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リバーシ!  作者: 大野 大樹
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66.有名人物

「‥もしかして、ナラフィスで実験しましたか? 」

 以前、ラルシュ様がサラージ様に言ってた。

 異界に転移してるリバーシの抜け殻は、蹴っても起きない‥って話だ。

 そうそう、その‥実験台に使われた、‥蹴られた被害者の名前がナラフィス‥。

 いや‥ナラフィス大先生だった。


 あの時のあの名前‥なんか‥聞いた名前だと思ったら、あの論文書いた博士だった。

 一週間、sideAに肉体ごと来てみた~のチャレンジ論文だ。あの、やっぱり、sideBに肉体は置いて置いた方がいいよね、って世間が認識した‥世界における新常識を作った有名人だ。

 まさかそんな有名人で超重要人物を「蹴っても起きないかな」なんて知的(知的かな)好奇心を満足させるために‥。

 サラージ、恐ろしい子っっ!

 ‥二人とも友達だったんだね?

 今も、ラルシュ様にすっごいフランクに話してるしね。

 間違いねぇ。

 ‥意外っていえば。

 身体を張ったチャレンジだ。もっとごっつい肉体をした「体力タイプ」を想像してたけど、違った。ザ、文系って顔してる。まあ、‥脳筋には、あんな立派な論文書けない‥かな? (偏見)ザ、文系っていっても、ガチガチの真面目君でも、オタクって感じでもない。人の好さそうな、どっちかというととろくはなさそうな感じの眼鏡君。ひとことで言ったら‥癒し系‥?? 目がほっそくって、いかにも人畜無害で、老後は辺境でスローライフ送りそうなタイプ。(だけど、意外にアグレッシブに狩りとか(←でも、銃じゃ無く弓)で動物仕留めて、その肉を燻製とかにする、ワンランク上の自給自足生活を送るんだ‥。それまではばっちり都会にいて、清潔な大学生活をおくって卒業して‥教授に気に入られて大学院に残り、そのまま運よく講師になって、教授が退官したからそのまま助教授になって‥気付けば教授になってましたって感じ。そういう、欲はないのに気が付けば‥ってタイプ‥に見える。(で、老後はワンランク上のスローライフ)で、夏休みにお孫さんがロビンソン・クルーソーごっこしに来る‥。

 ‥はっ! 第一印象で色々想像しちゃった‥。

 俺も、大概動揺してるな。

 いやだって‥! 本当に驚いたから‥! 。

 なんか、論文を書いてる人って、雲の上の人って感じで、‥実際にいる人って感じはないじゃない? ある意味、芸能人より「会えない人」って感じするよね? リスペクト半端ないよね? 。教科書に載ってる様な有名な文学作品を書いてる有名な作家さんって、全員故人だって思っちゃうよね? それと同じ。

 ‥まさか会うことになるとはなあ。

 ‥有名人にあっちゃったっ! 。

 ってか、俺、有名人に‥。

 ベッドの上で目覚めた時それを聞かされた時は、驚いたけど‥次の瞬間羞恥心で恥ずか死にそうだった‥。 



「ヒジリ! 」

 ラルシュ様の声が聞こえて、魔力切れの瞬間、最後に‥気絶する瞬間に目の端に捉えたのは、確かにラルシュ様だったんだけど、俺を支えたのは、‥だけど、知り合いのラルシュ様じゃなくって、そのナラフィスさんだった。ミチルのベッドに取り敢えず運んだのも、ナラフィスさん。

 横抱きで運ばれたらしい。

 初対面の有名人に横抱き。

 ‥女のなりをしてても、成人男性‥しかも、結構身長あるし、‥いや、今は若干小さいけど‥結構筋肉だってあるし‥いや、ね‥まあ、今はそれもないけど‥

 兎に角!!

 男が、ひょろっとした、‥もしかして自分と変わんない様なひょろっとした男に運ばれるとかって‥!! しかも、その人は雲の上の大先生‥っ!!

 せめて知り合いのラルシュ様に‥

 まあ、‥でも、ラルシュ様は王子様だし?! そういうことかな?!

