表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リバーシ!  作者: 大野 大樹
59/78

58.要観察の子供

「流石私たちの娘。あんな扱いを受けてきて、そして、そのことに気付いてもなお優しい。美しいだけじゃなく、強くて優しく育ってくれたのは嬉しい。でもちょっと‥甘いわ。ヒジリ。

 いえ、甘すぎるわ」

 母さんが今まで俯いてた顔をあげて、俺をきっと睨んだ。

 結構突然のことだったから俺は、ちょっと驚いていて母さんを振り返る。

「え? 」

 母さんと視線が合う。

 母さんはしっかりと頷くと

「‥力を持ってるってことを、持て余してる人たちだけじゃないってことよ」

 強い口調で言った。

 そこにきて、父さんも「そうだな」と呟き二三回小さく頷いた。

「そうだぞ。ヒジリは、そのことに考えが及んでいないな」

 ‥急に父さんまで、なんだ?

「え? 」

 俺はちょっとついていけなくって、首を傾げてしまった。

 母さんは、しっかりと俺に視線を合わせる。

 あ、これ「説得」モードだ。説教モードじゃなくって、説得モード。

 押しの強さで、ぐいぐい来る、で、俺は結構今までそれに流されてきた。

 女の人って怖いよね。

 俺、自分は多分、‥女の人じゃない気がする。ホントに女の人なのかな? 少なくとも母さんみたいには、‥成れる気がしないな。‥別に母さんをディスってるわけじゃないぞ。

 どっちかと言うと感情論に流されがちな「甘ちゃん」だって自覚はあるから、‥母さんの理路整然とした理論に、気が付いたときには論破されている。

 理論で負けただけで、決して迫力負けしたわけじゃないぞ。

 今度は負けないぞ。と気合を入れて母さんを睨むみたいに見つめてると、母さんが「ふう」って(いつものように)「あんたは、ホントに何もわかってないわねぇ」って顔する。

 そして、諭すように話し始める。

「力を持てば、その力を利用してやろうって人間も多いってことよ。利用されるだけじゃなくって、自分でどんどんのし上がっていく人だっている。それこそ、人を蹴散らしてでもね。自分に自信があるなら、人に使われるなんてばからしいって思う‥のかしらね。‥直情型の多い魔法使いにその傾向が多くみられるって言われてるわ」

 論破されるのは嫌だから、何でもかんでも「違う! 俺はそうは思わない! 」って否定したくなるけど、そこは落ち着いて母さんの話をじっくり聞く。

 ‥言われてるわ。

 って完璧「伝聞」だし「推測」だよね?

 それ、真に受けちゃう? ってか、完璧よくある「偏見」じゃん?

 って、まずムカッときて、その胸のイライラの原因がナツミのことに直ぐつながった。

 ‥だから、母さんはナツミの事嫌いだったの? って。

 魔法使いは「直情型の多い」から?

 そう思ったら、もっとイライラした。怒りで黙り込む俺を母さんはじっと見つめて、ゆっくりと一つ大きく頷いて

「力を持っているってことで、自分は偉いって勘違いする人もいる。‥そういう愚かな人だっているのよ」

 冷静に言葉を続けた。

 ‥力を持っているということは、特別だし、特別な人間は特別な立場になり得る。

 でもそれって、当たり前だ。

 それは‥能力主義社会・実力格差社会であるここ(sideA)での常識だ。

 でも、信仰に篤くて、魔法は神様からgiftって考えられてるあの国(sideB)では、そう言う考えは一般的ではない。神様からのgiftを私利私欲のために使うなんて以ての外なんだろう。だから、国に属しない魔法使いなんてのは、母さんにとっては自分本位な野心家にしか思えないんだろう。いくら、俺が「自由でいたいだけなんだ」って言ったところで、それは大多数には受け入れられない少数意見なんだろう。

