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リバーシ!  作者: 大野 大樹
44/78

44.引き続き、かんがえるヒジリ

 ナツミは、その少ない(俺にとっては、だ)魔力を有効活用する術を知っている。否、有効活用するために日々研究して来た。

 俺は、ナツミに流されるばっかりで、その活用方法を考えてこなかった。ただ、『元から持っているもの』(才能だとか、発想力を総て実現できる『スキルの創造主』という能力だとか、『状態異常の皇帝』とかいうチートを当たり前のように使って、何でもできる気になってた。実は、日々を乗り切っていただけにすぎないのに‥。

 だけど、ナツミの元を離れて、日々は平和なばっかりで、危機感を持たなくてもよくなって、‥元から持っているものを使う必要すらなかった。

 俺は、すっかり油断していた。

 平和ボケしてた。

 ‥敵は、その間も俺を狙っていたのに、だ。


 俺の状況を、改めて確認してみる。

 俺が、実はどれ程恵まれていて、そして、どれ程それを無駄にしてきたか、だ。

 そして、ナツミの状況の把握。

 俺と、ナツミの違い。


 俺と、ナツミの違い。‥例えていうなら、ウサギと亀だ。

 ウサギであった俺は、その足の速さを過信して、亀を侮った。

 そもそも、‥実は、ナツミは亀じゃなかった。魔法使いのナツミは、かけ比べどころか、魔法で山の頂上まで一瞬で移動できた。

 ウサギ(=ヒジリ)程のスタミナ(=魔力)が無かろうが、ウサギ程の身体能力(スキルの数だとか)が無かろうが、一瞬の魔法を使うだけの魔力で、勝負を終えることが出来る。

 

 そんな感じだろうか?

 ナツミは、俺のことライバルだと思ってくれていた時もあったのかもしれない。

 切磋琢磨出来るライバルだって。

 だから、俺を助けてくれた。

 いつか、俺がどこかで反撃出来るまでの時間を稼いでくれた。

 その一瞬の魔法を凌駕するだけの起死回生の必殺技を考えるまでの時間を‥。

 だのに、俺は何もしていなかった。だから、ナツミは怒った‥。何にもナツミは悪くない。間違ったことを言っていない。

 出来るのに、やらない。やらない人間が、自分が欲しくてたまらないものを持っている。持っていることを活かそうとしない。

 ‥それは、腹が立つだろうなあ。

 

 

 結果から、逆行して考えることが出来る。

 チートだらけの俺になら、出来ること。俺には出来て、ナツミには出来ないことを‥しないと勝てない。

 まずかけ比べで考えると、より早くより強くなってもしかたがないって話。

 まず、勝たせない。魔法で山頂に行かせる前に、勝負を決める。それが出来ないまでも、一直線に山頂コースはせめて阻止する‥。

 理想は、勝負が始まった瞬間に勝負を仕掛けて、ナツミに「降参」っていってもらうこと。だけどそれが出来なくても、せめて足を殴ってでも止めさせて、その場‥スタート地点になるだけとどまってもらうよう‥時間を稼ぐこと。

 勿論、反撃が来ないなんて甘いこと考えていない。何ていっても、相手は、‥ナツミで無能で非力の象徴になっちゃってる亀なんかじゃない。

 先手は、俺。‥多分、目くらましの‥霧か、ブリザーブか‥雹。‥アイスピックは、あれは魔法だ。状態異常では済まない。現実に、氷がピックになって横に飛んで来て、人に刺さるなんてことはない‥ああ、つららが上から降ってくるって位ならあるな。横なぶりの大雨が偶々氷に変わるって位ならあるか‥。

 そこら辺は、あとで考えよう。

 先発:俺。

 反撃:ヒジリ。

 俺:攻撃を跳ね返す。止める。飛散する。

 そして、その隙に、周りを氷結。



 反撃の攻撃を止めることが最重要。

 ボールも攻撃と同じ。

 衝撃を止める訓練。止めて、その衝撃を水に変えて(※なんでも水に変えるチートなスキル)蒸発させる。(飛散)



「ヒジリ、‥水が凍ってるけど。ホント、無茶苦茶よね。リバーシって」

「へ? 」

 気が付かないうちに、手に持ったコップを凍らせた俺を見て、母さんが呆れた様な声を出した。

 そして、俺はそこでようやく自分の持ってた水が氷になっているのに気付いた。

 気付くと急に冷たく感じた。

 手に刺すような刺激を感じて慌ててコップを机に置く。

「それも、水の状態異常なのよね‥。ただの状態異常も極めると凄いことが出来るものなのねぇ」

 本来、状態異常の評価は、そう高くない。

 母さんの「植物をシャキシャキにする」ってのも、水の状態異常だ。植物の水分量をちょっと増やして、全体に行き届くように‥ってイメージを持って魔力を送る、水の状態異常の初級・『水分供給』で、それよりも高度で水の状態異常・中級にあたるのが、『水路整備』。植物の水の通る道(道管だとか仮道管だとか)を正常にして‥っていうもので、これを取得するにあたって、植物学だとか、植物の構成を勉強する必要がある。これは、血管の治療と同じ原理なんだけど、対象が人体である場合は、植物学ではなく医学を勉強して血管の働きを正しく学ぶ必要がある。だから、水の属性を持っている者の内、魔力が一定以上に高い者は、植物学を学ぶ者や、医学を学ぶものが多い。

