2話
プロローグを一部改稿しました。
今後の展開的に、かなり重要なところなので、出来ればもう一度読んで欲しいです。
めんどくせぇよという方の為に簡単に説明すると、教室で騒いでいたアラタたちが周りから咎められない理由を追加しました。
具体的に言うと、マスコットキャラ的な立ち位置なことと、かつては三人ではなく四人であった事を知っているから。
翌日。アラタは、グギャ、グギャという鳴き声と複数の足音で目を覚ました。
暗い洞窟の中にも関わらず、視界がはっきりしているが、今はそんな事を気にしていられなかった。
迂闊だったと後悔する。
昨夜のアラタは、他の生物の事を完全に失念していた。
後悔もほどほどに、アラタは、見えるようになった洞窟の、昨日までは見えていなかった岩の陰に隠れ、息を殺し入り口を睨み据えた。
なんとなく、今どこに侵入者がいるのかわかるのは『気配感知』の効果か。
足音がだんだんと近づき、現れたのは、所謂ゴブリンであった。
低い身長に緑色の肌。尖った耳と大きな鷲鼻。
頭部に髪はなく、腰には粗末な襤褸をまいただけ。
そして、手には太い棍棒を携えていた。
それが三体。
ゴブリンたちもこの暗闇の中でしっかりと見えているようで、その足取りに迷いはない。
ついさっきまでアラタがいたあたりまで来ると、ゴブリンたちは何かを探し始めた。
それはまるで、そこにアラタがいた事を知っている風で。
その時、ゴブリンの内、最も背が高い個体がアラタの隠れている岩の方を向いた。
アラタは、咄嗟に隠れたが、その額を冷や汗が伝う。
気づかれたかもしれない。そう思いながらも、戦う準備をする。
準備と言っても武器になりそうな物はない。せいぜい、息を殺し奇襲に備えるだけだ。
足音が近づいてくる。アラタにとっては幸いな事に、その足音は一体分だけで、三体ともがこちらに来たわけではなさそうだ。
そしてその時が訪れる。
アラタは、ゴブリンの顔が見えた瞬間、勢いよく飛びがかかり、その両目に左手の指を刺し入れ、抉り出し、更に、右手と右膝を使い、全力で、棍棒を持ったゴブリンの左腕をへし折り、武器を取り上げた。
ゴブリンは大きく悲鳴をあげて蹲るが、そんなものは御構い無しとばかりに、奪った得物をその頭に全力で打ち付ける。
そこに容赦はない。
なぜなら、そうしなければ勝てないと思ったから。
幼い頃、祖父の教えで「命を奪う時は躊躇ったり、容赦したりするな」と言われていた事も理由の一つだった。
そして、それは正解だった。
この世界において、ゴブリンとはほぼ最弱に位置する魔物だ。しかし、アラタに近づいて来た個体は、成長し、レベルを上げた個体だった。いくら最弱と言っても、レベル一の人間よりは、レベルをいくつか上げた最弱の方がまだ強い。
アラタは、動かなくなったゴブリンだったモノを一瞥すると、あのジイさんやっぱりおかしいよな、などと考えながら残りのゴブリンの方を向いた。
残った二体のゴブリンは、油断なくアラタを見据える。
相対するアラタは、不思議と力が漲っていた。
しばらく睨み合っていると、ゴブリンたちは耐えきれなくなったのか、アラタに襲いかかった。
アラタもそれを撃退すべく、大きく踏み出し、片方のゴブリンを蹴りとばす。
もう一体には棍棒を投げつけ、牽制し、蹴りとばされ、立ち上がろうとしているゴブリンの頭を再度蹴り、同時に棍棒を奪う。
背後からの、棍棒を振りおろすゴブリンの一撃を前転してかわし、同時に地面の土を掴みその顔に投げつける。
アラタは、一時的に目が見えなくなったゴブリンを放置すると、倒れているゴブリンに棍棒を振り下ろした。
メキッという音がなり、ゴブリンの頭蓋骨は陥没。そして、それっきりそのゴブリンは沈黙した。
アラタは、最後の仲間を殺され、怒りの叫び声を上げるゴブリンに近づき、もう一度棍棒を投げつけた。
当然、相手も棍棒を持っているのだから、弾かれた。
だがそんな事は気にせず、一瞬で来た隙を突き、ゴブリンの股間を蹴り上げる。
グギャッと悲鳴を上げ崩れ落ちたゴブリンの頭を掴み、首をへし折った。
その時、戦闘中も二度感じた事だったが、ゴブリンの死体から、体になんらかのエネルギーが流れ込んだ。
アラタは、経験値というやつだろうか、と考えながらステータスを開いた。
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名前 宵月アラタ
種族 人間
職業 戦人
Lv.3(2↑)
HP 193/193(33↑)
MP 605/605(105↑)
STR 181(31↑)
VIT 145(25↑)
AGI 169(29↑)
DEX 121(21↑)
INT 133(23↑)
MND 157(27↑)
スキル
武術・時空魔法・気配感知・気配遮断・魔力感知・魔力操作・危険察知・理力感知(new)・身体強化・先読・威圧・暗視(new)・物理耐性・毒耐性・言語理解
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レベルが上がり、ステータスが上昇していた。
スキルも『理力感知』と『暗視』が増えていた。
アラタは、『暗視』のおかげで洞窟の中でもしっかりと見えていたのかと納得した。
『理力感知』に関してはよく分からないが、タイミングからして、おそらく経験値的なエネルギーの事だろうと考えた。
アラタは、それらについての考察は置いておいて、とりあえず外に出ることにした。
これ以上死臭の漂う洞窟内にいたくなかったのと、同時に、早く手を洗いたかったからだ。
足早に洞窟を出たアラタは、湖に向かった。
読んでくださってありがとうございます。
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