55.間違いと発見。
‥国の災厄が、怒り過ぎると天災が起きる。
だけど、「これ」をやったのは‥この現象の原因は‥俺ではないと、母さんは言った。
父さんだ。と。
はじめっから母さんは「貴方、そんなに怒ったりしたら」って言った。俺が原因だっておもったんだったら「ヒジリ、あんた! 」って言うだろう。母さんは、俺に対してと父さんに対してでは‥態度が違う。それこそ、全然違う。母さんは父さんに対して「気安く」声なんかかけないし。遠慮してるっていうより、「変なとこ見せたくありません」って感じで「かわい子ぶってる」‥こんな年だってのに、可愛いね。
ああ、ちょっと現実逃避した。
庭は、相変わらず雨が降っていた。
だけど、そう大雨ではなかった。
さっき、窓から見えたのなんだったんだろ、って位、雨は小ぶりだった。
だけど、雨に濡れると流石に冷える。
でも、
俺たちは、濡れるのも構わず、庭に立ち尽くしていた。
繰り返し言う。
確かに、雨は降っている。
だけど、‥それ程では無い。
絶対に、こんな状況に陥る程ではない。
そして、その原因は父さん。
うん。まあ。‥これは自然現象じゃないな。それは、一目でわかった。
俺は、座り込む父さんの後ろに立った。父さんは、俺の気配を感じただろうに、振り向きもしなかった。
「父さんの属性って‥」
「土と、時、だ」
水だったの? って聞こうとした俺の言葉に、父さんが言葉を被せてきた。
言いたいことなんて、お見通しだし、絶対間違ってるぞ
そう言われてるんだろう。
間違ってはないな。
確かに間違ったよ‥。
「時‥」
‥時ってなんだ?
その間も俺の目は庭に釘付けだ。
見れば見る程、立派な池だ。
貯水池だね。
‥とにかく、土を活性化させるか‥。
と、訳の分からない独り言が父さんの口から洩れちゃってる。
‥いやいやいや。
土をどうする、とかじゃないでしょ。
水でしょ。どう考えても水をどうするかでしょう。
しかも、‥どう考えても、水でしょ? 父さんの属性?
「何? 時って。水じゃないの? だって、どうみたって‥」
いや、だって、どう見ても水でしょう。
我が家の庭だけだよ?! 池が出来てるの。周りは‥水たまりがせいぜいだ。
おかしい、さっきあんなに雨が降ったのに、周りは水たまりだけで、我が家の庭だけ池。
ここら周りの水が我が家に集まって来たか?? そんなわけはない。この家は、周りの家よりちょっと高台(って程でもないけど)になっている。我が家から周りに流れることはあるかもしれないが、我が家だけ溜まることはない。しかも、家の周りに排水溝で囲んで、雨水が溜まらない様な工事をしたはずだ。
‥はやりの手抜き工事か?
父さんは、違う。と首を振る。
「水じゃない」
「でも‥? 」
「時は、時だ。雨が降ってないのに、水浸しっていうなら、話は別だ。どこかから、水を持ってこれるなんて、水属性にしか出来ないからな。だけど‥今は雨が降っているだろう? しかも、割と長雨だ」
父さんは後ろに立っている俺をやっぱり振り向きもしない。
顔を合わせるのが恥ずかしい‥んだろう。自分がしでかしちゃったから。それに、結構本気で困っている様だ。
‥まあ、庭に急に池が出来たらね‥。
俺は、呆れ顔になりながら
「まあ、確かに割と‥降ってるね」
頷いた。
ちょっと、感情がこもらなかったのは、‥まあ、許してほしい。
あ、でも‥。そういえば‥さっき、滝みたいに降った。急に。どばっと。
え、じゃああれが原因じゃん。あれ降らせたの父さんじゃないの?!
