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リバーシ!  作者: 大野 大樹
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12.二重のブレスレットの謎

 魔石はブレスレットの裏側についていた。

 多分、ナツミも気が付いてなかったと思う。だって、俺も気付かなかったから。

 いくら(魔道具に詳しくない)俺だって、あんな大きな魔石が表についていたら‥ナツミが用意出来るとは思えないから、絶対疑問に思うだろう。

 今までのちいさなクズ石ではない。相当高いだろう。とてもじゃないがナツミに‥子供に買えるようなものじゃない。

 ‥何処で手に入れての?

 って聞くだろうし、そもそも怪しくって、受け取らないと思う。腕に着けるどころではない。

 いくら幼馴染のナツミに

「お願い」

 って頼まれても‥。引くかな。‥怖いじゃん。なんか‥。

 そもそも、ナツミがそんな怪しい話に俺を巻き込むわけがない。

 ナツミはそんな子じゃない。俺が一番分かってる。

 そりゃあ、ナツミは俺の事‥ちょっとお小遣い稼ぎに考えてるところはあったけど‥。まさか、あんなことまでしないだろう。

 ミスリルのただのブレスレットだと思って、渡した。だけど、俺が倒れて‥初めて「これがただのブレスレットじゃない」って気付いた。

 そして、一か八か‥ナツミはブレスレットに付与魔法をかけたんだ。

 ミスリルみたいな頑丈な金属の加工。普通に出来るものでは無い。

 魔法‥付与魔法なら、できる。普通は、魔法を付与させるだけだろうが、‥ナツミには、モノを付与することも出来た。

 俺の腕とブレスレットのわずかな隙間に自分のブレスレットを挟み込んだ。そして、ミスリルが俺を完全に締め付けないようにしたんだ。

 魔石がいっぱいになったから外れる様に、ナツミが加工したんだ。

「ナツミは、俺とは違って、『魔法使い』だったんだ。俺は、「変質」は出来るが、何かを作り出す「魔法」は使えない。ナツミの「付与」のスキルも魔道具作製の能力も、全部「魔法」だ。だけど、その原動力である、魔力は俺に比べてずっと低かった。だから、あんな大掛かりな加工はきっと‥彼女の小さな体には‥」

 言ってて、胸が熱くなった。きっと‥小さなあの子の身体にはきつかっただろう。

「だのに‥俺を捕まえようとした誰かから守る為。俺の魔力が悪用されないため」

 胸がきゅーと痛くなった。

 ナツミ‥。

「何のために? 」

 まだ、ナツミを疑っているミチルには、ミチルを好意的に見るって考えが、鼻から無いらしい。

 しれっと白けた様な眼差しを俺に向けている。

「何のって、俺の為に決まってるじゃないか」

 ムカッときた俺は、ミチルを睨みつける。

 ‥こいつは、ホントに何なんだよ。損得勘定なしの友情なんて信用できないってか?! ‥可哀そうな奴だな!

 でも、

 ミチルの目は、‥見れない。

 何かを見透かされてるみたいで、居心地が悪い。

「冷静に考えてよ。ナツミは、君を利用していたんだよ? 」

 冷たい目のまま、ミツルが静かに俺に言い含める様に聞いた。

「利用って、そんな大げさな‥。あんなのは小さなことだ。‥ナツミはそんな大それたことしてなかっただろ。‥別問題だ‥」

 小さくため息をついて言ったが、俺は実際のところちょっと諦めていた。

 ‥こうナツミに対して凝り固まった考えしか持てないミチルには、何を言っても無駄だって。

 お互い不快になる話なら、止めた方がいい。

 ‥特に俺には、この話は‥居心地が悪い。

 ミチルの視線が‥さっきから、居心地が悪くて仕方が無い。

 ミチルの口調では、ミチルが冷たい目を向けているのはナツミだって言っている。

 だのに‥。

 さっきから、あの視線が俺に向けられている様に感じて止まない。

 俺は、俺の後ろめたさから、‥あの目が怖い。

 何の後ろめたさだろう。

 だけど、俺はその後ろめたさをミチルに気付かれたくなかった。

 だから、俺は目をそらした。

 もうこの話はやめよう、と俺が口を開く前に

「同じだよ。小さい悪事を続けていると感覚がマヒするってことは、普通にあり得る。それがいつか大きくなっていったとても、別に不思議はない。その上、その頃の君たちはほんの子供だった。子供に、そんな善悪の判断が出来るとは思えない」

 ミチルが言葉をかぶせてきた。

「君こそ、何で頑なに幼馴染をかばうんだ? 今必要なのは、真実を暴くことだ。思い出すまま、何の感情もなく当時の状況を‥考えるべきじゃないか? まず、君の幼馴染に対する気持ちは、他所よそに置いて置こう」

「真実‥? 」

「今のところの真実は‥。そうだな。ブレスレットを渡したのが君の幼馴染であることだ。分からないことは、彼女の本意‥だな。

 ああ、そうだこっちでのきっみのステータスを確認するんだったね」

「何で今? 」

「君の能力でブレスレットを外すことが出来たのか調べるためだろ? 」



児嶋コジマ ヒジリ

性別:男?

