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リバーシ!  作者: 大野 大樹
39/78

39.ちょっとだけ変わった日常生活

「国見~。今日もキャッチボールしよ~」

 今、俺はミチルに内緒でスキルの練習をしている。所謂自主練って奴だ。

 秘密の特訓だね!

懲りないなって思われるだろうけど‥だけど、じっとしてられない。

 だから、あくまでも身体を動かす程度にしようと思う。

 無理は、禁物だ。‥人に迷惑はかけたくないよ。

 女体になったから、体力は減ったか? って思ったけど、なんてことはない。

 俺は、‥ミチルも含めてリバーシは、男でも女でもなく、リバーシだ。

 気力で何とかなる。

 あっちでの魔力はこっちでの気力と同じような感じらしい。

 倒れるのは、魔力切れと、気力切れだ。

 俺は、パニックを起こすとオーバーヒートを起こす傾向にある‥らしいから、気をつけよう。

 さて、‥ヒジリの身体でここに来たわけだが‥、あっちでのヒジリとはちょっと違う。

 現在、俺の外見は、髪の短くなった『スリーピングビューティー・ヒジリ』だ。

 一応、晒しで胸はつぶしているが‥

 断言してもいい。

 そんなことしなくても、皆は何ら気付かない。

 ヒジリのが小さいとか‥そんな話ではない。本人の名誉の為言わせてもらうが、結構ある。

 だけど、それでも何でも

 ‥ここの皆ってか、俺に関わって来た人間は、聖とヒジリの違いに気付かない。

 でも、たまに素の恰好でコンビニなんて行ったら、見知らぬ人には女扱いされるから、多分そういうシステム‥どういうシステムだ‥なんだろう。

 今までの知り合いには、同じに見える補正‥みたいな?

 なんだそりゃ。

 だから、今の変装(笑)は、会社の仲間に対しての変装じゃない。社外の人間だとかそういった「初対面」の人に対する変装なわけだ。

 変装しても、スリーピングビューティは健在で、笑顔なんて普段(※聖時)の5割増しで可愛いと思うんだが‥

「勿論断る! 聖みたいなどんくさい奴とは、金輪際キャッチボールはおろか、ジョギングすらお断りだ! 勝手に俺の足に躓いてころんだりとかして、‥そしたら俺が罪悪感なんか感じる‥ってなことが起こるかもしれねえだろ! 。俺にメリットなんてなくて、デメリットだけって‥どんだけ非条理を俺に‥」

 国見には、‥効いていないようだ。

 けんもほろろな言い草に、心底嫌そうな態度。

 ‥恐るべし、「会ったことある人補正」

 きっと、国見には、聖(男)が「お願い♡」ってこびへつらってきている、やたら気色悪い状態なんだろう。

 ‥すまん、悪かった。

 だけど、それほど国見は気にしている様子はなかった。

「そうねえ」

 なんてゆったり笑う中川さんに

「そうっすよねえ」

 なんて、今日も相変わらず変な敬語を中川さん限定に使って、(中川さん限定で)デレデレしてる。

 ‥良かった。

 それは、良かったが‥

 笑顔が気色悪い。

 ‥しかし、この二人失礼だな!

「そんな大げさなことか?! 」

 吠える俺に、

「そもそも、何でお前は国見に頼むんだ」

 一際落ち着いた、低い声。

 一回り小さくなった俺の頭のちょっと上の方に人の気配がした。

 振り向くと、吉川が呆れ顔をして立っていた。

 ‥何でお前がここにいる。

 昼休みは、食堂で新聞3社読むのがお前の日課だろうが! 

「なんでここに」

 あ、つい声に出して聞いちゃった。

 ふう、と吉川が白々しくため息をつく。

「お前が性懲りもなくソフトボール持って駐車場に‥国見を引きずって行ったって聞いたからな」

 しらっとした顔で吉川が言った。

 ‥心配になって見に来たって素直にいやあいいのに、こいつもツンデレ~。

 ホント吉川っていい奴だな!

「そうそう。性懲りもないし、俺は引っ張られて迷惑だし」

 国見はぶれないし。

 なんていうかなあ、‥別に自分を偽らない。

 俺に対して、自分をよく見せようともしないし、俺に対しては気も使わない。俺が怒ろうが、お構いなし。

 なんか、「俺に気を許してくれてる」って思えて、嬉しい。

 だけどね。

 ‥こう見ると、ラルシュってホントに、住む世界が違うって感じする。

 そういう、「他人行儀」とかそういうレベルじゃない。ラルシュは、‥きっともっと親しくなったって、変わんない気がする。

 だって、一番親しいミチルとしゃべる時、言葉は砕けてるけど、態度はやっぱり「皆の知ってるラルシュ様」って感じだ。

 一流のホスト‥いや、接客業??

