69.俺が思っている以上に、俺は昔のことを「覚えている」
長くなるのでなんこかに分けます。
「ねえ、ヒジリちゃん。この際だから、洗いざらい話して? 君の知ってること、分からない事、それから‥君の能力。包み隠さず」
ナラフィスさんが真剣な顔で俺を見て来た。
その迫力が、
ちょっと怖かった。
あれだ、学者特有の「研究者魂」って奴だ。
俺は、学者なナラフィスさんにとって、研究の対象になりうる「レアケース」なのだと思う。
‥確かに、こっち(sideB)に肉体を置いて、あっちで8年くらいも暮らして来たって、レアケースだよな。その間、ずっと仮の身体で、しかも、その身体を成長させながら暮らして来たんだ。
そりゃあ、‥驚きだよ。
だが、それだけじゃないらしい。
それどころか、何もかもが‥おかしいらしい。
「いや、別に隠してることはないですけど‥」
俺は首を傾げた。
何もかもがおかしいから、話してみろって言われてもなあ‥。
何を話せばいいのやら。
「でも、話してみたら、案外分からない事が何か、自分で整理できるかもしれないから、何からでも話してみたら? 」
ミチルの言葉に周りが頷いた。
‥何からでもって言われてもなあ‥。
俺は、「じゃあ何でもない生い立ちから‥聞いても仕方が無いと思いますけど」と、前置きをしておいた。
‥折角やたら期待されてるのに、つまんない話を聞いて「なあんだ」とか言われてもかなわん。
「まず‥俺は、生まれた時からリバーシだってわかってたわけではなかった。両親は、俺にリノフェィンって名前をつけたんだ。母親が先ず寝ない俺に気付いた。それで、これはおかしいぞってなって、‥神官に見てもらうことになった。大体、リバーシだって発覚するのはそこだよね? 」
ホントは、生まれてすぐ神官が調べに来た。だけど、それは「平民にはあり得ない事だ」。
このことを話したら、「時の属性」の話をしなければいけないから、‥今は「こういう話」ということにしておこうと思う。
「うちもそうだったな」
ナラフィスさんとミチルは頷いてたが、(※ミチルはこっちの国に来て初めて、「君はリバーシというんだ」と教えられた。sideAにはリバーシなんて他にそういないだろうし、神官もいないからね)サラージは首を傾げていた。
‥王室は違うでしょうとも。
はじめっから、魔法使いかリバーシだろうっていう目で見るんでしょう? 中間だとしても、どっちかだろうって感じで接したら間違いはない。
「で、その後は神官がきて、リバーシだって認定されて、名前が「ヒジリ」っていう区別名に変わった」
「うん」「それで? 」
ナラフィスさんとサラージが頷いた。
識別名の話は‥たしかミチルにもしたと思ったけど、したっけ? ってミチルの方を見たら、「聞いたと思う」って頷かれた。
「あれね、戸籍で見た時分かりやすくするためなんだ」
ってサラージが追加情報を教てくれた。
あと、思った通り国民が名前を聞いてすぐ「危険人物」って分かる為。
なんでああいう名前なのかってのが、歴代sideBに来た異世界人の名前なんだって。‥sideBに来た異世界人は、全員リバーシだったから、リバーシイコールそういう名前‥ってことにしたらしい。
そんな感じで、もともとリバーシだけ区別してたんだけど、「区別してるとわかりやすいな」って感じになって、今では魔法使いも識別名で呼ばれている‥と。
外部‥sideB出身のリバーシから名前のバリエーションを聞いたりなんかして、結構今では豊富になったらしい。
あの国の外部リバーシは日本人が多いんだ。(他の国は知らないけど)
‥もしかして、内部(sideA)のリバーシって‥
あっちの国民(sideAの国民)と異世界人(sideB)の混血? そんなに昔から異世界転移ってままあったってことか!?
