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リバーシ!  作者: 大野 大樹
40/78

40.どちらにしても、‥友は俺に厳しい。~正しいか正しくないかは別として~

「聖? 」

 ‥ん?

 ああそういや、さっき吉川なんか言ってたな‥。

「あ、そういや、吉川さっきなんか言ってなかったけ? 」

「‥なんで、断られる‥嫌がられるってわかってて、聖はまた、国見に頼むんだ? 」

 吉川の表情は、不機嫌そうだ。

 普段から、そんなに機嫌の良さそうな顔はしていないが、別に吉川は不機嫌なわけではない。ただ、愛想がよくないだけだ。でも、今彼はガチで不機嫌なんだろう。そして、その「不機嫌」が今は俺だけに向けらてるってのは明らかで、ちょっと気が重くなる。

 ‥いや、ただ国見が頼みやすいから、だろ? ‥それ以外何がある‥いや、まあ‥分かってはいるんだけど‥

 ああ! 分かるだろう! 察してくれ! 気まずいんだ! ‥吉川と二人っきりになると、答えを有耶無耶にしてる‥罪悪感がね‥。

 そもそも、俺みたいなヘタレに、‥何かを期待しないで欲しい‥。俺は、ただ平和に暮らしたいだけなんだ。みんなお友達ってね。

 ‥いや、違う。別に吉川は俺を責めてなんかいない。

 ‥寧ろ、「何気まずくなってるんだ」って‥感じなんだよね?

 分かってる。吉川は‥俺に気を遣ってくれてる。

 駄目だよな、俺‥。

「寧ろ、また、だからだけど‥。この前頼んだのに、今度は別の奴って‥へんだr「俺、全然気にしねえけど」

 国見が俺の言葉に被せてきた。

 そんな国見をちょっと睨んで

「それにさ‥。だって、‥吉川はインドアじゃん。それも、超」

 俺は続けた。

 ‥まるで恋人に浮気がバレた時みたいな感じ?

 俺は、しどろもどろ吉川に「言い訳」した。

 因みに、国見のことは、無視だ。スルーだ。

「キャッチボール位する」

 俺に冷たい視線を、しかし逸らすことなく向けながら、吉川がさっきと同じくいつもより心なしか低い声で言った。

 同じく国見を無視して、だ。

「無視かあ! ったく。‥じゃあ、吉川サン、聖のことよろしくっす」

 国見がため息をつきながら去って行って、その後を、中川さんが吉川に軽く会釈して追う。

 ‥置いて行かれた。

 ごめん、嘘。無視してごめん。置いてかないで‥。

「‥あの‥。吉川‥。その、この前はアリガトウ。今日も‥今も心配してくれてアリガト‥」

 ぽそり、

 心なしか顔が赤い。(と思う。顔が熱いからきっとそうなってるだろう)

 お礼をいうのって、緊張するね‥!

「‥一体どうしたんだ? お前はこの頃‥」

 ふう、とため息をついて、吉川がさっきまでの不機嫌全開モードをちょっと緩めてくれた。

「‥体力をつけたいんだ。それも、早急に」

 俺は、‥吉川に「100%嘘」はつきたくないって思った。

 俺は嘘が苦手だから、きっと、最初の設定覚えとくとかってのも無理だろうし。後で‥嘘だってバレたら、それこそややこしいし気まずいだろう。

 不誠実で、嫌だし。

「早急? どういうことだ? 」

 吉川が首を傾げた。

「‥この前、幼馴染に久し振りに会ったんだ。懐かしいって‥思ったのは、俺だけで、幼馴染は俺があんまりにも自分のすべきことをしていないことに、怒ってた」

「‥お前実は、凄い才能があるなんかの選手とかなのか? それで、「待ってても試合には出てこないしどうしてるんだ? え! 辞めたって! 何自分の可能性自分で決めつけてるんだよ!? 」とかか? 」

 ‥吉川、想像力豊かだな。

 でも、そうだな、そういうのが一般的な発想だよね。

「俺、昔住んでたところで、虐められてて‥。ここに逃げるように越して来たんだ。で、虐められたことも忘れて暮らしてて、‥幼馴染は、「悔しくないのか」って」

 虐められるってか、100%殺されそうだったってレベルだけどね。

「‥忘れて暮らすのが悪いのか? 俺はそうは思わないけど」

 吉川の顔が険しい。

 その「いじめっ子」に対する怒りなんだろうか、それとも「逃げてる」と怒ってきた幼馴染に対する怒りなのかは分からない。

 ‥吉川のことだから、両方かもしれない。

「立ち向かうことだけが、解決策じゃないと思うけど。逃げてるだけじゃ、事態は好転しないって、思えるのは強い人間だけだ。‥しかも、相手は覚えていないかもしれないしな。「解決策」を決めるのは聖で、第三者じゃないって思うけどな!」

