10.ここで出来て、あっちで出来ない事。
「面白み‥があるから来てるんんだ、こっち」
俺はちょっと、微妙な顔になってしまったが、それは、ラルシュも同じだった。
ラルシュはちょっと、「呆れた」って顔をしている。
ミチル相手だとラルシュは、結構こんな感じだ。
礼儀正しく、折り目正しい王子様じゃなくって、年相応って感じ。王子は俺と同じ歳位かな? だけどいつもの王子って「何歳だよ」って感じだもんね。
落着きはらった親世代の大人って感じ。‥顔は若々しいけど。
だからこっちの王子の方が自然でいい気がする。
自然なままの自分をだせる相手がいるってのは、いい。
きっと仲がいいのだろう。‥俺とナツミみたいに。
ナツミのことを思い出したら、ちょっと心臓がつきん、ってした。
皆に誤解されてるのが悲しい。誤解が解きたいけど、ナツミがどこでどうしているのか分からないから、会って話すことも出来ない。
俺のことを忘れてしまっていないだろうか。‥そんなことも思う。
「面白くない? だって、こっちに来るまで使い方すら知らなかったものが、使えるようになるって面白くない? 」
ミチルは、さも当たり前って顔して言った。
魔法‥。あっちでは使えないし、普通に生きてきただけじゃ、使い方すら分からない。
俺も、‥でもちょっと興味あるかも。
「‥そうかも」
いや、ちょっとだよ? 別に、魔法で何がしたいって感じじゃないし‥。
「ね」
でも、ミチルは、「いやいや、隠さなくてもいいから」って顔して、俺を見てる。
違うからな‥。
っていうか‥。
「いやいや、そうじゃなくて。あっちでも、ミチルは魔法使ってたよね? ってこと! 」
誤魔化されるとこだったあ!
ミチルはまた首をきょとんと傾げて、目をしばしばって二三回瞬きさせる。
なんだそれ、可愛いな。
ミチルってちょっと、猫みたい‥。
俺がつい、ガン見していると、ミチルは「ああ。そういうことか」と一人で納得して
「あれは、状態異常のスキルだよ」
何でもない風に言った。
「状態異常のスキル‥? 」
その言葉、さっき聞いたな。
俺の顔を見つめて、‥鑑定したときに言ってた。
「そう。スキル。魔法じゃないんだ」
「スキル? 」
ミチルが頷く。
「行動制御と、隔離空間作成・保持のスキル。あの時使ったのは「君と僕以外の人の行動の制御」と、隔離空間の作成・保持。つまり、人に聞かれないように、君と僕がいる空間を他の人から隔離したってわけ」
葉っぱは?
「葉っぱだろうが、「在る者」でくくれる。葉っぱの行動を制御しただけさ。寧ろ、人間だけ‥とか区別する方が面倒だよ」
‥え? それじゃ‥。
「時間止めたわけじゃないじゃん!! 」
噛みつかんばかりの勢いで俺がミチルの腕を掴んだら、くすくすとミチルが上品に笑った。
ほう、そんな笑い方もするんだな。
そして、ちょっと気取った顔をして
「ふふ。時間止めたとか言う方が、カッコいいじゃん? 分かりやすいし」
言った。
‥ドヤ顔、ウザいよ‥。
「‥まあ、それはどうでもいい。スキルって魔法とは違うの? 」
「スキルは、状態異常の固定。状態異常は、自分にとって都合のいい‥だけど、普通ではない、異常な状態に持っていく、ってこと。元からあるものの状態を変化させるだけで、何もないところから何かを作り出す魔法とは違うよ。
因みに、スキルはあっちとこっちとでちょっと効果とかが違うときがある。全く同じなのもあるしね。鑑定の上位スキルはこっちでもあっちでも使える。‥あっちでは別に使うことは無いけど」
‥確かに、あっちには魔法を使う人なんていないわけだから、鑑定スキルは関係なしだな。
「鑑定はあくまでもステータスの確認で個人情報を調べるものとは違うからね」
つまり、魔法の属性やらスキルは分かるけど、個人情報はその人の過去や性格どころか身長や体重のような重要度が少ない‥それこそ「測ればわかる」ことすら‥分からない。
「へえ‥」
魔法なら使えないけど、スキルは‥あっちでも、こっちでも使える。
さっき、俺の顔を見て、ミチルは言ってなかったか?
