1話「自由な教師」
ここ大工山高校の始業式は大規模………ではなく普通の学校と基本同じである。生徒も望ましい平凡な学校生活を過ごしている。いわゆるここは普通の学校と何ら変わりわないのだ。
そして今日もこの教室では
「君たーち。きゅおうからみなーさんの教師になる加賀谷先生が少し事情があって今日は来られないとかでぇ~今日は新任の紹介は無しとさせて―いただきます
」
この言葉が嘘だということは皆すでに分かっている。
いつも波崎先生は皆を盛り上げるために嘘をつく。皆変な口調は少し気になるがらしいが、まぁ肝心の時はそんな口調一切しないから良いだろうということだ。
「まぁ、というのは嘘です」
分かってるよと皆が思った。
意外かもしれないが、波崎先生は美形だ。奥さんもきれいでどちらとも良い青春を送っていたらしい。というのをいつも自慢している。生徒に自分の子どもの写真などを見せ、「可愛いだろ」と連呼してくるのはさすがにウザがられている。
「じゃあ今日の行動を説明していくぞ~」
10分間始業式の流れついての説明があった。しかし何時もどうりなので生徒たちのほとんどが流して聞いていた。
ある1人の生徒を除いて。
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かれこれ10分後のことである。
「1年性は素早く、体育館まで移動しなさい」
呼び出しの放送がこの1年6組にも流された。移動開始である。
「美智也」
そう九三谷は後ろにいる 琥泄亥 美智也に声をかけた。
「どうした」
「嫌な気配が感じるんだけど気のせいかな」
すると琥泄亥が笑って
「そうじゃねえか。俺は何も感じないし…」
途中で区切りが入る。
「どうした!顔が赤いぞ」
焦った顔ですぐに先生を呼ぼうとした。しかし九三谷はそれを止めた。
「大丈夫だ問題ない」
「そんなわけねぇだろ!!」
琥泄亥の怒声にみんなの注目が集まる。その後波崎先生が
「どうした琥泄亥?急に大声を出して」
語り掛ける。琥泄亥は怒りの入り混じった声でこう言った。
「九三谷の顔が赤いんです!それなのに保健室に行こうとしないで………!!」
「落ち着け琥泄亥。それと九三谷。確かにお前の顔は赤いぞ。もしものために保健室へ行っておけ」
波崎先生の言葉は優しくそれでいて口答えは許さない様な感じだった。
「はい」
渋々、九三谷は返事をし、保健室へと向かった。
保健室へ行くと、波崎先生が伝えてくれたのか寝る準備が施されていた。
「ほら寝なさい。波崎先生から聞いたわ。多分軽度の風邪ね。安静にしていたら楽になるわ」
優しい瞳と笑顔を持ちさらには美貌も兼ね備えている女性、保健室の先生 実御 葵だ 。性格も透き通っており、生徒思いで男子生徒からは人気。しかし本人は少し困っている。その理由を聞いても「秘密」ばかり。そのせいで余計男子生徒から目を向けられているのは知らずに。
「じゃあ熱計らせてもらうわ」
少し経ち、ピピピピッと温度計が鳴った。それを見た実御は驚愕。理由は明白、38度5分も熱があったからだ。普通の人なら倒れていてもおかしくないぐらいだ。
「今日は帰ったほうがよさそうね」
実御は心配そうにしていた。だからそんな先生を裏切れないこともあって、新任の先生を見ることは断念して大人しく帰宅することにした。
あっちなみに馬鹿じゃないの?と思われるかもしれないけれど無理やりにでも始業式に参加しようとしたのは、新任をどうしても見ておきたかったから。
と後に九三谷は語った。