スキル:金属でなんでも止めるチートなスキル(状態異常)

    なんでも水に変えるチートなスキル(状態異常)

    石を魔石に変えるチートなスキル(状態異常)

属性: 土、水



「何か分かった? 」

「今の地点では何も‥ただ、君の能力の為に、君は守られてきたってことだな」

「どういうこと? 」

「悪の組織‥って仮に言うけど‥悪の組織が君を拘束するために外れない丈夫な金属を使ったせいで、その金属があらゆるものを君に「当てることなく」止めて来たってことだ。もしかしたら、攻撃を加えられたかもしれないけど、ブレスレットが全て跳ね返したってことになるね」


 あの時‥あっちの世界で俺を鑑定したみたいに、ミチルが俺に視線を合わせて来る。

 俺の目を真剣に見つめながら呟くミチルは傍から見たら俺に愛を囁きかけているように‥見えるかもしれない。ホントにヤバい‥早く止めないとミチルの評判ヤバいことになる‥。

 ちょっと焦るが‥勿論そんなこと言わない。

 ミチルは真剣なんだ。

 真剣な顔をしているミチルには、普段の様な穏やかで、ちょっと軽薄そうな感じはない。

 そんな顔を見ていると、これが、ミチルの「素」なのかな、って思える。

 普段の、軽薄そうな表情は、他人を欺くフェイクだって。

 ‥それ程、ミチルは誰も信用していない。

「そんなのも分かるんだね」

 俺もその中の一人。‥俺のことだってミチルは信じてはいないだろう。

 俺だって、ミチルのこと信じてはいない。

 だから、俺は『そんなこと』-ミチルが俺のことを信じていないってことーに勿論傷つくはずもない。だのに、何故か胸がちょっと痛かった。

「最上位の詮索のスキルを持ってるからね」

 ちらっと視線を上げて、いつもの軽薄な笑顔。

 外向きの、顔で答える。

「‥なんか、怖いね」

「別に、必要もないのに、詮索したりしないよ」

 俺の言葉に、ミチルはわざと拗ねた様な、「怒った様な」顔をする。

 ‥ごめん。分かってる。

 完全に、八つ当たりだ。

 自分の心がわかんなくなって、イライラして、ミチルに八つ当たりした。

 誰に対して、何に対してイライラしてるのかも分からない。‥それが余計にイライラする。

 だからって、ミチルは関係ない。だのに‥

 俺は、最低だ‥。

「ごめん‥分かってる」

 だから、‥余計に居心地悪くなって、謝った。

 人に悪く思われるのも、嫌。

 俺は、自分だけが可愛い最低な奴だ。

「魔法使い‥。君は‥幼馴染に憧れてたのかな。‥君のスキルは‥魔法に近い」

 ミチルは、俺の葛藤なんて知ったことないといった様子で、また自分の世界に入っていたようだ。

 ミチルの言葉に、俺はうなだれていた顔をあげる。

 憧れ?

「え? 」

 胸に、何かが引っかかった。

 憧れてた? 俺が、誰に?

「金属でなんでも止める‥これは、攻撃魔法を意識したものだよね? 攻撃魔法は、魔法が使えない者でも、訓練すれば使えるようになる。ほんの短い時間だけ‥魔法が使える様になる者もまれに出る。‥魔法っぽいスキルに、攻撃魔法‥。君は魔法に憧れて‥幼馴染に憧れてた‥のかな? 」

 魔法に憧れていたのは、‥確かだ。それには、‥違うって気はしない。

 でも、ナツミに憧れてた? 俺が?!

「違う。俺は、‥ナツミに憧れてなんていない! 俺は、ナツミより劣ってなんてない! 」

 違う。ってそれが伝えたかっただけだのに、‥口から出てしまった言葉は、自分もろくに覚えていない様な記憶を引きずり出して‥止まらない。

「ヒジリ? 」

 ミチルが俺を見ている。

 不思議そうな‥驚いたような顔。

 止めなきゃ、だのに

「俺は‥ナツミが‥魔法が使えるナツミが、妬ましかった‥俺の方が魔力だって強いのに‥ナツミばかり‥だから俺は‥」

 俺の口は止まらない。

 止まってくれない。

「‥ヒジリ‥」

 ミチルの心配そうな顔に胸がぐっと詰まった。

 ‥止まって‥!

 祈る様に、俺は口を噤んだ。

「俺は‥ナツミが‥! 」


 俺は、ナツミが

 憎かったんだ。

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