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リバーシ!  作者: 大野 大樹
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60.ヒジリは勝つ戦いがしたい

 ナツミは‥国家に管理されている魔法使いじゃないんだろうか? この前、ナツミは一人であそこにいた。誰かから逃げてる風ではなかった。国家から逃げてるんだとしたら、少しくらいは『そういう』雰囲気あるよね?

 でも、なかった。堂々としてた。

 あそこは、反政府組織のアジト?みたいなもんじゃなかったんだろうか? だって、狭かったし‥お仲間もいなかった。普通に生活してる場所‥って感じだった。

 ナツミは、お尋ね者だろうけど‥国に居場所が把握されていないのだろう。

 ってことは、つまりは、国に『首輪』を付けられていない‥、つまり、国家公認の魔法使いではないってことなんじゃないだろうか? 。国家に公認されないと唯一魔法が学べる魔法学校にいけないから、魔法が使えない。そうなるとつまり‥魔法使いではない。

 魔法使いじゃないとしたら、‥そんなに恐れることもないんじゃないだろうか。

 攻撃魔法と、魔法による攻撃は‥全くの別物って程でもないけど、レベルはかなり違う。

 そもそも、的中率が段ちに違う。

 一つ一つの攻撃の重さだとかも違う。

 攻撃魔法は、魔法使いではない者たちが咄嗟に自分の身を守る為に発動させる「破れかぶれの一撃」に過ぎないんだ。だけど、魔法による攻撃は、目的が攻撃である魔法の使用だ。

 そりゃあ、全然違う。

 あれを危惧しないでいいって言うだけで、随分俺の生存率は上がるだろう。

 ‥とはいえ、(攻撃魔法でさえも)ナツミは天才だった。そこまで、安心していたはいけないことくらいは、分かる。

 でもな‥。

 魔法使いじゃないかもしれないっていうのは‥少し‥いや、かなリ‥嬉しい、かも。

「俺、大丈夫かもしれない」

 ぼそっと、気が付けばうっかり、‥呟いていた。

 ‥いやいやいやいや。油断禁物‥油断禁物。

 でも、直ぐに「いや、そう言っておいた方が母さんたちも安心するんじゃないか? 」とも思った。

 図らずとも、若干明るい口調になった俺に、母さんが首を傾げる。

「ん? 何が? 」

「魔法使いは国に管理されている。だから、半組織側に魔法使いがいても、彼らが魔法をつかえば、GPSで居場所が確認される。だから、彼らは魔法を使えないかもしれない。それに、そもそも‥魔法使い自体が組織に居ないかもしれない。俺たちみたいに行動が監視されてる者なんて、手元に置いて置くのは危険だもんね? 」 

 俺は、さっき思いついたことを母さんに言ってみた。

 出来れば、「そうね」って肯定してもらいたかった。

「‥国に管理されていない魔法使いって‥本当にいないのかしら‥。もしかして、もぐりってことも‥考えられるんじゃないかしら。学校卒業後に国に召し抱えられるから、在学中に逃げ出すとか‥そんな可能性は無いのかしら‥」

 だけど

 俺が話し終わった後、暫く考え込んだ母さんが首を捻りながら呟いた言葉は‥

 俺が望んだものとは違っていた。

「母さん‥」

 俺は眉を寄せて母さんを見る。

 母さんの横に居た父さんの表情も険しい。

 その表情を見ていたら、自分がいかに能天気だったかを思い知らされて恥ずかしくなった。

 眉を寄せたまま俯くと、ふっと母さんが纏っていた緊張を解いたのが分かった。

 ふわっと微かに微笑んで、俺を安心させようと瞳を覗き込んで

「可能性よ。そもそも、在学中に逃げられるかどうかも分からないものね。‥でもいないわよね? だって、そんなに簡単に逃げられるなら、だれも国の直属になんてならないわよね? あれよ‥もしもってやつ。‥もしもの可能性ってやつ。

常に最悪なケースを仮定しておかないと‥。油断するのが一番危ないわ」

 言い聞かせるように言った。

 父さんは、口調も表情もまだ硬いままだ。

「そうだな。そんなケースは無いのか、調べよう‥。って私たちには調べる術が無いから‥。それこそ‥、ミチル君に頼んでラルシュローレ殿下にお願いしてもらえないだろうか‥」

 それこそ‥

 の辺りで、ふっと視線を俺に合わせこちらを伺うように尋ねてきた。

 ミチルと‥ラルシュ様。二人には出来るだけ迷惑かけたくないんだけどなあ‥。

 まあ‥背に腹はかえられない。それ以上の迷惑をかけることを考えたら、これは必要最小限度の迷惑って考えられないでもない。‥か? 

