35.報・連・相
自分の甘さ加減を自覚したら、反省すべき。
ココで、かっとなって闇雲に、強くもないくせに喧嘩するとか、馬鹿もいいところだ。
相手にならない、とかの話以前の問題だ。
ナツミは、‥何故か今回見逃してくれたけど、今度会った時は、今回みたいなことはもう無いだろう。
あの時は、幼馴染の情け‥じゃないけど、兎に角、次は無いってのは分かる。
今回のことで、呆れさせてしまったから、次に会った時は、MAX敵って感じかもしれない。
正直、勧誘とか煩わしいことはしてこないだろう。
敵にとって、俺は無限魔力供給装置扱いでしかないだろう。
戦えるようにするために鍛える時間やら、そういうの考えたらそっちのほうがはるかに効率的だ。
昨日分かったように、隙だらけの俺なんて捕まえるのは、‥飛んでる蚊をたたくより簡単だろう。
「俺は、昨日敵に拉致されて、どうやら敵認識されてしまいました。敵は、ナツミでした。きっと、またさらわれると思います。ここにいたら、皆さんに迷惑を掛けてしまうので、出ようと思います。ですが、私は‥私が生きたまま敵に捕まるのは、私が敵から殺されるより、厄介です。今までのの様にsideBに逃げていることも‥正直難しいと思います。だから私は戦わないといけないので、私に戦う術を教えてください」
よし。社会人の基本、報・連・相だね!
さて、俺の言葉を聞いて、真っ青になってるのはラルシュとミチル。
「拉致って‥何かされなかったか?! 」
俺の肩をがしっと掴んだのは、ラルシュだ。
目が、怖い。
俺は、首を振る。
迷惑を掛けているのは俺なのに、俺を一番に心配してくれるって、ラルシュもミチルもいい人過ぎる。
そうだ、迷惑を掛けて
そして、これからもっと掛ける可能性があるんだ‥。
ラルシュは、腰を下げて、俺の瞳に目線を合わせると
「ヒジリ。君はこの結界から出ない方がいい‥ここなら君を守れる」
真剣な表情で言った。ミチルも後ろで頷いている。
二人の優しさは正直涙が出る程嬉しいけれど‥
俺はきっぱりと首を横に振る。
「そんなの勿論嫌です。それに‥」
「それに? 」
ラルシュの俺を見つめる瞳がもっと真剣なものになる。
すこし怒っている様にも見える。
それくらい真剣な目。
‥参ったな。ちょっとでも迷いが見えたら、反対されるんだろう。
意志と精神力を試されるね。
「ナツミは、そんなに甘くないと思います。俺がここに居て、結界が破れたら、‥被害は城にも及びます。それだけは避けたいです」
ナツミにこれ以上、弱い姿なんか見せたくないから。
城の奥で守られてるだけのお姫様なんて、これ以上言われたくない。
って理由だけは、言わない。
だって、「実際に弱い」。だのに「弱い姿を見せたくない」って俺が言うのは、ただの我儘だ。
俺の勝手、だ。かっこつけたい、なんて、実際にかっこ悪い奴が言っちゃだめだ。
「ここの結界がやぶれるとでも思ってる? 」
ラルシュの眉がちょっとぴくッとなった。
スミマセン、別にここの結界がお粗末って言ってるんじゃなくって‥。
だって、人がつくったものだ。
人に破れてもおかしくない。
「ナツミなら破ると思います」
俺は、そう思ってしまうんです。そして、それはきっと
間違いじゃないって思うんです。
「参ったね‥」
ふうむ、とラルシュがため息をついた。
「ふうん。何か考えがあって言ってるわけ? ここから出て行って、‥どうするのさ。なにか考えてるわけ? 」
くすくすと、ちょっと意地悪っぽい
軽薄な感じのする声が扉の向こうから聞こえた。
「ミチル殿、お久しぶりです。兄上。それと‥スリーピングビューティー‥貴女は初めましてですね。‥初めて話してるのを聞いたけど、‥えらく男みたいな話し方するね」
扉を開けて、顔を出したのは、
背の高いまだ若い青年だった。
何よりもまず、赤紫の目に惹きつけられた。
その強い目のせいで若干きつく見えるが、その顔は‥ラルシュに似ている。
そういえば、さっきラルシュの事兄上って呼んでた。ラルシュと髪の色も同じだ。
金の、絹糸みたいな髪。
確かによく似ているんだけど‥ラルシュは彼と比べたら、もっと柔らかい印象がある。