‥創造したスキルが何でも使えるとかそういった感じ。
何それ、無敵じゃん‥。
いや、確認確認。
「さっき言ってたのは、俺のここでの能力? 」
上目遣いで、恐る恐るミチルに尋ねると、ミチルが頷いた。
どうやら、合ってるらしい。
‥スキル‥。
「『金属でなんでも止めるチートなスキル』」
ぼそり、あの時咄嗟に思い出した記憶の断片を口にする。
「ん? ああ、思い出したの? ああそれは‥『接触点の状態異常』の応用で作ったスキルかな」
俺はそれは良く分からないから、続けて記憶の断片を口にした。
「『状態変化・液体』‥これは、そうそう『物質を水に変えるスキル』の液体版だ‥。もちろん、気体、個体も出来る。これは、確かけっこう練習した。崖から飛び降りなきゃいけない時に、『空気を水に変えたら、衝撃少なそう』って思ったんだ。たしか。で、水浸しになるから、気化して水分を離散させる。個体は‥滑って移動とか「する時に使えるかな」
「それは‥。そのまま『水の状態異常』だな」
「後は、『石を魔石に変えるチートなスキル』」
「‥『石の状態異常』だな。多分、それだったら、あっちでも使えるんじゃないかな。水は‥ちょっと大掛かりだから、無理かもだけど」
「‥あっちでの俺の能力は、あっちでしか見れない? 」
「見れないね」
‥気になる。
「‥ああ、夜明けだな」
「確かに‥そんな感じ俺もする」
「俺は、あっちに帰るけどあんたはどうするんだ? スリーピングビューティー」
「‥その呼び方止めろ」
「いや、ラルシュが「あんた」って呼ぶと失礼だって言うし、他人の婚約者を名前で呼ぶわけにいかないし、「お嬢さん」とか、俺が呼ぶの嫌だし」
「だから、だれが誰の婚約者か! 」
「あはは、ラルシュはいい奴だよ。前向きに考えてあげて? さて、俺は帰るね」
「俺も帰る! ‥父さんたちはどうする? 今日はここにいるんだったら、仕事の欠勤、俺が電話しておくけど」
「こっちには、また週末来よう。私たちも帰ろう」
父さんが母さんに確認を取り、母さんも頷く。
こっちの父さんたちは、やっぱり、違和感がない。
ここの俺の目は、父さんと同じ。明るい若草色の瞳。ここの俺の髪は、母さんと同じ。ハニーブラウン。
全く、別なものに変わったわけでもないんだろう。
だって、釣り目勝ちの俺の目は、母さんに似てる。真っ白な肌は、父さんだ。父さんの髪はちょっと堅そうだけど、母さんの髪はふわふわで、サラサラしてる。
今の俺の外見は、父さんと母さんの遺伝子の中で一番、『綺麗な』ものを選んだって感じ。
「じゃ、帰るか。手を」
ミチルが「行き」の時みたいに、父さんと母さんの手を握り、円陣を組むみたいな体勢になる。俺も、母さんと父さんの繋いだ手に、自分の手を重ねる。
「じゃあ、また夜に」
ラルシュの声が聞こえた。
‥あの人もリバーシなのかしらん。このまま、起きてたら、「オール」だよ? 徹夜とか、絶対、普通の人はしない方がいいって!
そんなことを思ってるうちに、母さんと父さんがミチルの緑の光に包まれ、俺が俺の黄色い光に包まれ消える。
「おはよう」
ミチルの身体が目を覚ます。
目覚めても、イケメンは違う。
寝乱れて、「だらしないな」感ゼロ。
でもこれって‥。
すごい‥デジャブ。
唯一昨日と違うのは、そこが、昨日みたいに、「見慣れないベッド」じゃなくって、‥俺のベッドだってこと。
現在、ベットの持ち主の俺は、ベッドの外で突っ立ってます。父さんと母さんの繋がれた手の上に手を置いて、だ。
ミチルは起き上って、母さんに「シャワーお借りしてもいいですか」って聞いてる。
昨日もあれ、あいつ言ってたな。朝シャン派か? イケメンの嗜みか?
俺のベッドで寝起きするミチル‥。
‥違和感しかないんだけど!!
何となく、会社行く前に布団カバー一式洗濯だな!
と、思う俺だった。




