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リバーシ!  作者: 大野 大樹
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53.善だとか悪だとか

前回後半に引き続きナツミ目線。

 敵だとか味方だとか‥

 考え方が違う人だっているって、どうして考えられないんだろうか。

 魔法使いは‥考え方が乱暴だから、悪に染まると‥国の凶事になる。

 って。



 あんなことがあったけれど、私は、初めの予定通り、憧れていた魔法学校に入学することになった。お金を貯めて、入学願書を送り、認められた。‥あんなことがなかったら、それこそ希望に満ちた入学式だっただろう。だけど、状況は少し変わっていた。

 私の気持ちの問題だ。

 元々、貧しかったことでちょっと歪んでいた私のこころは、親友と思っていたヒジリを自分のせいで失うかもしれない状態にしてしまったことで、更に歪んだ。‥まあ、すさんでいたといっても過言ではない。

 だから、私は他の子供たちみたいに、純粋にキラキラした目で入学式に望めなかった。

 魔法使いに憧れている少年少女には、魅力的であろう荘厳な雰囲気のあるいかにも伝統的な建物でもって、如何にも威厳に満ちた老人‥学校長が、ローブを纏った正装で現れ

「これからは、貴方たちもこの国を支える一員となるのです」

 って厳かな口調でいうんだ。

周りは、昼間だというのに、薄暗く、部屋の隅に置かれた蝋燭によってほんのり照らされている。

 魔法使いの先輩に対する配慮だ。

 見習いにもなっていない、新入生ならまだしも、魔力を極めようとしている魔法使いというのは、‥そんなに眩しい太陽の下ってのを得意としない。

 暗闇の中の、一筋の自分の魔力を器用に拾い上げて、魔法を紡ぐ。

 攻撃魔法と違って、魔法って言うのは‥繊細で集中力がいるものなんだ。

 王様やらリバーシと違って、魔法使いは魔力を自分で作り出せない。魔力は有限だし、貴重だ。

 攻撃魔法は大雑把だけど、自動的に発動できる。スキルに近いんだ。何処に当たるか分からないし、まあ当たればラッキー的なアバウトなものだ。魔法は、違う。こうしたい、ここに‥という微調整が効く。だけど、それをするのは魔法使い本人だ。魔法は繊細で、制御の良し悪しは、そのまま魔法の良し悪しだ。

 魔法使いって職人肌だったり、プライドが高かったり‥ロマンチストが多い。

 魔法使いは、だから、攻撃魔法はあまり使わない。

 誇りとプライドにかけて、日々研究と鍛錬に打ち込む。それを至上の喜びとしている。

この学校はそれが許された最高の場所。周りには同じ様に、同じ志を持った仲間がいて、先生は優秀。いくら実験をしても、怒られない環境。

 以前の私なら、これ以上にないと喜んだだろうが‥、やさくれた私にとっては「国の犬を作り出す訓練所」に見えた。

 優秀な訓練士がついた、設備の整った訓練所。奨学金完備、優秀ならば寮の部屋や食費等生活面で優遇が受けられ、。奨学金も卒業後国に就職すれば、免除される。

 魔法使いは、100%国の関連施設に就職するから、授業料は実質無料。おまけに、優秀であれば生活費もかからない。貧しかったナツミの家族がナツミを魔法学校に行かせることが出来たのもその為だった。



 魔法学校に入って直ぐに誓約書を書かされる。


 一つ、自分が何者であるかを自覚し、軽はずみな行動を取らない。

 自分の行動一つで、他人に「図らずも」危害を与えてしまう危険性があるということを自覚しましょう。

 一つ、魔法を自分の欲望のために使用しない。

 魔法は、危険でまた、神聖な物です。くれぐれも、自分本位な使用をせぬよう、心がけましょう。

 一つ、心を静かに過ごし、反対勢力その他の危険組織に関わらない。

 反対勢力は、人心を惑わせる魅力的な勧誘をしてきます。心を静かに過ごし、享楽に身を委ねたり、また低俗な勧誘に耳を貸してはいけません。

 等と延々と続く注意書きを復唱させられ、最後に誓約書に

 

 我々、法使いは、品行方正を心がけ、万人の安寧秩序の為に尽力します。


 の一文をかかされ、サインさせられる。

 わざわざ、「自筆で書いてください」って言われるんだ。‥どう見ても普通じゃないインクの付いた羽ペンで。

 そのサインが、「国に忠誠を誓う」っていう呪いみたいなもんで‥これにサインをしてしまえば、魔法使いは国に逆らえなくなる。破れば、対価として、自分の大切なものを失う。