「ラルシュ様に? ‥分かった。ミチルに言って頼んでもらっておく‥。あのさ‥他に、最悪なケースは考えつかない? 」

 聞いておくなら、いっぺんにした方がいい。

 ‥俺が考えるべきことなんだけど、俺は、そういろいろ頭が回るタイプじゃない。

 どっちかというと、俺こそ直情タイプなんだ‥。

「魔石商人の販売先とか、仕入れルートかしら」

 母さんが、ちょっと考えてから言う。

 ‥ああ、成程

「俺を殺そうとした奴の正体ってこと? 」

 俺がメモを取りながら聞くと、

「まあ、それも含めてってことかしらね‥」

 母さんが頷いた。

「それと、母さんヒジリに聞きたかったんだけど、ヒジリはさっき、スキルをつかったわよね? 巨大池の水を消し去るとてつもない大技

 確かに、ここでもスキルはつかえるけど‥この前も言ったと思うんだけど、

 時間が経てばいずれは出来る現象、しか出来ないはずなんだけど」

「出来るでしょ? 水が、蒸発する。は時間が経てば蒸発するし、土の泥化も、水を含ませたら出来るし、それを整地することも出来る。これらを全部早送りしてるだけだよ‥。それに‥」

 母さんが俺を見る。

「あんなのは大技ってうちには入んないよ」

 俺はちょっと頷くと、言葉を続けて苦笑した。

 あっちだったら、多分、指パッチン位の力で消せそうだよ。あれくらいの水なら。

「‥そう。そうなのね」

 ‥リバーシにとっては、「あんなの」程度なのね、‥あれ。

 母さんが引きつってる。

 ていうか‥、あれくらいの規模‥とかはホントにどうってことないんだけど、‥どちらかというと、原理が分かったから、一気に色んなことが出来るようになったって感じかな。

 父さんが言った、「時」の属性とリバーシの関係。今まで俺になかった考え方だった。

 こっちで使えるスキル、使えないスキル。「時間が経てばいずれは出来る現象」つまり、時間という概念がスキルにはもともとあって、時属性っていうのはそれがもっと強かったり、停止とか出来ちゃうってわけ。今まで、俺がスキルますたーって呼ばれる程、スキル創造に対して比較的自由だったのは、時属性が実はあったからだったんだ。

 それが分かると逆算して、なるほど~そういうことか~。って話ばっかりで、結構(実は)衝撃的だった。

 今まで、原理が分からなかったから‥ちまちま「金属で何でも止める」実験してたのにね。

 なんてことはない、あれも原理が分かったら「時間を」止めてたってだけのことだ。金属は、その為の媒体に過ぎなかったんだ。

 何でも止める‥つまり Ⓐ止められるもの Ⓑ止めるもの Ⓑがすなわち金属。

 今まで、Ⓑ自体が止めていたって思ったんだけど、ⒷはⒶを止める到着点に過ぎなくって、実際にⒶが止まったのは、時間が止まったから、なのだ。

 だから、あれは正しくは、金属(Ⓑ止めるもの)で何でも、「吸い寄せるスキル」だったんだ。難しかったのは、リバーシの本能とは違う動きだから。リバーシは、来るものを‥止めたりなんて、本能的に出来ない。100発100中のバッターの如く、来たものは総て打ち返す。

 打ち返す前に、絶対、接する面で止まる。その一瞬を停止。

 とんでもなく集中力がいる‥スキルだったんだ。

 上手くなったというより、実は今まで金属という点で止めていたものが、訓練(笑)によって、金属を付けている腕という風に、効果の範囲が増えた。磁石と同じ原理だ。磁石の近くにある鉄が磁石になる‥っていうあれね。磁化っていうんだけど、それと同じように(どんな原理かは知らないが)金属を付けてる腕も金属と同じ役割に成れるようになった。今までが点だったのに対して、今は面だ。範囲が広がった。そのことによって、多少止まりやすくなった。

 ‥そう、あれは当たってたんじゃなくって、止まってたんだ。(負け惜しみではない)

 ‥進化といっても、見た目は完全に退化だな。

 ‥話が少々横にそれたが。

 俺が出来なかったのは、「大きなこと」‥っていうより、「細かいこと」だって話。(それを思うと、あんな細かいスキル(つまり、詮索とか隔離空間の作成とかね)こっちで使ってるミチルは凄い集中力だよね! )こっちで使えにくい‥っていうのは、こっちは空気中に魔力の元になる魔素が少ない(リバーシはそういうのを自分で集めて魔力に変えられるらしい)のと、人口が多すぎて人と自分の魔力の違いが分かりにくいからなんだ)

 まあ‥自分で言うのもなんだと思うけど、俺は‥精度よりパワーのどっちかというと筋脳タイプだもんな。

 ‥まあ、そんなわけで、ここでの俺の力の使い方の感覚も分かった。

 で、腕試し~って軽い気分で試したんだよ。

「蒸発」

 まさか、一瞬で水が無くなるとか思わなかった。あっちならまだしも、こっちで! ねえ‥。

我ながら、人間離れしてるよね。

 まあね、‥魔物だしね。(←ひがみ)災厄だし、ゴリラだし。

「とにかく‥まあ。後は、ミチルにも意見を求めて、ラルシュ様に聞いてもらっておく」

「ええ、お願いね」

「情報戦だよね。

 ‥俺は、勝てる戦いがしたい」

 にやり、と悪い笑いを浮かべ、決意を込めて前を向く俺に

「ヒジリ、あんた敵役みたいな顔になってるわよ」

 呆れ顔をする母さんだった。


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