‥まあ、普通は王家に保護されるだろうから、王家にその傾向が強くなるのもおかしくはない‥。
魔法使いは元からいた。
リバーシは、後からの突然変異。
なんか、あながち間違えじゃない気がする。‥後で、ナラフィスさんに話してみよう‥。
「それで? 」
黙ってしまい、中々話し始めない俺にしびれを切らせたらしいサラージが話の続きを促した。
「ああ」
俺は頷いて話を続ける。
「その時に、神官が調べて‥魔力量が半端ないってのが分かって、村で「危険人物」扱いされるのを恐れて‥一家で引っ越しをした。その街で、なるだけ目立たない様に暮らしてたんだけど、学校に行く頃には、魔力をセーブしていたにもかかわらず、浮きまくって、気が付いたら虐められてた」
そういえば、そうだった。
俺が何ともない口調で説明すると
「虐め? 」
サラージが、ピクリと眉を上げた。
ああ、確かに不穏な発言したな。虐めは、悪いことだ。
「ヒジリは虐められてたのか? 」
見ると、皆怒った顔をしている。
‥皆の優しさに感激だ。
俺は頷いて
「無視される‥ってのが一番多かったな‥。そうなかったけど、リバーシだから平気だろうって、攻撃系のスキルの練習台に使われたりしたこともあったっけ」
「虐め」の内容を説明した。
「ひでえ‥」
皆がドン引きしているのが分かる。
そうだな、口にして初めて「最悪だな」って思った。
子供って、怖いよ‥。
「そんな時に怒ってくれて傍に居てくれたのがナツミだった。ナツミは‥、珍しい目の色から産まれた時から神官に目を掛けられていて、‥俺と同じく区別名をつけられている、特別な子供だった。でも、あの頃はまだ「魔法使い」って認定はされてなかったよ」
多分、ナツミの両親の内のどちらかが、時の属性持ちで、ナツミが生まれてすぐに調べに来られたんだろう。‥じゃなかったら、10歳になる前の平民の子供がそんな認定を受けるわけがない。
父さんと話してた時に分かった、時の属性持ちの話。
時の属性を持っている者は、全部が全部ではないが、魔法使いになれる素質を持っている。魔法使いなら総て、時の属性を持っているが、時の属性を持っているものすべてが魔法使いなわけではない。因みに、リバーシもだ。リバーシもみんな時の属性を持っている。リバーシであることは、魔法使いであるってことより、珍しい事らしい。
つまり、全員が全員ではないけど、時の属性持ちってのは、リバーシや魔法使いの素質を持っている確率が高い貴重な属性ってわけだ。
そして、時の属性を持っている者の子供しか、時の属性は遺伝しない。
だから、時の属性持ちを親にもつ子供は、生まれてすぐ、神官が「時の属性持ちかどうか」ってことを調べに来る。そこで、俺は偶然、「リバーシだ」って認定されってわけ。
だけど、ミチルに時の属性の話をする気はない。
俺もだったけど、ミチルは、自分に時の属性があることを知らない。そういえば、昔城でミチルが俺のステータスを調べようとして「属性が分からない」って言ってた。城では、属性が調べられない様になっているのかもしれない。
sideAで調べた時には、俺のステータスは「土と水」になってたらしいから、時の属性ってのは故意に第三者が隠したりできる属性なのかな? そこら辺は分からない。
時の属性について。
ミチルは、ラルシュ様からも話されていないようだ。話されていないことは、‥話さない方がいいことなのかもしれない。
‥父さんが俺に時の属性の話をしなかったのは、「まだ話す時ではないと思っていたから、‥10歳になって成人の儀式なり、リバーシのお披露目なんかがあった時に、改めてきちんと説明されるだろうと思ってたから」らしい。
因みに、魔法使いでもリバーシでもなかった父さんに、時の属性の説明はされなかったようだ。ただ「時の属性持ちだって話は、他言無用」って念を押されて、誓約書迄書かされたとか。だから、俺に話した後は「絶対人には言ってはダメだよ」と念を押された。多分、特にミチルにってことだろう。
父さんは、あんまり今まで深く時の属性について考えたこともなかった、らしい。
生きてる上に、ずっと意識する程スキルやら生活魔法って使うことはないから。
‥言っていいこと、悪いこと。
俺は、ミチルとは友達だけど、‥俺はsideAの国民だ。政治には責任がない立場だとはいえ、国民の一人として、異世界人であるミチルに無責任に何でもかんでも話して‥その結果国に不利益があっても、俺には責任が取れないから、俺は不用意な発言はしないようにしているんだ。
だから、何も知らないってことにしておく。
「‥お前、さっきからやたらに黙り込むな」
不機嫌サラージ様再び。
「‥だって、昔の記憶だからそうすらすらと出てなんて来ないよ‥」
ってことにしておく。
他の皆も「そうだよね」「無理もない」って言ってくれてる。‥優しいなあ、皆は。‥サラージ様以外‥。
「ああ、‥ナツミの話だったね‥。
そんなこともあり、俺はナツミとばかり一緒にいたんだ」




