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リバーシ!  作者: 大野 大樹
24/78

23.リバーシは、皆病み過ぎてるみたいです。

 ‥8時間の孤独を埋める‥

 ミチルにとって、あのおばあさんの存在は、大きかった。

 そして、同じリバーシの俺‥。

 目が覚めたら、一晩中一緒に遊べるであろう、同じリバーシ。

 特別ミチルが病んでいるわけでは、きっとないんだろう。

 だって、子供だ。

 ‥ただ、その時はそうだったとしても‥、時間の使い方に慣れたり、他に好きな子ができるなり、するんじゃないだろうか? ‥眠っているだけの同類を、ずっと待ち続けるっていうのが、‥ちょっと病んでる。

 所謂、思い込みって奴なんだろう。

 それで、心の中で美化されて、‥絶対視する様になって‥。執着するようになった。

 あんなに、イケメンなのになあ‥。

 ‥思い込みって、恐ろしい。

 ‥今の俺を見て、「所詮、気のせいだった」って思ってるだろう。‥今はまだ気づいていないとしても、すぐ気付くだろう。

 ‥それも、腹立つがな!!

 勝手に期待して、勝手に見限るとかどうよ!?

 ‥いいけど‥。

「それ程の、‥影響力かあ」

「ん? 」

 ぽつりと俺の呟いた声に、ラルシュが振り向く。

「何か言った? 」

 ふわりと優しい微笑み。

 病んでないし、腹黒って感じじゃない、ホントに優しい微笑み。

 ‥これで王子とか大丈夫か。誰かに騙されたりしない?

 って心配になる。

 ラルシュは、

「国は、兄が継いでくれるから大丈夫」

 って言ってたけど、‥それで済むわけがないってのくらい、俺でもわかるよ。

 ‥まあ、ラルシュなりに頑張ってるだろう。

「うん、さっきミチルから、子供の頃のリバーシが保護する国の体制って話聞いてて‥。ミチルに声をかけてくれたのが、国側の‥いい人で良かったなって‥。だってさ、もし仮にいい人が匿ってくれても、その人の後ろについてるのが反対勢力だったら‥って思って。だって、‥反対勢力だってそのくらいのこと考えるんじゃない? 」

「考えても、人手もいるし、家の確保、夜中明かりをともす費用。金銭的に考えて不可能」

 ミチルがあっさりと言った。

「‥成程ねえ」

「そもそも、国だってやみくもに罠を張ってるわけでもないよ。俺だって、一日や二日は、誰にも声を掛けられずに一人さまよってた」

「情報網が張られてるんです。それで、保護する。その間の仕事は、迅速に、確実にですね」

 ラルシュが頷く。

 ‥なんか、徹底ぶりが凄いなあ。

 この国にとって、リバーシの重要度‥危険度が分かる。

 そして、‥この国出身のリバーシである、自分‥。

「‥なんかすごいですね」

 俺は、自分の我儘で「この国なんて別にどうでもいい」って言っていいものでは無い‥。

「俺‥私には、ここで何ができる能力があるでしょうか。‥私には、ミチルみたいに情報処理能力も、プログラミングを組むことも出来ないです。‥あっちでしている仕事は、出版業ですが、ここに還元できるような知識は‥ないです。

 ‥魔法使いでもないし、スキルは変なのばっかりだし‥

 私は、ここで何ができるでしょうか」

 この前、ミチルに言われて以来、気になっていたことをラルシュに聞いた。

 久し振りにラルシュに会えたから、聞いておきたい。

 ラルシュは真剣に俺の話を聞いてくれて、聞き終わるとまた真面目な顔で頷いた。

 ラルシュが口を開く前に

「確かに変なスキルばかりだよな。ヒジリの趣味か? 」

 ミチルが「そういえば」と口を挟んだ。

 ラルシュが考える時間を稼いでいるのだろう。ミチルは、気配りさんだ。

 吉川といいミチルといい、俺の周りは、気配りさんだらけだ。

 ‥俺の至らなさを実感して落ち込むから止めて欲しい。

 ‥まあ。わざわざ言わないけどさ。

「‥実用重視‥とか‥だったのかな。よく覚えてないけど」

 代わりに、俺はミチルのさっきの質問に答えることにした。

 まあ、あんまりそこらへんのところは覚えてないんだけど。‥今でも、あのスキル使えるのかな?? 寧ろ。

「‥え‥。『金属でなんでも止めるチートなスキル(状態異常)』って、‥実用的?? 俺は、今まで生きてきて、そういうものがあれば‥って思った場面には出くわさなかったけど‥」

 ‥確かに。

 俺よ、適当なこと‥言うな。

 俺が引きつった笑いを浮かべていると、

「攻撃魔法だよ。魔法なら、「何も」無くても、攻撃を止められる。だけど、魔法じゃなかったら、「何か」がいる。その何かが「金属」。ヒジリは、土の属性を持ってるから。そして、それを使っている内に、土の攻撃魔法が使えるようになったんだね。生活魔法と違って、攻撃魔法は一瞬だけしか使えないけど、‥魔法使いじゃなくても使える様になりやすい」

 ラルシュが教えてくれた。

 そうそう! ほら、やっぱり実用的だったじゃん!