 俺のことを、自分のことの様に怒ってくれている吉川に、俺は涙が出そうになって来た。

 ‥吉川は本当にいい奴だ。

「‥どうやら覚えてるみたいで、しかも、まだ俺のことを狙ってる‥っつか、なんていうか‥とにかくいい状態ではないと」

「‥それは、警察に相談レベルじゃないか? 少なくとも、お前が出て行って直接対決とかいう話じゃない‥」

 吉川の表情が険しい。

「それって、逃げ‥じゃん? 」

「違う。‥さっきからお前は何言ってるんだ? お前は、お前の中の真実は、今、ここにいるお前だろ? 昔のお前のことじゃない。‥何か事情があるんだろうなとは‥思うけど、だけど、‥そんなのは、正しいことじゃない。そんな、そんな奴の理屈にお前が付き合う必要はない」

 ‥ああ、設定が全く間違えてたなあ。

 『そういう問題』じゃない。

 逃げられるって選択肢はない。

「俺は‥弱いんだ。こころとかじゃなくって、‥物理的な‥喧嘩が。だから、きっと何も出来ないだろうって思うけど‥でも、身体を動かさずにいられないんだ。‥じっと座ってたら、‥考えこんじゃって‥」

 ‥やっぱり、100%じゃないにしろ、嘘はつくもんじゃない。

「聖」

 


 気が付いたら、吉川に抱きしめられていた。

「一人で悩むなよ‥。俺は、そんなに頼りないのか? その幼馴染は‥聖には悪いが、‥聖にとっていい人間だとは思えない。‥でも、別にその幼馴染の全部を否定してるわけじゃない。ただ、‥そのことに関しては、聖もその幼馴染も感情的になりすぎてるんだと思う。‥仲間内の常識とかじゃなくって、冷静に考え直した方がいいと思う。‥今はその幼馴染の事、忘れて‥」

「‥俺は、‥彼女に失望されたくない‥」

 ‥彼女、女なのか。過激な女だな‥

 聖を抱きしめたまま吉川は思った。

 ‥てか、つい抱きしめてしまったが、‥どうしよう‥。

 誰も通らないとは思うが‥。

 でも、今離すのも‥なんか‥ちょっと違うか?

「あ! ごめん! つい! 」

 って、‥ラブコメか。

 これは、アレだ。泣きそうな同僚を慰めてるの図、だ。

「なんすか、吉川さん、聖。ラブか? オフィスラブか? 」

「国見‥」

「いえ、これは、『部活動で泣き言をいう後輩を、熱い先輩が身体で叱咤激励』ってシュチュエーションね。昭和の男の子向けのアニメね」

「中川さん‥」

「もう、休み時間終わりますよ」

 中川さんがにっこり笑って、スマホの時計を俺たちに見せた。

 え!



 ややこしいことになった。

 ‥やっぱり、嘘は言うもんじゃない。

 ‥俺の為に真剣に考えて、怒ってくれた吉川に失礼なことをした。

 でも、頭が覚めた。

 俺は‥戦うことしか考えてなかった。

 ながされて、だ。

 結局、「ナツミがこう言ったから」で、自分の意志じゃない。

 「こうすべきだから」もあったかもしれない。

 結局、俺は甘ちゃんだったんだ。

 ‥ナツミに怒られても仕方が無いね。

 否、怒られるから、怒られないように‥って話じゃない。

 俺はもっと、考えなければいけない。もっと真剣に。人に迷惑かけないとか‥大事だけど、それ以上に「どうすれば事態を最短に、安全に終わらせるか」が重要だって‥。

 そうだった。

 自衛は、その為の手段で、俺が「戦う」ってことが目的ではない。

 俺は、戦いのプロじゃない。

 ナツミに馬鹿にされたくないから? は! そんなことは‥何だっていうんだ。

 俺が勝つ時は、俺が



 世界の災厄



 になるときじゃない?

 その覚悟もないの? ってナツミは言ってるの?

 そんなのは、覚悟じゃない。‥それは、ただの‥自分の力を誇示したいだけの‥ガキだ!



「あ、児嶋さん。大丈夫です。国見君にはあとで誤魔化しときますから。私は‥そういうの理解あるから平気です」

 こそ、と中川さんが俺に耳打ちして来た。

「え!? 」

 そういうのって‥どういうの?!

 絶対聞きたくないヒジリだった。


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