1話
毎日投稿⋯⋯ギリギリセーフです?
ピチョン。
ピチョン。
「ん、んぅ⋯⋯」
雫が額に落ち、暗い洞窟の中でアラタの呻き声が響く。
アラタは寝返りを打とうとして、地面の硬い感触に驚き、飛び起きた。
「ぬわぁあああ!?」
何も見えない、ここはどこだとパニックになりかけて、今までの経緯を思い出した。
白い空間で女神に会い、そこから黒い空間に落ち、女神と思しき女性の狂行を目の当たりにした。
無論、アレを鵜呑みにはしないと思いながらも、アラタの中で女神に対する信用はなくなり、疑いが芽生え始めていた。
落ち着いたところで状況を確認しようとしたが、真っ暗で如何ともしがたい。
アラタはふと、まだステータスを確認していなかった事を思い出した。
たしか、“ステータス”と念じればいいのだったかと、念じると
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名前 宵月アラタ
種族 人間
職業 戦人
Lv.1
HP 160/160
MP 500/500
STR 150
VIT 120
AGI 140
DEX 100
INT 110
MND 130
スキル
武術・時空魔法・気配感知・気配遮断・魔力感知・魔力操作・危険察知・身体強化・先読・威圧・物理耐性・毒耐性・言語理解
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「お、おう。なんだこれ⋯⋯?」
ぼんやりと青白い光を放ち表示されたそれは、光っているはずだというのに周りが見えるようにはならない、不思議なものだった。
視界というレイヤーの上にステータスが書かれたレイヤーが乗っかっているような感じだった。
名前、種族はそのまま。
職業に関しては『戦人』とはなんぞやと。
RPGなんかでよくある『戦士』系かと思いはしたが、ステータスを見て、それはないと確信した。
だって、だって、MP500なのよ!?と少し狼狽気味のアラタさん。
スキルに関しては割と身に覚えがあるものだった。
幼い頃から祖父に鍛えられていたアラタは、武術の心得があった。
身体強化は恐らく祖父が「“気”を感じろ! そして全身に巡らせぃ!」とか言っていたあれだろう。
どこでそんなものを習得したのかは謎だったが、あのジジイならさもありなん。
アラタは、かなり変なじいさんだったしなぁなどと考えながら、全く身に覚えがないスキルから現実逃避していた。
え、時空魔法って何!? 魔法なんて使えませんけど!?とパニクるアラタ。
魔力操作はまだわかる。“気”だと思っていたものが魔力だったのだろう。
けどね、時空って何さ!? 時空って、そういう凄そうな魔法は主人公が使うべき魔法でしょう!?
(注)彼が主人公です。
「⋯⋯はっ! まさか俺が主人公!? ⋯⋯いや、ないな。 うん、ない。」
(注)彼が主人公です。
ふざけていたアラタだったが、飽きて、動き始めた。
その場で立ち上がって、腕を前後左右と上に動かし空間の広さを確認し、今度は片足をゆっくりと足一個分ほど左にずらし、地面を踏みしめる。
それを繰り返すこと約五分。何度も転びそうになったが、アラタの左手はついに硬い感触を捉えた。
慎重に硬い何かに両手を当て、感触を確かめる。
壁だろうと適当にあたりをつけたアラタは、それに沿って、慎重に歩き始めた。
しばらく壁に沿って歩いていると、微風がアラタの頬を撫でた。
少なくとも出口がある事を確信できたアラタは、意気揚々と進んでいく。
ようやく光が見えてくると、アラタは駆け出した。
はたして、その先にあったものは──暗い色合いの木々が生い茂る森であった。
それを見たアラタは、少なくとも食料には困らなくてすみそうだと、安堵のため息を零した。
アラタは、森ならば木の実など、食べれるものが沢山あるだろう。仮に毒があっても『毒耐性』のスキルを持つため、さほど問題にはならないだろうと考えていた。
ちなみに、この『毒耐性』だが、アラタは、恐らく雅に食わされた料理(笑)というか劇物のせいで習得したものだと考えている。
ただ一つだけ懸念があった。それは水だ。
生命が生きていく上で必要不可欠な水。今のアラタには、それを調達するすべがなかった。
状況を確認したアラタの行動は速かった。
まず、持ち物の確認から始めた。
・ティッシュ
・ハンカチ
⋯⋯どないせいっちゅうねんと、思わず関西弁になってしまった。
アラタは、気を取り直して洞窟の周辺の探索を始めた。
出入口の正面には森が広がるばかりだが、いくつか食べられそうな木の実があった。
出入口から見て左側。十分ほどまっすぐ歩くと、開けた場所に出た。背の低い草が群生していて、獣が入った様な痕跡は一切なかった。
そして、右側。ありがたい事に、大きな湖があった。しかも、非常に澄んだ綺麗な水だった。
問題があるとすれば森の動物たちの水場になっていそうな事くらいだが、時間帯をうまく調整すれば問題ないだろう。
なお、後ろ側、つまり洞窟側は、断崖絶壁がそびえ立ち、とてもではないが今のアラタには登れそうになかった。
周辺の探索が終わると日が沈み始めた。
アラタは、探索のついでに集めた木の実を齧りながら洞窟に向かい、ぎりぎり光が届かないところまで行くと、壁に背中を預けて座り、眠りについた。
(さて、明日はステータス周りの確認かな⋯⋯)