 ああそうか、なんかあったな‥

 “君主は国家第一の下僕”

 あれ誰だっけ、

「‥ああそうだ。フリードリヒ大王(※)」

 ※「君主は国家第一の下僕」はプロイセン国王 フリードリヒ二世の有名な名言です。

「!? 何、急に聖。ボールがぶつかる前から馬鹿になったの?! もしかして、すでにぶつかっていたの? 」

「早く止めてオフィスに戻りましょう」

 国見と中川さん、‥失礼なコンビだ‥いいコンビだよ君ら‥。

 因みに、中川さんはあの小さな‥商工会議所クラスの事務所を、「オフィス」と呼んでいる。

 机もスチール机だし、椅子もパイプ椅子のちょっと豪華(?)なだけの感じのもんで‥オフィス感ゼロだけどね! 社内伝達とか、今時黒板って!!

 そんなレトロな事務所も中川さんにとっては、「オフィス」だ。

 まるで、「ファスナーですよね? これ。チャックって(笑)今時言いませんよ」っていわれてるような感じだ。彼女は明らかにこの事務所に新風を入れたんだ。

 初めは戸惑っていた俺たち「おじさん」も、今では

「なるほど、若者はこれを「オフィス」って呼ぶんだ」

 って納得している。

 呼ぶかどうかは、別問題なんだけどね。

 強要してはいないのに、妙な説得力(?)

 中川さんってそんな、独特の雰囲気がある、

 因みに、中川さんによる食堂の呼び方「ランチルーム」は、‥だけど、意外とおじさんたちも使ってて、今では「ランチで打ち合わせするか」

 と、「ランチ」の部分だけ残ってる。

 ‥ランチって、「昼食」じゃん? じゃあ、ランチルームでランチするのは、ランチでランチする、か?

 そんな、ちょい今時女子中川さんは、きょうはいつものように先輩事務員(※そんなに大きな事務所じゃないから、事務員は中川さんを入れて、3人しかいない。後の二人は、中川さんの先輩)と「ランチ」にいかずに、コンビニで買ってきたサンドイッチをつまみながら、前と同様、俺たちにコーヒーの差し入れをくれた。

 ‥もしかして、中川さん国見の事まんざらじゃない‥とかかな?

 だって、今回、コーヒーが無糖になってるもん! 誰かに聞いたんだね?!

「心配してくれるんだね、中川さん」

 にっこりと微笑んで、コーヒーのお礼を言う。

 国見はホクホクしながらコーヒーを見つめていて、そんな様子を中川さんがちらっと見て、微笑んでいる。

 で、生温かい俺の視線に気付くと、

「私はコンビニにお昼ご飯買いに行った帰りで、別に! 見に来たわけではないですよ」

 ちょっと赤くなって目を逸らした。

 わざわざ「別に! 」のところをやけに強調するのが可愛い。

 甘酸っぱ~い! 

 ‥でも、俺、何はしゃいでるんだ? 女子か? こんな話、前は寧ろ嫌いだったぞ? ってか、なんか‥こういう事考えること自体が嫌だった‥。

 でも、今は、なんか、そういうことも考えたりする。それも、ごく自然に、だ。‥自分の事となったら、やっぱりしり込みするけどね。

 人の恋愛は、「あるかも」って思えるけど、自分のことでは考えられない。

 吉川が言ってくれたことも‥意識はして‥いる。だけど今すぐ答えを出せる気はしない。でも、だらだらと「なかったこと」にするのって、卑怯だよな。‥吉川だって勇気を振り絞って言ってくれたのに‥。でも‥

 ‥だから、気まずいんだ。ミチルは‥もうちょっとほっといていいかな?! ってか、ミチルの場合は俺がリバーシだから好きなだけだよね?! 

 ‥とにかく!

 初心者過ぎていっぱいいっぱい‥です!

 というか、実は出来るなら‥考えたくない。だって、俺は‥

 自分が男なんだか女なんだか、今はまだ‥決められずにいるから‥。

 外見で言うと、女で、だけど俺は今まで‥思春期という時期を‥男だと思って生きて来た。

 この頃、外見の女としての部分に引っ張られてるなって思うことも時々ある。

 例えば、前ならいっそ、国見や吉川に着替えを見られても恥ずかしくなかったけど、今は‥聖の姿だとしても恥ずかしい。って程度の話だけど。

 男だとか女だとかって、‥結局は心の問題だ。



 ‥男だか女だかって決定は、もう少し、今の‥本当の身体を取り戻した‥現実に慣れてからにしよう、と思う。


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