 ちょっとジト目でラルシュ様を見ていたら、(なぜか)言いたいことが伝わってしまったらしく(多分伝わったんだと思う)

「あの時は、ヒジリに触るわけにはいかなかったんですよ‥でも、気になりますよね‥申し訳ありませんでした」

 って、凄く謝られてしまった。困惑全開って顔させてしまった‥。王子にこんな顔させて、もしかして‥ヤバい? もしかじゃないけど、不敬罪‥?? あとで口止めしておこう‥。(いや、先に謝り倒さねばならん‥)

 ってか、‥「あの時は」「触るわけにはいかなかった」って? ‥ぎっくり腰的な事情があったのか? ‥それなら睨んで悪かった。

 ‥なんか、それも伝わったらしい。

 ちょっと胡乱気な目で見られた。(それにしても、あんな表情でも、カッコよくて上品で綺麗ってもはや同じ男だとは思えないな! あんだけ違ったら、ジェラシー感じるレベルとかじゃない‥。いや、王子と普通の一般人は性別同じだろうが「同じ男」でくくっちゃだめですよね! )

「別に私の体調は悪くありませんし、別に貴女位運べます。こう見えて体力は人並みにある方だと‥」

 おお、今日はラルシュ様の珍しい表情をやたら見る日だな。‥貴重。

 ‥普段見せない顔を見れる。‥友達って感じだな!! 特別な! ああ‥そうか。‥仮だけど婚約者だったんだっけ。形だけだけど。結婚したら、城に幽閉まっしぐらコースだけど。(思い出したら落ち込むなあ‥)‥いや、ちょっとだよ。俺は男。‥男にはしなくちゃならないこともある‥。俺一人の感情なんて、国民の安心と安全に比べたら‥。

 一人で落ち込んでたら、

 隣で

「‥あれが人並みだったら、他の奴はミジンコだな」

 ナラフィスさんも、ぶつぶつ言っていた。

 ‥この人も直ぐに自分の世界に入っちゃうタイプかな? 学者だから、色々考えることあるんだな。うんうん。(納得)

 内容までは聞かなかったけどね! いや、聞かないよ? 独り言、他の人に聞かれたら恥ずかしいじゃないか! 武士の情けって奴だな! 


「いや、‥ラルシュの体力問題でも、王子的な何かでもなくてですね」

 漸く自分の世界からかえって来た、ナラフィスさん曰く、ラルシュ様に俺の魔力が吸収されてしまうから、らしい。

 だから、あんな状態(魔力切れを起こしかけた)の俺に触れたら、‥俺がヤバかったらしい。‥なにそれ。‥怖い怖い。

 それは、普段もそう(魔力が吸収されている)ならしいんだけど、俺の魔力量が潤沢だから、ちょっと吸収した位だったら、俺は気付きもしない‥らしい。‥結構間抜けだな、俺。

 一日ちょっとずつだったら魔力抜かれ放題じゃないか。チリも積もればなんとやら‥。魔法使いはリバーシと違って魔力を貯めるのに時間がかかるから、‥俺ってもしかして便利な「生きる魔力供給源」?? 俺ってか、‥リバーシが?

 って思ってたら、否定された。

 そういうものでは無いらしい。

「まず、魔法使いの「吸収」の仕組みから説明するね」

 ナラフィスさんが「まずそこから」って改めて説明を始めた。

「リバーシは、自分で魔力を作り出せ、自分の中に循環させ、常に魔力量をフルの状態にしておくことが出来る。自分の体内で作り出すことも多少だったら出来るんだけど、‥普通は、周りの魔素と呼ばれる魔力の元を取り込む」

 ついてこれてるか、時々ナラフィスさんが俺を見るので、その都度頷く。

 だけど、まあ、この辺は普通に学校で習った。問題はない。

「だけど、こっちは魔素があまりないから、こっちにいると、魔力切れを起こす。あっちの世界の国民であっても、一般の人間だったら、生きていくうえでそう魔力を使わないから、魔力切れを起こして、あっちに帰らないと命の危険が‥ってことはない。せいぜい、「疲れやすいな」って位だ」