 本来、状態異常であれ、魔法であれ、そうやって地道にスキルアップしていくものなのだ。

 因みに、氷は、水の状態異常ではない。

 『時間の状態異常:温度』を水に働きかけないといけない高度な複合スキルならしい(母さんは知らなかったようだが、ミチルが教えてくれた)

 上級状態異常:氷は、根っからのsideB出身者である母さんでも知らなかったのも仕方が無い様な、マイナーなものらしい。(研究の為の分類的な感じらしい)氷(自然界に勿論ある)が出来る冬という季節にまでそこだけ時間を逆行させて、‥って大掛かりな状態異常で、勿論凄い魔力が必要で、真夏にするには、何人かがかりでやっと出来るようだ。

 ‥氷ってじゃあ、どうやって作ってるんだろう

 って気になって調べたら、そんな文献が出て来たんだとミチルが笑いながら教えてくれた。

 今は、「作る」んじゃなくて、「保管」しているらしい。

 ‥そりゃそうだ。だけど、保管するのも大変だから、氷は高いんだね。

 俺なら、二秒で出せるが‥。

 悲しいかな‥魔法なら、一秒だ。



 話が脱線した。

 『本来、状態異常であれ、魔法であれ、そうやって地道にスキルアップしていくものなのだ』って話。

 もっとも、努力が全て報われるわけではない。

 適性が無ければ、努力したところで進化しないし、‥自分のライフスタイルにこれ以上は必要のないというレベルに進化させる者はそうはいない。修行には、やっぱり時間もかかるし、それ相当の教えを他から得ようとすれば、資金もかかるからだ。

 俺の状態異常は、そういうのとは違う。そんな狭義のものじゃない。

 水であれば、どんな状態にでもできる。「こうしたい」って思えば出来るっていうでたらめな状態異常だ。

 そんな感じで、初級や中級‥と分類できないから、最上位 水の状態異常という表記になるらしい。

 ってこの前ミチルに見てもらった時は、ステータスの表記が変わっていた。これは、ミチルの「最高位 詮索」と一緒だ。ミチルの詮索も調べたいことはすべて調べることが出来る。

 ある一つの分野に置いて、とびぬけてチートな能力を持つ。‥リバーシの特徴の一つなのかもしれない。

 あんなに練習してもコツすらつかめない、「金属で‥」に比べて、水は以前の感覚を早々に取り戻した上に、進化迄している様だ。

 攻撃をまず跳ね返すために絶対に、必要なのに‥。



「そうか、‥金属も鉱石から作るな‥。石の状態異常‥」

石を鉱石に変えて、‥鉱石を金属にすることで‥。



「鉄どころじゃなくって、金だって‥この前鉱石図鑑を見て気になってた、クロムだって‥」

 俺は、つい最近調べた「クロム」という言葉を口にした。

「どうやって手に入れよう‥って思ってたけど、このスキル使ったら、作れるかもしれない‥なにそれ、無敵。まさにチートだね‥っ! 」

 考え始めたのがミチルの家に行く道すがらで、どうやら、ミチルの家についてもまだぶつぶつ言っていたららしく、呆れた顔したミチルと目が合った。

「いや、‥あのミスリル使えば、それは問題なくない? そもそも、ヒジリが今までどんな攻撃もかわせて‥それどころか気付かなかったのって、あのブレスレットのお陰なんだよな‥。なんか、‥ムカつくけど」

 知らないうちに、そして、それをナツミが計算のうちに入れていたかどうかは分からないが、俺を守ってくれていたナツミが絡む‥ブレスレット。

 それをまた利用するのって、‥なんかプライドが‥。いや、そんなことは言ってられないか‥。

「最終的に使うことにする‥」

「まあ、ともかく今日も勉強して、その後はちょっとジョギングするよ。明日は、休日だから、そうだな‥テニスに行こう。あれならキャッチボールより『ボールが飛んで来て』不自然でない」

 ふふ、とミチルが苦笑いして、提案して来た。

 テニス‥。

「!!!! 」

 ‥盲点だった‥っ!



※現地点のヒジリ(進化済み)


ヒジリ

性別:女

称号:スリーピングビューティー

状態異常の皇帝

スキルの創造主

スキル:最上位 水の状態異常

状態異常:「接触面」の状態異常(接触点からの、発展形)

     初級 空間の状態異常(瞬間)

     石の状態異常

攻撃魔法: 水・土(それぞれ独立)

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