 確かに、野心家もいるとは思う。それに、自分に過度に自信を持った「勘違い野郎」だって。‥その力を悪用して国家転覆をはかるものだって‥本当にいるのかもしれない。

 だからといって、(国に属していない魔法使いだからって)‥みんながみんなそうだと思われるのは‥どうかと思う。

 それは、ただの偏見だ。そんな悪意ある偏見のせいで‥ナツミは‥皆に避けられてきた。

「だから、そういうのって偏見で‥」

 母さんに対して(・・・・・・・)ちょっとイラついた声が出てしまったのに、我ながら驚いた。それでも、目を逸らさずに言った俺に、母さんは小さく頷いた。

 俺の反論も想定内だったらしい。

「王国内のリバーシの人数は33名。それに対して、魔法使いは、12名よ。魔法使い、少なすぎると思わない? リバーシと魔法使いの人数がそれ程違うとは思わないのよね‥。それってつまり、その隠れた数字が、国の所属になってない魔法使いってことだって思わない? 」

 ‥思うでしょ? って言う口調。

 俺が強く言われたら言い返せいないって、知ってる口調。

 母さんは、割と頭が固いというか‥頑固なところがある。ことに、自分が「絶対! 」って思ったことに対しては、‥本当にひかない。そういうところは、ちょっと困るよね。

 今回も、これだ。

 俺は、ふうとため息をついた。

「自覚がないだけ‥とか? 」

 ちょっと面倒臭くなって投げやりな口調になってしまったのは、‥我ながらどうかと思うが。

 と、今まで黙って母さんと俺が話しているのを聞いてた父さんが(ってか、面倒に巻き込まれるのが嫌で傍観者決め込んでたね。絶対)

「‥時属性を親に持つ子供は、生まれた瞬間に調べに来られるんだ」

 ぼそっと

 呟いた。母さんも眉を寄せて頷く。

「その時に、リバーシは‥分かるのよ。魔力量が桁外れに多いから。だけど、魔法使いは‥後から分かるものだからね。その地点では、時の属性のある、魔力量がリバーシの規定にまで達しない、要観察の子供って認識になるわ」

 ‥なんと。

 生れた瞬間に調べに来る‥?

 ってことは、そこに「時の属性を持った親がいる」「結婚して子供が生まれる」それが、全部把握されてるってことだよね? データベース化されて管理されてるのかな。

 ‥割とsideBって、情報社会なんだ。中世ヨーロッパみたいな感じだと思ってた。(服とか)‥見た感じそんな感じだったし。‥思い出した俺の幼少期(10歳位迄? )の『記憶』もそんな感じだし‥。

 しかし、‥時の属性のある、魔力量がリバーシの規定にまで達しない、要観察の子供って認識

 って‥。

 ‥要注意人物扱いか!

 あの国はどこまでも‥。  

「父さんもそうだったの? 」

 自然と眉が寄り、険しい顔になったであろうことが自分で分かった。

「そうなんだろうね。まあ、父さんはスキルのセンスが悪くって、しかも‥魔法も使える兆しすらなかった。だから、結構早い段階で「違う」って認識されてたんじゃないかなあ。それで、10歳の時に、「魔法使いではない」って正式に断言された」

 父さんがちょっと恥ずかしそうにはにかんだ。

 ‥そうだよね。あんまり「スキルのセンスが悪い」とか子供に言いたくないよね。

 でも、‥そういう風に見せることも‥出来るってことじゃない? だって、数値に出るものじゃないんだから。

 魔法使いなら、何とかのらりくらりと検査官(かな? よくわかんないけど)‥みたいなのをかわして‥10歳の検査を受けさえしなかったら、逃げ切るのが可能ってことか‥。

「反対に、リバーシは逃げ切れない‥」

 リバーシは生まれた瞬間から、国によって‥名前と存在が把握され、管理される。その地点では、国の所属にはなっていなくても、だ。名前が変わったのが、4歳位の時だったようだから、多分あの頃国の管理下に入ったのかな?

