59.スーパーポジティブ ~最強の『基本』~ ナツミside
魔法使いは、「瞬間」を切り取る。
「スキルは、作り出すだけど、魔法は「瞬間」を切り取るんだ」
スバル先輩が言った。
「自分の魔力をこう‥意識して、形にする。水から‥水を凍らして氷を作るんじゃなくって、『氷』という瞬間を切り取る」
スバル先輩というのは、ここに居た魔法使いの先輩の名前だ。
属性は、火と風。
火属性の人に多いオレンジ色の目をした青年だ。これも、火の属性持ちに多い特徴なんだけど、「嫌なことは嫌」って非常に分かりやすい性格をしている。だから、魔法学校に残りたくなかったのかも。卒業したら自分の意志なんて関係なく国の所属が決まってるもんね。
彼は、魔法学校から逃げ出す対価として、両腕を失った。
もう一人は、ミナミ先輩。
先見だ。
だけど、視力を失って、今は何の能力もない。
念視(何というのかは分からない)とかではなく、「見て」「対話して」将来起こり得る事を第三者に伝える。‥えらく先まで予測できる地震予測とか、そういう分野で将来活躍したであろう人だ。タイプで行ったら、専門職の文官だな。
スバル先輩は、「昔は魔法戦士になりたかった」ってちょっと照れながら教えてくれた。
祭事や慈善事業に従事する魔法使いがやっぱり一番多いんだけど、それでも一部は、「魔法戦士」になったりする人もいる。研究者もいるけど、そう言う人は魔法学校に残る。
だけど、‥今はもう何にもなれない。
魔法が使えない魔法使いは、結局何でもないんだから。
そして、魔力が無くなるだけだったら、他の仕事にも就けたが、今彼には魔力どころか腕がない。
そして、‥お尋ね者だ。
反政府組織にいること、しか今までの彼には出来なかった。
だけど、ナツミが来た。
自分の願いを託せる‥否、自分に存在価値を与えてくれるかもしれない存在が‥来た。
魔法は使えないけど、知識はある。だから、他の者にその知識を教えてしまうんじゃないかって? そういうことは、出来ない。
普通は。
魔法は、一人に一つのタイプがある。
魔法学校に入って一年目は、そのタイプを見極めるために、毎日毎日「内なる魔力と向き合う」らしい。
周りの雑踏の中から、自分の魔力の色を探し出し、紡いで、思い通りの形に作り出す。
探し出し紡ぐことがまず第一歩だ。
そして、その魔力をまず、一般的な型にはめることを練習する。
それが、所謂「呪文」って奴だ。
呪文で出来た「型」に魔力を流し込んで、固定する。型通りの初歩の魔法だから『型抜き』と呼ばれている。
これには、タイプは関係が無い。皆先ず必ず習うものだ。
もっとも、本当に初歩だし、威力も弱いし、あんまり使えるようなもんでもない。
先輩たちもまず、私にこれを教えてくれた。
スバル先輩は、大雑把で「正確な呪文覚えてないな‥俺、結構感覚で魔法使ってたからなあ‥」って、言って、そこはミナミ先輩が丁寧に教えてくれた。
‥良かった。
型とかもあるから、両腕が無いと不便すぎる。(っていうのは、スバル先輩には内緒だ)スバル先輩は大雑把すぎるしね‥。(こう思っているのも内緒だ)
「呪文」と「型」は教えては貰ったが、スバル先輩やミナミ先輩がそれを発動させるのを見たことはない。
魔法使いは、魔力の入口も出口も一緒で一つしかない。
出口‥つまり発動場所だ。スバル先輩は腕(手のひら)で、ミナミ先輩は目だ。
発動場所を失うっていうことは、つまりその総てを失うってことだ。
それは、‥魔法使いでなくなることを意味する。
「さて、‥ナツミはどのタイプなんだろうな。俺と同じ腕から発動するタイプかな。それか、ミナミと同じ‥物や精霊と対話するタイプ‥いやでも、水と風が両方ないんだよな? 風と火だっけ? 多分‥目からタイプじゃない気がするな」
「発動場所って、何パターンあるんですか? 」
「腕と、目が一般的だよ。ヒーラータイプだって、腕が発動源のタイプだね。だから、戦闘に魔法使いが出て行ったら、まず腕を攻撃される。
まれにいるのは、魔法陣でしか魔法が使えないタイプと呪文でしか魔法が使えないタイプ。魔力が少ない魔法使いなんかに稀にいるらしい。
少ない魔力をより有効に使わなくちゃいけないから、魔石で強化した杖を使う。
会ったことは無いけど、そういうタイプも居るらしい。研究室に残ってる先輩なんかはこのタイプなんだろうね。会ったことないっていうのは、そうそう表に出て来ることがないからだよ」
ドキン、とした。
‥私は、魔力が少ない。
今までに習って来た『型抜き』でも、いっぱいいっぱいなくらい。
もしかして‥私はこのタイプなのかもしれない。
このタイプだとしたら、もう、これ以上スバル先輩やミナミ先輩が私に教えられることはない。
「まあ。いろいろやっていったらいい。俺の魔法から試してみる? 魔法ってのは、個性だから、結局は自分で探していくしかないんだけど、まあ参考にはなるかもしれないし」
ってスバル先輩は言ってくれるけど‥。きっと‥。
多分、スバル先輩はそこそこ魔力があったタイプなんだろう。
そして、性格からして、どっちかと言うとパワー系。
私は、攻撃魔法でも、少ない力で最大限の威力を狙わなければならなかったから、どっちかというとパワーより頭を使って来た。
きっと、スバル先輩とは同じタイプではない。
そして、光属性はないから、ヒーラータイプでもない。
ミナミ先輩的な特殊なタイプでもない。
‥消去していくと‥多分、稀に居る『魔法陣でしか魔法が使えないタイプと呪文でしか魔法が使えないタイプ』。私は、気は強い(自覚している)が、結構、研究・実験好きだ。‥学生時代さんざんヒジリを実験台に攻撃魔法の研究をしてきた。
多分、間違いは無い。
‥詰んだ。
だけど、ここで立ち止まっていても仕方が無い。
私はせめて最強の『型抜き』魔法を極めることを誓った。