「雨が降ったから池が出来たんじゃなくて、土に水が溜まったんだ。それから、滝のような大雨が降ったんじゃなくて、結果として滝のような大雨になったんだ」
‥え。
なにそれ。わかんない。
「雨が降ったら、水は流れる。それが普通だ。通常の時間軸で雨が降れば、雨水は流れ、ここに溜まらない。その為に、溝も作ったわけだろ? だけど、‥ここの池の水は、流れずに溜まっている。この水は、時間が止まったこの土に、ここにこれから降るだけの雨がいっぺんに集まった結果、‥池になったんだ。この現象は、土属性と時属性が両方ないと、‥こうはならない」
土に、水が。
「これから降るだけの雨がいっぺんに‥? 」
‥それが、「時」‥時間ってことか‥。
「早送りだ」
「そして、その雨を、土が流さず、‥池にした‥」
そう説明しながら、父さんはしゃがみ込んで、地面すれすれに手を翳す。
ほわ、っと緑の光が父さんの身体を包んだ。
「‥母さん、雨はいつ上がる? 」
母さんを振り返りながら聞くと、母さんが慌ててスマホを調べ始めた。
「‥2時間ってところかしら」
「‥直ぐには止まないか」
「水をどこかに流しましょうか? 」
困り顔の母さんが、父さんに提案して、ちらりと俺を見た。
はい。俺がするんですね。
母さんの属性は水だけど、‥そこまでの力はない。
父さんは‥今まで使ってるの見たことないけど(ってか、今回も使ってるとこ自体は見ていない)‥結構凄い方な‥気がする。
「‥蒸発させるとかで良かったらするけど‥」
「‥ああ、そうね‥お願い。でも、ここで、‥出来るかしら」
「こっちでスキルをつかう練習をこの頃ミチルとしてるんだ。‥大技は使ったことはないけどやってみるよ」
「無理しないでね」
「分かってる」
そうして、俺は自分の中の魔力を腕に集めて集めて‥
(あ、これをしてる地点で、周りには緑色の光が半端なく集まって来てるもんだから、ちょっとした発光物体です、俺‥。クリスマスとかに需要ありそう)
そこで、腕を胸のところでクロス☆ 「水→気化」という固定のプログラムになってるであろうと意識しながら‥ここで、右腕だけをびしっと前に出して、
「水の状態異常! 『蒸発』! 」
‥大人になってこれをやる羽目になろうとは‥恥ずかしさで悶絶だね!!
あ~。
この厨二な感じ、たまらなく嫌だ~。
でも、昔っから、俺のスタイルこれだった。
‥仕方が無い。
ミチル‥どうやってたっけ。こんな恥ずかしい奴じゃなかった気が‥。
「ヒジリ」
今まで、「わ~凄いな(棒)」って感じで見ていた父さんが、
水が蒸発して、さっきまで水があった池跡を眺めてから、俺を振り向いた。
そういえば、初めて俺を振り向いた。
「時、だな。それも」
ぼそっと言って、また前を向いて、しゃがんで
また手を地面にかざす。
「あ、‥俺も手伝う‥」
親子そろって、地面に手をかざし
「土の状態異常‥活性」
って始める父さんの真似をして、
「土の状態異常‥活性」
ってやってみた。
やっぱり、人のスタイル真似したって‥出来ないわけで‥
だって、あれだ。俺は、父さんが何をイメージしてどうやろうとしてるかすら分かんないわけだからね。
「土の状態異常! 泥化! 」「整地からの乾燥! 」
で、地面を整地した。
因みに、父さんがやってるエリアは、
地面がグネグネ動いて、まるでいきものみたいに波打って、あるべき様に変わった。
「時の早送り。丸2日分、ここにかかる時間を早送りした」
‥凄すぎるんだけど‥
凄過ぎるんだけど!! 父さん。なにそれ、魔王!? 時とか 凄すぎない?! 人間の出来ること超えてない!?
ってか‥さっき、父さん、俺の「蒸発」も‥
「さっきの蒸発も、水が蒸発する時まで早送り、ってやつだ。父さんは、何時間何日先って指定しなきゃ出来ないし、‥早送りも2日が限界だけど‥ヒジリはどれくらい早送り出来るんだろうな。‥もしかして、巻き戻しも出来るかもしれないな」
って、黙々と、自分の分に割り当てられた十分の一くらいの池を黙々と整地していた。
手伝うことはしない方がいいって思った。
にしても、だ
無期限で時を早送り‥もしかしたら、巻き戻しもできる? 。
「時を‥」
‥もしかして‥リバーシって‥そういうこと‥か?!




