラージ様が固まる。
まあ。急に「かかってこい」って言われて、かかってこれるとは思ってませんけど。
「‥ああ! なんかわかった‥。超‥反射神経が上がる系の‥身体能力向上スキル?! 」
ナラフィスさんが弾んだような声で聞いてきた。
‥あて物クイズじゃないですけどね。
俺は苦笑する。
「‥外れです。それなら、金属は要りません」
まあ、金属をつかった時属性のスキルですけどね。
魔法じゃない。スキルだから「理屈」っていうか、「プロセス」がある。
急に、何もない空間から盾が沸いてくるんじゃない。
自分に向かってくる攻撃その他を止める装置を作り(スキル化)、金属の力を借りてそのスキルを全身に纏う。
この先に起こる未来を‥自分に未来的に当たる攻撃を、金属で代わりに受ける。
金属が攻撃を肩代わりするんであって、当たるっていう未来は変わらない。
「時」って概念には触れないでおく。
でも、ちょっと‥含みを持たせてしまった。‥サラージ様やラルシュ様は何気に鋭いから気付いたかもしれないな。‥マズイ。
「じゃあ‥石を‥てのは? 」
‥が、(きっと気付いたんであろう)サラージ様が誤魔化すように、次の話題に移ってくれた。
‥終わったな。俺の迂闊さに泣けて来る。
「これは、石の状態異常」
気付かないふりして、答える。
平常心平常心。
そう、これは、土の属性の状態異常だ。
‥一番正体不明な奴。
たしか、ナツミのお小遣い稼ぎを手伝おうと思ったんだよね。確かね。
「水の‥は、そのままズバリ、水の状態異常か‥。これは、どの程度だ? 」
「範囲を指定して、その辺りの空気を全部水に変えることが出来ますね」
過去にふった雨、未来にふる雨をそこに貯めることも出来るが、それとは別で、この「水の状態異常」はこの辺りにある空気を水に変えるだけの単純な状態異常だ。
それ以上の量の水にはならない、安全仕様となってます。
これ、高い時から落ちる際に水に落ちた方が安全って理由で開発した‥開花した? 状態異常なんだ。必要に迫られたって奴だな。(ナツミとの訓練でたまに高い場所から落ちたりもしたから)
で、水の中を落ちて、地面に着いたら、その水は気化。
範囲は小さい。(ってか、実験したことない)
ビル20階位から、落ちるまで位の範囲の空気程度なら問題ないだろうけど、そのビル全体を水で包む程はきっと無理。
「‥‥‥」
ナラフィスさんとサラージ様が固まっている。
うん、ちょっと言ってて、「これは、普通じゃないな」って思った。思ったよ? 俺だって常識位あるよ?
だけど、‥包み隠さず話そうと思います。
隠しても仕方ないですしね。
「‥それから、それを全部氷にすることもできるし、逆に沸騰させることも、気化させることも出来ます」
「それね、‥状態異常の域超えてるよね?? 」
ナラフィスさん、ちょっと呆れ顔になってますね。
「皇帝ですからね」
「‥皇帝、半端ないな。なんなら、王より凄いな‥」
サラージ様、‥ちょっとうらやましそうな顔してませんか?
「まあ、今のところ出来るのはそんな感じですが、‥水と土の応用で、これから先出来る状態異常は増えることもあるだろうと思います。‥スキルは、それのプログラム化ですからね、これも応用で色々できるかと。スキル化することによって、複数のスキルが一緒に使えるようになりますからね。
状態異常は、その状態を維持するのに、それにかかりきりにならない。だけど、スキルは自動で動く装置みたいなもんだ。スキル化してそれを発動するように指示すれば、かってに発動して同時に違う装置を発動させること位「わけ」ない。
この前、ナツミに惨敗した「水の龍」は、でもスキルではない。空気を水に変えて、水を蛇のように動かして、それをナツミに巻き付かせ、凍らせただけだ。
スキル化するなら、トラップかな。
ここを踏んだら、捕らえて、凍らせる。
でも、まあ、‥あの程度の威力じゃナツミは捕まえられなかったって話だから、それ以前の問題だね。
「複合‥。いくつ位同時に発動可能なの? 」
どこからか、メモ帳を持ち出してナラフィスさんがメモを取り始めた。
また目がキラキラにもどってます。
「魔力の使用量が軽いスキルなら、4つくらいは可能ですね」
具体的には、
空気を水にして(この作業をスキル化で常時発動にする)
それを氷にして(この作業もスキル化で常時発動)
それを粉砕して、氷のクズにして(これもスキル化 以下略)
飛ばす(俺は風の属性がなくて飛ばせないから、そこに溜まるだけだけどね!! )
人工の『雹』製造。
魔法の「ダイアモンドダスト」のスキルバージョンだね。そっくりだから、過去のリバーシが使って魔法と間違えられたってのも、頷けるね! 水と風の属性持ちなら、出来ないこともないからね。
「‥‥‥」
黙り込むサラージ様。
「あんた、‥なんか怖いことあるの?? 」
呆れ顔のナラフィスさん。
「‥なんか俺も、ない様な気がしてきました‥」
‥うん。
俺、思ったより凄いかも??




