表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ビバ☆就活体験記  作者: マナブハジメ
最終章 「内々定と、就職活動と、百パーセントジュース」
80/92

四月五日  田中麻美

 四月五日  田中麻美


 武畑薬品の二次面接受けてきました。今度は個人面接だったよ。自己PRと学生時代の話から始まって、志望動機、MRについてどれくらい理解してるかっていう感じの質問まで、短くいろいろ聞かれました。相変わらず雰囲気はよかったです。優しい雰囲気で、やっぱり医薬品っていう人の命にかかわるものを扱っている人たちって素敵だなって思っちゃいました。印象がすごくいいの。もっと早くから、MRっていう仕事を知っていればよかったなあって思うくらいです。広告に目線が行き過ぎてました。後輩のみなさんは、こういう失敗はしないようにしてください。私はとにかく、一つ一つの面接を丁寧にこなしていくだけです。ここは連絡来るのが早いから、今日中に連絡こないかなあって思ってます。じゃあね。バイバイ。


(追加)  谷本直毅


 テストは結局行かんかった。昨日あれから電話かかってきて、九紅の面接がどっかぶりで入ったからそっち優先しました。本命たる商社の方にわざわざ日程変えてもらうのもあれかなと思って。まあ、そうやって言い訳作って本日放送とはおさらばしたわけだ。もったいなかったかなって思いもあるが、もう済んだことだから仕方ない。切り替え切り替え。んで、九紅の二次面接は二対一の個人面接で、今度はちゃんと蛍光灯ついてた。(笑) 質問もESの内容ばっかりで、ちょっと派生して、「環境問題について日本はどういう戦略を取るべきだと思う?」という質問がやや難といったところでしょうか。俺は自動車産業なんかを例にとって話しました。たぶん正解なんてないだろうから、なんか話せればそれでよかったはず。今回の面接はこんな感じですぐに終わってしまいました。

お次は双目の二次面接。相変わらず面接官一人、学生二人の集団面接だった。内容も特筆すべきものは何もない。ただ最後に、一緒に面接受けてた学生が面接官に、「今日の私はどうだったでしょうか」なんて逆質問をして、その評価を俺に振られたのは正直困った。だってその学生あんましよくなかったんだもん。話が長くて何言いたいのか分からんタイプ。仕方ないから正直に、「もっと端的に話せば伝わりやすくなると思います」って言ってやったさ。そしたら面接官も俺に同感だと言ってくれた。雰囲気良かったから、たぶん通過してるだろう。うん。順調順調。

そういえば、落ちたと思ってた佐藤忠から昨日電話があって、明日面接入りました。いやあ。何が起こるか分からんね就活は。いい意味でのサプライズが続く事を願うよ俺は。ほいじゃ。お疲れでした。


(追加)  山井里央


 出たよー。合格もらったよ~。ヤバイ! ヤバイ! 超嬉しい! 青色銀行から合格いただきました。もう、なんにも言えないって感じ。言葉じゃいい表せないよこの感動。もう、最高です。うん。ホント嬉しい。これで一つ区切りがついたよぉ。内定は、就活辞めますって言ってからじゃないと出ないんだって。一応また明日電話することになってるの。もちろん、うちは就活辞めましたって言うつもりだよ。うふふ。でもホントは辞めないのぉ~。

うち、今日、資生紡のテスト&面接受けてきたんだぁ。資生紡だけは受けたかったの。だから、青色銀行には内緒でここだけは受け続けます。テストは正直難しかったです。時事とかいろんな科目が一つのテストになってて、時間配分が難しかったの。得意なはずの英語にちょっとしか時間使えなかったのは、ミスったなあって感じです。でもそこそこできました。面接は集団面接で、お菓子とか食べながら出来るアットホームな感じだったよ。もちろんお菓子なんて食べれなかったけどぉ。(笑) 最初から最後までいい印象で終えることができました。お土産に日焼け止めまでもらっちゃったぁ。紫外線対策はバッチシです。

里央はそんな感じだよー。ひとまず泣かなくて済みそう。でも、資生紡落ちたらうるうるきちゃうかもだけど、その時はなぐさめてくれたらうれしいなぁ。でわ、このへんで。またねー。


(追加)  二条院


 山井さん。おめでとう。そして引き続き頑張ってくだされ。貴女なら必ず良き結果を得られることでしょう。中林の喜ぶ顔が目に浮かぶ。

俺の方はというと、今日で就活終しまいです。俺も合格もらいました。二菱銀行で働くことにする。この際だから言ってしまうと、俺はここが最後の砦。三月くらいからちょくちょくリクルーターたるおしゃべりさんたちを受けとったのですが、いかんせん相性の良し悪し。俺の指先からするすると離れていってしまうから内心気が気じゃなかったです。まあ、受かったから何でもいいしどうでもいい。過去の産物は忘れるに限る。焼却忘却。消し去れどんどん。

しかし俺は思います。合格という言葉の響きの何と素晴らしきことか。嬉しさとともに自信がみなぎります。相性さえよければポンポン内定もらえると確信しとった俺でさえ、合格と言われるとやはり嬉しきかな幸せ。俺という存在を認めてもらえたみたいで、明日からさらに胸張って渡る世間を闊歩できそう。視界が晴れやかで空も飛べよう。箱の世界から脱却できるやもしれません。いや、せんといかんのです。いやいや、脱却したいのです。

