57.それでも
もしかしたら
って思った。
そういうこと‥かもしれないってだけで、勿論確信なんてないんだけど。
認識されてなくって、もしくは、国に従う‥国の手下になる気のないリバーシや魔法使いとその仲間が、反政府組織ってことなのかも。
で、それに対するのが、国と、国に管理されたリバーシや魔法使い。
‥反政府組織って言ってるけど、一体何したんだ? ってか、どういう集団なんだ? って思ってたけど‥そういうことだったら、頷ける。
白か黒の一択だ。
選択権はない。
‥俺は、今現在、国王側についているとは言い切れない。それどころか、留学でもないのに、勝手にこっちで暮らしている。「あっちのからだ」でだ。自分の立場を考えず、自分勝手にふらふらしている俺は一体彼らにどういう風に見られているんだろう。
考えたら、「マズイこと」している。‥反政府組織側と判断されても‥おかしくないのではないか?
普通なら、半組織側と接触しているという事実もしくは疑いがある、とか、思想が半組織側に通ずるものがあるとか‥そういった「理由」がいるだろうが、ことこの件に関しては、そうではないらしいし。
国の命令を聞かないということは、そのまま即、反逆者認定だ。
それ程、国は俺たち『バグ』を危険視している。
そうだとしたら、一緒にいるとミチルにも良くないのかもしれない。
‥ミチルはこんなこと、知らない。
だから、そんなことをいちいち説明するリスクを天秤にかけて、‥俺のこと敢えて放っておいてくれてるいるのかも。
王家としたら、わざわざ知られたいことでもないだろう。
SideAの人たちは、言い方は悪いかもしれないけど、‥sideBに対して、sideBに住んでいる人に比べたら、忠誠心だってやっぱり薄いし、‥sideB国民と違って「自分の主張」ってものをもっている。ぶっちゃけ、sideBの純粋な国民に比べて扱いにくい。
ラルシュ様やサラージ様が間に入ってくれているのかもしれない。咄嗟にとった行動とはいえ‥本当にとんでもないな。
それを自覚した時、一気に‥肝を冷やした。
恐る恐る頭をあげると、父さんの優しい目と目があった。
「父さん‥」
「ヒジリ」
父さんと母さんは俺が落ち着くまでずっと背中をさすってくれていた。
「‥大丈夫。落ち着いた。‥ってか、落ち着かないといけないって、自覚した」
王子様たちに迷惑かけてるかも(というかほぼ確定)だし。
取り扱い注意の、火薬庫だし。
「‥反政府組織と心中するなんて考えるのもやめる。‥どう考えても、何の意味もないし、無駄死にどころじゃなくって、自爆テロだ」
「‥その言い方もどうかと思うけど、間違いじゃないと思うわ」
母さんが苦笑いした。
だけど、まあ。
俺がどんなに大人しく目立たないように暮らしたって、‥俺を放って置いてくれない人間はきっと沢山いるだろう。
‥さてどうしますか。
これ以上落ち込んでても、仕方が無いってことだけは、残念ながら分かった。
‥俺がいたら‥。
皆が不幸になる。
そう思ったけど、でも、‥そんなことを言ったら、そんな災厄を産んだ母さんが‥可哀そうだって思った。
母さんは、一体どんな気持ちで俺を育ててきたんだろうって‥思った。
思ったら、
「母さん‥ごめんね‥」
謝らずにいられなかった。
そんなこと、謝っても仕方が無いし、‥謝られても困るって思うから、あくまで軽い感じでね。
‥でも、どうしても、謝らずにいられなかったんだ。
何となく、そう言う気持ちわかってくれるよね~って思ってたのに、
「‥私こそ、ごめん」
母さんが、がばって頭を下げてきたから驚いた。
「なんで母さんが謝るの? 」
「っていうか、それこそ私のセリフよ。別にヒジリが好きでそんな風に産まれてきたわけじゃないでしょ? 」
「それは母さんだって同じじゃないか」
リビングのソファーに座って言いあっていたら、
「‥不毛な言い合いだな‥」
苦笑いした父さんが、あったかい梅酒を3つ小さなグラスに入れて持ってきてくれた。
ホットワインの感覚のそれは‥父さんが今年漬けた果実酒だ。ここの果物で作る果実酒。生まれてからずっとここにいたって思ってたから今まではちっとも疑問視してなかったけど、‥(色々思い出して)移住してきたって思ったら、ちょっと「へえ」って思うね。食べ物は似てるのかな? (←細かいことはそう思い出していない)って母さんに聞いた時母さんが微妙な顔で「似てる‥ものもある‥かな? 」ってちょっと首を傾げていたから、そんなに共通点は無いのだろう。
‥チャレンジャーって奴なんだな、多分。
「あったかい‥」
「梅っていい香りよねえ」
今までのテンションはどこにやら、思わずふわっと息を安心した様な息を吐いた俺と母さんを、父さんはいつもと同じ優しい顔で眺めていた。
あの後俺たちは父さんに促され、ようやく家にはいった。