 俺は小さく頷く。

 ‥一般の国民はってことは、リバーシは違うって話なんだよな‥。

「リバーシは、魔力を体内に循環させることによって生きている。‥魔力は、リバーシにおける、血液の様な感じなんだ。それも、自分の血液しか受け付けない、超特殊な血液型の、だ。だから、リバーシは、他から魔力を受け取ることが出来ない。やったことないし、‥絶対無理だろうけど、多分‥無理に受け入れようとしたら、拒絶反応を起こす。一度自分の身体を出た、自分の魔力が入った魔石にはいった魔力でさえも、リバーシにとっては異物でしかないから、吸収できない」

 あ、‥そうなんだ~。電池作ったけど、忘れて来てよかった。魔力切れに気付いて(今回は気付かなかったけど)吸収しようとしたら、‥余計に酷くなってた‥かもしれないってことか‥。あ、その前に、吸収できないんだよね。

 ‥なんでそこ。ラルシュ様まで驚いてた? しかも、‥次の瞬間すごい恥ずかしそうな顔した‥。

「‥ラルシュ。知らなくても、別に恥ずかしいことじゃない。これは、まだ発表してない。‥ラルシュはね、ヒジリちゃん、婚約者の君の為に、リバーシのことを凄く勉強しているんだ『ナラフィス! 』ああ、内緒にしてたかったんだね? ごめんね」

 わあ、生温かい顔‥、ラルシュ様もだけど、俺も照れるからやめて~。

「魔法使いは、自分でも魔力を作ることはできるには出来るんだけど、‥得意ではない。リバーシが水道管が地下で破裂したか? ってレベルで魔力が沸きだしてくるレベルとしたら、魔法使いは、こぽっこぽって、山奥の奇跡の湧き水‥そんなありがた~くなるレベルでしか沸いてこない」

 変な例えだね。今日一日で、ナラフィスさんに対する認識変わりそうだよ。

「だけど、モーターで水を他所から吸い取ってきて足すことが出来る。

 ただし、減った分だけ。しかも、一定以上減らないと、補充できない。その一定量は人によって違う。その人の魔力量によって違う。その一定量になった時、僕は魔法使いじゃないから、僕には分からないんだけど、何らかのサインがあるらしい。で、そのサインを無視したり、気付かなかったりした場合、魔力が枯渇する。‥そうなると、結構厄介ならしい。なんといっても、モーター自体を動かす電力ならぬ魔力がないわけですからね」

 ‥まあ。魔力の枯渇が怖いのは、リバーシも同じですね。‥現に俺も今回ヤバかったし。

「さて、魔力が一定以上減った際、一番いいのは、勿論自分の魔力が自分の体内で作られるまで休息をとるのが一番いいんだけど、そういうわけにもいかない場合、魔石から魔力を補充しますね。魔法使いの魔力の補充は、普通魔石です。特に、リバーシが魔力を込めた魔石は純度が高いっていいますね。だけど、特殊なパターンで、稀に魔石を介さないで、リバーシから直接魔力を吸収できる件があるとの報告が上がっています」

 それは魔法の習熟度云々ではなく、本人同士の魔力の相性ならしい。

 しかも、その移動はリバーシ→魔法使いの一方通行。

「魔力の相性」

ただし、それは凄く稀なことで、ホントに「運命の相手」って程の確率らしい。

 その話をナラフィスさんがしている間、ラルシュ様は横を向いてたんだけど、ちらりと見える首筋やら耳が、すっごく真っ赤で「おお、なんか珍しいもの見た」って思ったと同時に、やたら恥ずかしかった。

 運命の相手って。

 ‥そんなに照れられたら、俺も照れるじゃないか‥。

 男同士だけど。まあ。恋人的な相性じゃなくって、魔力の相性だからね。

 しかし、‥自分が誰かの特別って、なんかすごいな。誰かって、ラルシュ様だけど。

 特別。

 ミチルにも、‥「特別」な魔法使いいるのかな。

 って思ったら、‥なんでだか分かんないけど、心臓がちくり、と痛んだ。

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