 冷静になれば、そんな詐欺行為だ。

 貴方たちを管理するのは、保護するためです。

 って説明されたけど、‥魔法使いならそう怖いものはない。

 確かに、魔力を知らずに使い過ぎて、そこに誰もいなかったら、そのまま‥って危険性はある。だから、一人で行動するのは危険だ。その為の保護。

 管理は‥言わずもがな。‥危険だから、

 魔法使いをみんな、危険物質みたいに扱うのは止めて欲しい。

 この国では、魔法使いを祭事や、慈善事業にしか使わないみたいな傾向があるけど‥そうじゃない。魔法使いはもっと何でも出来る。

 リバーシだって、そうだ。異世界の情報収集分野やら土壌改良、治水分野、そういったべらぼうに魔力の要る分野にしか期待されてないし、‥結局魔法使いと同様に恐れられているけど、リバーシだってもっと別の働き方だって出来る。

 ‥そういうのを、魔法使いやリバーシ自身が考えて、切り開いていくべきなんだ。保護も、レールを敷くも、選択肢を奪う為。これしかないって思わせるため。

 ‥この世界に、私の自由なんて、無い。

 この世界は私を必要としていない。

 そう思ったら、こっそりその場から逃げ出していた。誓約書は握りしめて、後で破り捨てた。インクだけじゃなく、その紙自体も何かまじないがかかっていたのだろう。破った瞬間、ばっと燃えてその火花が魔法学校の方に飛んで行った。

 ゾッとした。

 ‥きっとすぐばれた。あの紙が‥きっと知らせてしまう。

 それに、入学者名簿があるんだもの。

 入学者名簿に名前があるのに、本人がいない。‥すぐに脱走したって分かる。

 だから逃げた。逃げて‥逃げて、ボロボロになっても逃げて。

 ‥すっかりやさぐれていた私は気が付いたら、反政府勢力と今まで教わっていたところに居た。

 だけど、‥そんなことに初めは気付かなかった。

 だって、彼らは私に寄り添ってくれた。私の不満や不安に寄り添ってくれた。そして、仲間になった。

 魔法使いもいた。二人の魔法使いは、私と同様、魔法学校から逃げて来た子たちだった。

 だけど、誓約書にサインした。サインした者が脱走したから、対価に‥バツとして一人は両腕がなかった。腕で発動する魔法使いにとって、両腕がなかったら、魔法が使えない。そして、もう一人は目。彼女は

「私は、先見よ」

 といった。

「今では何も見えないけど」

 そして、私が魔法使いだけど魔法学校に行っていないことを喜んだ。

「私たちが、教えてあげる」

 って。

「スキルと違って、魔法は『習わないと出来ない』から」

 って。

 私が今まで使ってきたのが、攻撃魔法であったと教わったのも彼らだった。

「魔法と攻撃魔法は違うんだ。攻撃に特化させたいんだったら‥今のままでもいいかもしれないけど、魔法を学んだほうがより精度が上がるよ」

 って。

 今では、彼らは私の一番の仲間だ。



 善だとか、悪だとか。



 私にとっては、あんな魔法学校こそが悪だ。

 リバーシや魔法使いの自由を奪う‥あの国こそが‥悪だ。

 分かってる。国は‥異分子であるリバーシや魔法使いを持て余している。国民は、口には出さないが魔法使いやリバーシを恐れている。

 違っているって、‥怖いから。

 得体が知れないって、怖いから。

 国は国民に安心と安全を保障する義務がある。

 リバーシや魔法使いを目の敵にするわけにはいかない。

 リバーシや魔法使いに国に対する不満を持たせてはいけない。

 リバーシや魔法使いを宥めおだてて、だけど、態度を増長させることはさせない。その為の縄を付けて置く。国民に対しても、「王家が手綱を持ってますよ」という姿勢を見せる‥。

 王家のやり方。臭い物には蓋を的な‥対応。

 なんかラルシュローレ王子は違うって気がしたんだけどな‥

 だけど、気のせいだったみたい。

 まだ国民には発表されてないけど、ヒジリと婚約が決まっているらしい。

 ヒジリは‥国に監禁されるんだろう。

 馬鹿なヒジリ。

 ‥力を持ってるのに‥ずっと強くなれるはずだのに‥流されて、適当に生きてる。

 馬鹿なヒジリ。

 ホントに、昔からあの子はずっと流されてばっかり。

 嫌だって、言わない。

 ‥言えない。

 そんなんだったら、周りの思うつぼじゃない。

 ホントに、馬鹿なヒジリ。

 