現在。シャワーを浴びて濡れた髪の毛をガシガシ吹きながら俺たち家族は作戦会議‥というか、今後のことを話しあうことにした。
俺の後にシャワーを使っている母さんを待っていると、‥つい色んなことを考えてしまっていた。
王族の事、反政府組織の事‥冒頭で俺があれこれ考えてたことだ。
思いの外考え込んでたらしくって、気が付いた時には、父さんも母さんもシャワーを終えて俺の背中を撫ぜてくれてたってわけだ。
どうやら、思った以上に俺は落ち込んでいたらしい。
心配させてしまったな。
ホット梅酒を飲みながら‥。
まずは、分かっていたこと、分かったことのおさらいだ。
「リバーシと魔法使いは、時の属性を持つ者の中でたまたま条件がそろってしまった、バグだ。リバーシは、時間に干渉できて、魔法使いは時間という概念がない」
俺が言って、母さんをちらりと見ると、母さんは「理解している」という風に緩く頷いた。
「だけど、‥俺は、この話を学校で教わってこなかった。‥おそらく、それは他のリバーシや魔法使いも同じだろう」
「わかっていなかったから、かしら? 」
母さんがちょっと首を傾げる。俺はちょっと頷くと
「学校は‥そうだと思う。俺が教わって来た先生は、魔法マニアだったけど、‥そんな話聞いたことない。分かってなかったかも‥しれないけど、もしかしたら、学校教育の指針として「教えてはいけないこと」とされていたか‥どっちか‥が気になるね」
やっぱり首を傾げた。暫く「う~ん」と考えてみたが、‥考えたところで分かるものでもない。
「ヒジリはどういう風に見えた? 」
今度は父さんだ。ホット梅酒を一口口にすると俺の目をちょっと覗き込む様に聞いてきた。
俺はその視線に、ちょっと首を傾げた。
‥ん? 何かを見極められてるのかな? 俺は、別に嘘なんてつかないけど。
「インテリ眼鏡‥俺が教わっていた先生‥は分かってたら、指針とか無視しても教えそうなタイプだったけど‥聞いたことないんだよな‥。隠してる風って感じじゃ無かった気がする。‥そういう『違和感』って結構記憶に残ったりするよね? 」
首を捻りながら言うと、父さんはちょっと頷いて、でもそのまま視線を外すことなく俺の目を見つめる視線には不安みたいな感情がちらりと見えた。
「ヒジリは‥嫌なこと‥なかったんだよね? 」
遠慮がちに、‥聞く。
ああ、成程、俺が子供の頃学校で嫌な目にあってなかったか気になったのか。
嫌なことがあったのを、隠してるんじゃないかって思われたのか。
‥父さんって案外「気を遣う」タイプなんだね。ちょっとほっこりしたり。
「大丈夫だよ。それどころか、インテリ眼鏡はリバーシの俺と、魔法使いのナツミという研究材料に恵まれて、毎日ほくほくしてたよ。彼が知ってるだけの知識を教え込まれてたし、一緒にスキルの研究とかした。
まあ‥他の子供にはちょっと恐れられたりとかしてたけどね。なんせ、毎日ガチでバトルしてたから‥かな? 」
ちょっと苦笑いして「誤魔化した」俺を、父さんと母さんがちょっと傷ついた顔して見つめてきたが、さらっと流した。
‥過去の話さ。
「まあ、そんなのどうでもいい話だから。‥とにかくね。学校では教わっていない。
でもね、‥王家が知っていない訳はないよね。だから、俺は仮説を立てたんだ、
認識されてなくって、もしくは、国に従う‥国の手下になる気のないリバーシや魔法使いとその仲間が、反政府組織ってことなのかもって」
「王家は、徹底して、リバーシと魔法使いを国で管理したいのかもって」
理由は‥飼い殺しにする為だ。
そうすることによって、国民も安心するし、国家も安泰だ。
「確かに‥バグだし‥国家にとっては危険分子だけど、あんまりだよねえ」
俺に向かい合って座っている二人は何も言わない。
‥ちょっとしんみりとさせちゃったな。そんな顔させたくなかったんだけどな。
母さんと父さんは暗い顔して、そして俯いていた。
母さんは、泣きそう‥とは違う、何かを我慢してるって顔。
怒りたいような気もするけど、何に対して怒っているのか自分でもわからないって‥そういう「もやもや」した顔。
父さんは、もしかして自分に何も出来ない‥って、自分を責めてるのかも‥。
そんな二人の‥気持ちが嬉しい。
「ヒジリ‥」
「俺ね。‥反政府組織なんて恐ろし気な名前で呼ばれてるけど、‥その人たちが、ホントに政府転覆とかわるいことを計画しているようには思えないんだ。ただ、‥認めてほしいって思てるだけなんじゃないかなって」
たとえ自分たちが、世間を害するかもしれないバグだとしても‥。
それでも‥。
「普通に生きてていいって‥言って欲しいだけじゃないのかなって‥」
‥俺と同じようにね。
引き続き、落ち込むヒジリ からの、ちょっと浮上するヒジリ。
人と話すことによって、頭の中を整理中です。