自分から行動せんといかんと知りつつも未だ俺は動けずにおる。相も変わらずタイミングを待っておる。嗚呼、嘆くべきかな、受動態。恥ずるべきかな、ただ待ち人。でも、だが、しかし。まさしく今がタイミング。間違うはずなきタイミング。ベストをつけてもいいほどのタイミングを前にして俺は思うのだ。今日だけは自己中心的世界に浸ろうと。バランスばかりを気にする己をかなぐり捨てようと。美しき自然も時には残酷。されば世界のバランサーたるこの俺も、時にはエゴに走ってもよかろうぞ。エゴイスティックのステッキ振り回してもよきはずよきはず。だから言います。言うのだ、言うのだ。聞いてください読んでください。

あ。部外者は読まんでよいからすっ飛ばせ。リニアの如くすっ飛ばせ。言うぞ。言う。言うって決めた!

俺のタイプは優しき人です。髪は肩くらいまでの黒い人が好みです。化粧も薄い方がよくて、ミニスカートなんかはどこを見ればいいか分からんので、あんましはかない人が好感です。でもスカートははいてほしい。肌は白くなくても構いません。健康的な人が良いのです。親から授かった身体を大切にする人がタイプなので、ピアスなんかはあけてほしくありません。でもネックレスは気にしません。指輪なんかも、いつかおそろいのをしてみたいと思っとるくらいです。コンタクトは、あんなもん直接目に入れるのは危なそうだから、そんな危ない人よりメガネしてる人の方がタイプです。もちろん視力がいい人は言うに及びません。繰り返すようですが、健康体が一番一番。爪はほどほどで、できれば深爪くらいがタイプです。お米を研ぐことなんかを考えると、お化けのように爪長き人や、けばけばしき色つやしとる指先さんも、エヌジーです。目なんかは大きければ大きいほどいいです。視界が広い分、世間も広そうだ。二重か一重かはどっちでもいいです。間を取って奥二重がタイプということにしときましょう。困った時は真ん中です。声は高い方がいいです。その方が女性らしいし、聞いていて癒されます。毎日会話するのだから、声というのは非常に大切。手は小さめの人がタイプです。手をつないだ時に包みこめてしまうくらいなら言うことありません。守ってあげたいと自然に思わせることは大事です。平手を食らうときも面積少なくて済みますし、一石二鳥。足のサイズは気にしません。ただ、小さすぎていつもふらついているような人はちょっと困ります。でも、肩貸してあげられるから、そこまで嫌でもありません。背は気にしませんが、俺より高いと俺の方が気にします。だから、俺より低い方がいいのでしょう。できれば同じくらいが最高です。常に同じ目線でいることは大切だと思うからです。隣を見た時に目線が合うのは素敵です。俺はそんなデートを夢見てます。

俺の夢の中ではいつも隣で歩く人は決まっとります。その人はひどく頑張り屋さんで、イノシシみたいに猪突猛進。危なっかしいけど、いつまでも見とりたい感じのホワホワした人です。

俺は先月、その人にチョコをプレゼントしました。後日、おいしかったよ、と言ってもらうこともできました。ひどく幸せでした。

俺は今まで異性を好きになったことがありません。これはやや大げさな言い方ですが、大枠は間違っておりません。なにせ、俺は、異性に相手にされることがなかったからです。学校で席隣になっても空気のように扱われるし、話しづらい雰囲気らしく、まれに交わされる会話もあまり長くは続きません。

だから異性とは映像のようであったし、学校とは硝子ケースのようなものだと思っとりました。全部が鑑賞で感傷なのです。だから恋愛なんぞは妄言で、人類の造語であると思っておりました。空は青いし、青色は青色です。然れども、俺にとって、恋愛は、レンアイで、単なる文字列。俺の中で生まれるはずなき言葉と思っておったのです。

そんな俺は、大学三年の春、とあるゼミに入りました。金ゼミです。このゼミはとにかくやかましい輩が多く、俺は入るべきゼミを間違えたと思い、やめるべきかと悩んでおりました。かくたる理由で閉口しておる俺に向かって、野蛮人代表テコンドー馬鹿が、「何かしゃべれよそこのお前」なんぞと馬鹿でかい声まき散らしながら指さすので、こんにちは、と挨拶してみたものの、「何しゃべっとるか聞こえんわウジウジ!」などという罵声が返ってくるばかり。あの頃を思えばよく今まであやつとの関係が続いておるもんだと感心してしまいます。

そう。三木森との共存の道しるべを与えてくれたのは、あなたでしたね。あなただったのです。あなたはあの時、俺に何て言ってくれたか覚えておりますか?

「勝手に自分のペースに巻き込んじゃダメだよ。三木森君は三木森君、二条院君は二条院君のペースがあるんだから、お互いのペースを大事にしようよ」

という言葉。今でも忘れておりません。一生忘れんことでしょう。されども俺は今までずっとその言葉に甘えておったような気がします。俺は強くない。本質的たるところで強くなかったのです。己のペースという、優しくて、心地よき言葉に、甘えておったのです。だからこれほど時間かかってしまいましたし、このようなタイミングになってしまいました。誠に申し訳ござりません。それでもやっぱり俺は変わりたい。今の俺なら変われる気がする。だから言います。最後に言います。

 あさみさん、好きです。出会ったその日から好きでした。ずっと好きでしたし、ずっと好きです。貴女がよろしければ、付き合って下さい。よろしくお願いいたします。

 以上です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