 ‥イライラする。


 

 見てられないけど、‥見てたらイライラしちゃうからね‥見てなかったら、‥心配で、またイライラしちゃう。結局、ヒジリの存在自体にイライラしてしまうんだ。

 善だとか悪だとか、‥好きだとか嫌いだとか、そう言うのはきっちりわけらえるものじゃない。

 分ける必要があるのかどうか‥ちょっとは考えてみればいいのに。

 分けなきゃいけない、ってはじめっからそういう頭でいるからいけないって、なんで思わないんだろう。王様って、‥中途半端なんじゃない。

 王様は、きっちり、分ける者なんだ。

 丁度、赤と白の間に引かれた黒い線。

 引かなきゃ、まじったら困るって言いたげにひかれた黒い線。

 だから、‥中途半端なヒジリが邪魔なんだ。

 いない方がいい。

 だけど、‥利用できるなら、利用した方がいい。

 多分。

 サラージ王子はリバーシ。

 ラルシュローレ王子は魔法使い。

 まあ、王族は「王族」であり、それ以外の何者でもない。「リバーシ」やら「魔法使い」とは分類されない。‥でも、まあそれは、置いてこう‥。

 丁度真ん中に、王様と‥サイダラール殿下。

 真ん中で、唯一無二。

 だけど、

 味方も何もいない状態。

 魔法使いもリバーシも希少だけど、でも一人っきりじゃない。

 王族以外にも‥いる。

 王様にとって、兵隊で、有用な駒である私たちは、だけど同時に常に命を狙われかねない危険分子で‥。

 危険分子は、何もヒジリだけじゃない。

 だから、何か不穏な空気を見せれば、殺さなけれないけない。

 それは‥簡単なことではない。だから、成人後の魔法使いとリバーシは相棒を組まされる。まあ、つまりは連帯責任だ。

 どちらかが国に害をなすと判断されれば、その相棒が討つ。でないと、両方討伐の対象になる。本人だけじゃなくって、その対象は一族郎党に及ぶ。リバーシや魔法使いはずっと家族を国に人質に取られているんだ。

 国に目を付けられないように、品行方正に、大人しく、国のために生涯を尽くす。そうすればさえ、家族も本人も生涯の安寧を約束される。

 ところで。

 力の強いリバーシや魔法使いには相棒が複数いる。

 一人では、対等じゃないからだ。

 誰よりも力が在るヒジリもそうだ。

 ラルシュローレ王子と、私。

 ラルシュローレ王子が私が魔法学校に入る前に「魔法使いになる君に、‥だれよりヒジリが信用している君にヒジリの相棒になってやって欲しい」って言われた。

 言葉だけだったけど、王子の言葉だ。

 あの時、契約は結ばれた。

「今はまだ、君の力は弱い。僕が補助をするね」

 って。

 だから、‥ヒジリの相棒は私とラルシュローレ王子。

 凄くない? 自分の道連れに一国の王子が死んでくれるって。

 ヒジリが真剣に怒れば、‥私と真剣に殺し合えば、私たちがお互いにどちらかを殺せば‥生き残った方も国家の呪いとして、‥死ぬ。

 その時には、同じく相棒のラルシュローレ王子も一緒だ。

 相棒は、お互いに見張り合うもので、お互いが殺し合うなんて事態は、想定されていない。

 時に仕事のパートナーであるだけの存在だ。

 学校結局行っていない私は、リバーシと魔法使いがパートナーをくんでする仕事っていうのは、分からないんだけどね。

 私とヒジリがパートナーねえ‥。魔力枯渇の際の、魔力供給源って位しか想像がつかないわ。



 想像はつかないけど、それもいいかもしれない。

 ヒジリの魔力をつかったら、私、王様だって倒せそう。

 それだけのことが出来る。

 


 危険なテロリストと、最強のリバーシ‥。

 パートナーとして、最悪。国にとってはね。だけど、私たちにとっては、最高だ。

 なんて魅力的なんだろう。

 きっと、ヒジリは気付いてない。

 私と喧嘩しようって本気で思ってるだろう。

 馬鹿なヒジリ。

 何にも知らない、馬鹿で‥可愛いヒジリ‥。 

 

 

 早く、戻っておいで。

 昔みたいに、一緒に‥遊ぼうよ。


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