きっと、ラルシュの淡い色の瞳のせいだろう。
紫の‥アメジストみたいな色の瞳。
弟とは違う。
彼はそうだな、もっと意志の強そうな‥強い感じの色の瞳をしている。ちょうど‥ガーネットみたいだ。 ‥いや、ガーネットはもっと赤いな‥。
瞳を宝石に例えるなんて、どこの気障野郎かって思うかもしれないけど‥。実際俺も、他の人に対してだったらそう思うだろう。
‥とにかく、俺が言いたいのは、彼らの瞳が宝石みたいに透明度が高くって、美しいってことだ。
魔力が高くて、魔力の純度が高いとそうなるらしいから、きっとラルシュも彼もそうなんだろう。
因みに、俺の目も、ここでは宝石みたいに見える。シトリンって感じの色。ミチルとちょっと似てるけど、ミチルの方が少し緑が濃いね。(俺はどちらかというと‥黄色味が強い)
この前、ちょっと気になって宝石のサイトを見てた時、マリガーネットって宝石があるって初めて知ったんだけど、ここ(sideB)でのミチルの目は丁度こんな感じの色だなって思った。
「どうしたのさ。睨まないでよ‥怖いな。ああ、そうだね。‥自己紹介が遅れて申し訳ありませんでした。ラルシュローレ兄様の弟のサラージと申します」
ちょっと、不機嫌そうになったサラージの顔を見て、自分があまりにも長い時間考え事をしていたということに気付いてはっとした。
しかも、サラージの顔を見ながら。
‥睨んでいたわけではないぞ。
「あ‥。あの、‥はじめまして。‥不躾に見つめてしまって申し訳ありませんでした」
ヒジリは慌てて謝った。
そして、きっちりと座り直すと
「ヒジリです」
とサラージの瞳を見て言った。
微笑みはしなかったが、なるだけ柔らかい表情を心がけた。
その表情を見たサラージは一瞬面食らい、そして
「存じてますよ? 貴方が産まれた時のことも、俺は知ってます」
ふふ、と口に軽く握った拳を当てちょっと意地悪そうに笑った。
正直、いらっと‥いや‥むっと来た。
‥笑い方も、全然似てない。
この兄弟、似てるのは、見た目だけ。
で、その性格の悪そうな弟、サラージはさっきから‥
「顔は知らなかったですけど。まあ、実際興味がなかったですし」
眉をちょっとよせて、意地悪そうな表情で俺と向き合っている。
向き合ってるばかりか、口から出るのは、こんな調子の嫌味ばかり
‥なんなんだ、こいつは、さっきから、なんか俺に恨みとかなんかそういうのがあるわけ??
ちょっと、イラっとくるが、ここは我慢だ。
日本人(←今となっては、そうではないとわかったんだけど)の忍耐力舐めるな~?!
「え? 」
俺は、素ッとぼけて聞こえなかった振りをしたんだけど
「サラージ! 」
珍しく、ラルシュが怒っている。
おお、珍しいな。
「え? 何。何か隠してるの? もしかして‥兄上、あのことをヒジリは知らないの? 」
隠してる? 何をだ?
俺が首をちょっと傾げてラルシュを見ると
「‥‥‥」
だけど、ラルシュは俺の方は向いていなかった。
否、俺の視線には気付いているが、あえて見ないようにしているのかもしれない。
そんな俺たちの様子をちらりと見て、
「ふうん? でも、‥まあ、計画が随分変更になって、‥このままじゃ、ちょっと説明がしにくいね」
サラージが、ふっと今度は鼻で笑った。
「説明? 誰に? 」
俺と同じく首を傾げていたミチルもラルシュを見る。
「誰って。国民」
ラルシュは答えず、代わりに堪えたのは、やっぱりサラージ。
腹黒な弟王子。
「国民? 」
今度は、ミチルはサラージを見る。
サラージが頷いて、
「問題児な凶暴リバーシを保護という名で国民から隠匿するために、表向きには、王子であるラルシュ兄と結婚するという形をとる。
美しいリバーシに一目で心を奪われた美しく優しい王子様がリバーシに求婚して、結婚して、お城で暮らすというシンデレラストーリーという筋書きさ。国民に受けそうでしょ? 」
ふふんって声が出そうなほど、ドヤ顔っての? そんな感じの表情で言った。
「はあ!? 」
ミチルが呆れた様な声を出す。
で、
俺は、表情なくぼんやりと扉の辺り‥つまり、サラージの後ろ辺りを見ていた。
‥決まり。
俺の中で、こいつ、ゴシップ王子、はい、決まり。