「ああ、ヒジリは魔法に憧れてたって言ってたもんな。憧れてた人が魔法使いのナツミちゃんばっかり褒めるから嫉妬したんだよね~」

「うん? ‥これは、それとは‥違ってもっと‥生命の危険を感じて‥考えたスキルな気が‥」

「生命‥? 」

 ミチルが微妙な顔で、俺を見る。「何言ってるの? 」って顔だ。

「使ってるうちにって、‥何に使ってたの? 」

 ラルシュも、「何か嫌な予感がする」って顔をしている。

 ‥そうそう、生命の危機的な‥。

 俺は、その時、ふと思い出したことをそのまま口にした

「生命の危機を感じて、反射的に使っている内に、思いついたスキル‥。そうそう‥ナツミがふざけて攻撃して来たときに、止めたり。急に空からなんか降って来たときに、止めたり。時々、知らない奴に刃物で切りかかって来られた時とかにも対応できたりとか。それが結構日常的にあったから‥」

 そうそう、そんな感じだった。

 いやあ、今となっては懐かしいなあ。

 俺がしみじみと懐かしがっていると

「‥‥‥結構日常的‥? 」

 ミチルの顔が、さっきよりさらに微妙な表情になっていった。

「ナツミは、そんなに日常的に攻撃してきてたの‥。そういうスキルを使わなくちゃいけない位の攻撃を‥」 

 ラルシュは、ちょっと顔色が悪くなっている。

 どうした? 寝不足かな? 寝た方がいいよ? 

「え? チャンバラごっこみたいなもんでしょ? 氷の剣でしたもんだな。氷の剣みたいに、剣筋が見えるもんだったらまだ良かったんだけど‥。‥『アイスピック』ってナツミの魔法が凄くって、四方八方から氷のピックが飛んでくるの。あ、でも。これの方がまだ良くって、『アイスヌードル』、これはなかなか厄介なんだ。なんせ、対象物が針くらいに細くて、見えにくいんだ。透明だし。でも、刺さったら、めちゃ痛いし。‥そう、アレに比べたら、『アイスアロー』なんて、親切過ぎて「どうしたの、今日は、調子悪いの? 」って感じだったね」

 (顔色の悪くなっているラルシュに)ぽかん、として、俺はそんな何でもない昔話を付け加えた。

 ああ、ほんと、懐かしい。

 ナツミ元気かなあ。

「‥‥‥女の子の幼馴染の遊びってそんな感じなんだ‥」

 ん? ラルシュは、幼馴染のミチルとそんな遊びしてこなかったのかな? ああ、ミチルが来るのは夜か、‥出来ないわな。アイスヌードル飛ばされたら、‥見えなくって、もう、暗殺レベルだね。ええと、でも、ラルシュは火の攻撃魔法持ってるから、溶かせるね。いいなあ。

 きょとんとしているヒジリと、青くなっているラルシュを見て

「‥いや、きっと違うと思うぞ。っていうか、ナツミは本気でヒジリを殺しにかかってないか? 」

 ミチルが呆れた顔になった。

「まさかぁ」

 俺は、あんまり突拍子もないことを言うミチルに笑った。

 何を言うんだ。

 子供がじゃれついてるだけじゃないか。‥スキンシップだよ。

 ああ、そういえば、ミチルってナツミに冷たい‥ってか、やたらナツミを敵視してる。あのブレスレットを渡したのは、ナツミじゃないっていったのに、だ。

 人の友達を悪く言わないで欲しい。

「ナツミは、氷の属性だったの? 」

 俺の不機嫌さが伝わったのか、ラルシュが話をちょっとそらした。

 ほんと、ラルシュにまで気を遣わせちゃって、困るな。ミチルは! 

 まあ、今はラルシュの質問に答えるけど‥。

「いや? 土魔法も‥。そう、『迫りくる土壁』、あれは嫌だったなあ‥。だから、俺‥『なんでも水に変えるチートなスキル(状態異常)』を覚えたんだよ‥。そうそう、時々埋められたりした時とか、周りを水にして逃げたり、‥ああそうそう、このスキル、風魔法で上空に投げ飛ばされた時にも使えた」

「‥‥絶対。殺しにかかってる‥いや、違うな。ヒジリが魔力を膨大に持ってて、なんとかよけられると分かってるから、魔法の実験台にされてたんじゃないか? 」

 またそんなことを!!

 ほんと、ミチルは!!

「じゃあ‥『石を魔石に変えるチートなスキル(状態異常)』これの誕生秘話は? 」

 と、俺の怒りの矛先を変えるべく、またラルシュが話を逸らせる。

 ‥止めてくれるな! 今度こそはミチルを‥!!

 ‥まあ、まずラルシュの質問に答えるけど‥。

「ん。無人島に飛ばされた時に、火の魔石を作って火をだしたり、外国に転移させられた時、自国に帰る為の路銀稼ぎに使ったり。ホント良かったよ、土の属性あって。このスキル、重要なのは、土の変質であって作れる魔石と俺の属性は関係がない‥そうだな、一番チートなスキルなんだ」

 そうそう。思い出した。

 あっちの世界でも使えるかな。あっちで出すんだったら、パワーストーンって感じになるのかな。

「‥ヒジリ、あんた、‥マイペース過ぎない? ‥。それと、なんで、そこまでされてナツミと一緒に居るのよ‥」

 呆れ過ぎたミチルがオネエみたいな口調になっている。

 だけど、呆れたのは俺の方だ。全く‥。

 俺は大きくため息をつくと

「だって、ナツミしか傍に居てくれなかったから」

 俺にとっては当たり前の事実を、自信をもって、何のためらいもなく

 言い切った。



 直後にボソリとラルシュがつい、呟いた

「‥リバーシって病み過ぎてる‥」

 は、聞こえないふりをした。


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