「国の管理下に入ったら、どう変わるの? 」

「生活費として、国から補助金がでる。それから、学校に行く時に奨学金が出るわ。それと‥引っ越しが出来る」

「引っ越し? 」

「国の管理下に入らないと、要観察者として、住んでいる自治体の長が観察責任者になる。だから、引っ越しが出来ないの。自治体にちょっと補助金も出るから、引っ越しを止められるのね。‥国の管理下に入ったら、個人に補助金が入るから、自治体が関係がなくなる。でも、進学や結婚といった行動の総てに報告義務があるし‥発信器(GPS機能付き`識別タグ´)を付けられるし、名前を改名させられる。将来的に、国で働くことが絶対条件だしね」

 識別タグ‥あの、例の「脳波や心拍数が管理され、激しい怒りや悲しみ等、感情の降り幅が著しく変化した場合」を監視する目的で付けられる、あれだ。因みに、超要注意人物だったヒジリは、「国の管理化」に入るかどうかの選択権なんてなかったらしい。だけど、その特別措置が周りに気付かれないように、改名等を通常のリバーシと同様の4歳まで先延ばしにしたらしい。

 リバーシは、脳の発達が普通の子供よりも早いから、4歳で、「自分の意志で選べる歳」と判断されるようだ。

「ヒジリが改名したことで、周りにヒジリがリバーシであることが‥分かっちゃって、色々あって居にくくなって、‥自治体としても「補助金も入らないし‥」ってなって‥」

 ああ成程、お金も入らないし、厄介者だから、厄介払いしたいなあって感じになったわけだね。‥分かります。なんか得体知れないしね。

「で、引っ越ししたんだね」

「そうよ。皆で一緒に母さんの生まれ故郷に帰ったの。実に4年ぶりだったわ。父さんもそこで仕事を探してもらってね」

 ‥4年は、「ぶり」ってほどでもないな。

 ‥魔法使いは、見極めに時間がかかって、リバーシは生まれてすぐ管理下に‥誰かの管理下に置かれる。

「魔法使い予備軍にも、生活補助金が出るの? 」

「いいや? 出ない。だって、魔法使いになるとは限らないからね。魔法使いと認定されないと補助金も出ないし、魔法使いとして就職も出来ない。だから、魔法使い予備軍は、必死に魔法の研究なりして、審査官にアピールするんだ」

 ‥アピールしなかったら、つまり、ただの普通の子供ってことか。魔法使いでも、‥そういう子供が結構いるって話じゃない? アピールするとかって面倒臭そうじゃない。

「う~ん。まあ、‥でも、時の属性があるって調べられて「予備軍」って言われた地点で、調べられるのは確定しているんだ。これで「魔法使いの才能は無い」って認定されれば、晴れて一般人認定だな。これは、結構きっちり調べられるから、万が一にも見落としはない」

 ‥国の管理という網を逃れるのは、案外難しいというわけか‥。つまり、管理下に置かれていないってのは、そうい網をわざわざかいくぐってかいくぐった‥故意の行動。

「私には、そこまでして国の管理下に入るのを頑なに拒む理由が分からないのよね‥」

 母さんが如何にも不思議だって風に、首を傾げる。

「だって、魔法使いって、魔法を習わなかったら、全然何の役にもたたないじゃない? 。魔法を教えてるのは国営の魔法学校だけで、ここに行けるのは、「魔法使い」と国から認可された人だけ。だから、学校に行かないと魔法が習えない=(イコール)使えない‥って感じなんじゃないかしら? 」

 ‥国に認可されて管理されていない要観察の子供と‥反政府組織の関係‥。

 魔法使いと認定され、魔法が使える様になるためには、国に認可されるしかない。イコール魔法使いは国に全員認定されている。認定されていない要観察の子供は、魔法が使えない=魔法使いじゃない。‥反政府組織には‥魔法使いはいないってこと‥かな? いや、だけどナツミは‥?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