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リバーシ!  作者: 大野 大樹
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38.リハビリ合宿をsideAで

 初心‥。ちょっと‥違うな。

 サラージは、一言で表現するとヘタレだ。

 黒い笑顔をつい浮かべるミチル。

 ヒジリは、魔石を握った左手を、ミチルとサラージに気付かれないように布団から出すのに集中していてミチルの方なんか見ていない。

 そして、さっきからミチルを睨みつけていたサラージは、ミチルと目があった瞬間、自分に向けられた何とも馬鹿にした笑みにかっと赤面した。

 ‥こいつ‥っ!

 偶然目が合ったわけでは、勿論ない。

 わざわざ、こっちを見て‥視線を合わせて、

 馬鹿にしたように笑ったのだ。

 ミチルは、自分を馬鹿にしている。

 プライドが高いサラージにとって、それは許されたものでは無かった。

 ‥こいつ、いつか個人的にぼこぼこにしてやらなきゃ気が済まないな!

 そんな気分だ。

 そして、ヒジリを振り向くと

「あっちでは、魔力を補給することはできないんだから、魔力切れ起こしたらどうするんだ。起こしかけてから、こっちに戻ってて、敵に見つかったら余計に困るぞ。お前は、兄さんを信じてここに居ればいいんだ! 」

 やわら、ヒジリの手を握って強い口調で言った。


 ‥こいつ、まだ「兄の婚約者」って言うか‥。ホント、素直じゃない奴‥。


 ミチルは、相変わらずにやにやしている。

 サラージはもう、ミチルの方を見るのをやめていたが、生ぬるい、居心地悪いミチルの視線をずっと背中に感じていた。

「‥心配をおかけしまして。でも、大丈夫ですよ。ラルシュ様にもサラージ様にもご迷惑はお掛けしません」

 ヒジリは、サラージに突然手を握られたことに驚いたような顔をしたが、

 別に赤面はしなかった。

 だって、驚きはするけど、ときめくとか、ない。

 相手は、熱血暴走型の「ワンコ」だ。


 ‥! ああそうだ! この人、ワンコっぽいんだ!!

 気付くとすっきりしたわ~。さっきから、何となく気になってたんだよね~。なんかっぽいんだけど、何かなあって‥。


 そうなると、もうワンコにしか見えない。

 怒ってるのを見ても、キャンキャン言ってるだけにしか見えないし、落ち込んでるところを見たら、垂れた耳が見えるみたいだ。

 ‥見たことないけど、絶対喜んでるところはしっぽが見える勢いなのに違いない。是非見たいものだ。

 ニャンコは可愛い女の子、ワンコは可愛い男の子。

 これお約束だね!

 想像してふわふわ微笑んでいると

 いつの間にか前に来ていたラルシュと目が合った。

 ラルシュが上品に優しく微笑む。

 それは、王子様そのもので、カッコよくって綺麗なんだけど、‥やっぱりときめかない。

 恋愛感情って、そもそも分からないから、「ときめく」って表現が正しいかどうかは分からない。

 正しくは、「心を動かされない」だろう。

 ラルシュの外見は、サラージに似ているけど、‥ラルシュはワンコじゃない。

 サラージは小型犬、ラルシュはシェパードっぽいとかって話じゃない。

 もう、全然違う。種族すら違うって感じがする。

 ラルシュは、やさしいし、丁寧だし、上品だし、

 完璧で、隙が無い。

 ミチルが言ったみたいに、女の人に慣れて無くって、ちょっと不器用な対応になっちゃうときもあるけど、‥それすら、相手を油断させるのに役立っている。

 婚約者がスリーピングビューティーでリバーシだと、世間には知られていないが、王家の中では既に決定事項で、婚約者を他からあてがわれるという事も、ない。

 周りの期待通りに従っているように見せかけて、彼は、多分自分の思うように生きている。

 結婚の事だって、未だ世間には公表していない。

 彼は、上手いこと生きている。

「どうかしました? 」

 こてん、と小さく首を傾げてラルシュがヒジリを覗き込む。

 その表情も仕草もすさまじく美しいんだけど、‥その瞳にはやっぱりちらりとも色気はない。

 ミチルのヤバい程の俺を請う焦った様な色。(←ヤンデレ一歩手前)サラージの、フェイクの裏に見え隠れしてる「俺を見て! 」って飼い犬感丸出しのうっとうしい位の自己主張(←ワンコ系ツンデレ)

 そして、吉川の苦しい様な、顔とあの目。

 そういった感じがない。

 だから、きっと「心を動かされない」それは、俺だからってわけでは無くって、きっと誰も、だ。

「いいえ。なんでも」

「あと、ホント大丈夫です」

 にっこり笑ってヒジリが言うと。

「電池も作ってたみたいだしね」

 ふふ、とラルシュが魔力が充填された魔石を握ったヒジリの手ごと持ち上げる。

「さっき作ってたよね。‥君はやるといったら、簡単に自分の意見を曲げる人じゃないからねえ。気が済むまでやっていいよ。でも、本当に無理をしないでね」

 と、念を押す。

その顔は、今までにない位、背中がぞくっとするような威圧感があって、ヒジリは一瞬固まった。


‥ラルシュって怒らせたら、コワソ~!


 ラルシュは、そんなヒジリのことにはお構いなしで、ミチルにちらりと視線を送る。

 ミチルがラルシュに頷いて「はいはい」と小さくため息をつくと。

「特訓、付き合うよ。あっちで、俺なら、あっちでもスキルが使える」

 にっこりとヒジリに微笑んだ。

 ‥いろいろと、「アレ」なところもあるけど、ミチル、頼りになる!!

「ミチル。よろしくお願いします」

 ミチルが今度はヒジリに頷き、腕時計を確認して、真剣な顔をする。

「ああ、ホントに時間ないから帰ろう」

「ああ! 」



 さて、今ヒジリは、ヒジリの身体であるが、聖として、社会生活をsideAで送っている。

 本当はすぐにでも、スキルの特訓に入りたかったけど、

 まずは、リハビリだ

 と、ミチルに怒られた。

 長かった髪の毛は、バレバレだから、聖と同じくらいの長さに切った。

 ヒジリの髪は、サラサラで、美容院の人にも

「勿体ない‥」

 って再三引き留められたけど、バッサリ切ってもらった。

 でもほんとに綺麗だったから、かつらにでもしてもらえたらいいなあ、なんて思う。

 髪の毛を切ってしまうと、

 確かに、「聖」と「ヒジリ」はよく似ている。

 ヒジリの方が体のラインが丸いとか、そりゃあ違いはあるが、少なくとも顔はそっくりだ。(ヒジリは認めていないのだけど)。

「聖はもっと男らしい!」(本人談)

 らしい。

「まずは、リハビリがてら、こっちでヒジリのスキルで使えそうなものを考えよう」

「え? だって、‥水のとか‥こっちに来た時に鑑定してもらったけど‥」

「はじめっから、昔みたいな状態に持っていくことは‥むつかしいんじゃない? ‥まずは、今の力がどのくらいか見てみないとね」

「‥‥‥」

 俺、もしかしてこの前ぶっつけ本番で、かなりヤバいこと‥しかも人前でしてしまったかも!?

 バレないで良かった‥。


 ‥それよりなにより、

 あの程度の被害(※ボールが頭に直撃して、頭にこぶをつくった)で済んで良かったな~!

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