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ビバ☆就活体験記  作者: マナブハジメ
第三章「単位取得と、エントリーシートと、チョコレート」
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一月二二日  田中麻美

 一月二二日  田中麻美


 二条院君、今日はお疲れさまでした。そして、みんなー。模範解答できたよ~。

 やっぱり二条院君はすごいです。改めて、頭いいなあ、って感心してしまいました。ドリンクバーを飲みながら勉強してたんだけど、私はもう数式が出てくるとダメダメです。難しい数式を使う問題は全部二条院君が解いてくれました。ちなみに私は論述担当です。ノートだけはばっちりとってあるので大丈夫です。(笑)

関係ないけど、私もブラックでコーヒーが飲める大人な女性になりたいと思いました。なんだか二条院君、雰囲気出てたよ。さながらオフィスって感じでした。まずはコーヒーを飲めるようになるところから始めたいと思います。(笑)

 そして、途中から笠井君も合流しました。たまたま、お昼ご飯食べに来てたみたい。あんなにおいしそうにカレーうどん食べる人、初めて見ました。あれで服汚さないなんて、ほとんど奇跡です。笠井君って奇跡です。それにしても、久しぶりに笠井君とお話ししたなっていう感じです。ゼミにも顔出したり出さなかったりっていうのが続いてたから、心配してたんだよ。本当に、笠井君の演劇論を聞くのは久しぶりでした。すっごく楽しかったです。

笠井君は、まだ少し進路のことで悩んでるみたいだけど、ゆっくり考えた方がいいと思います。就活本番までそんなに時間があるわけじゃないけど、焦っちゃ駄目だと思います。後悔しないためにも、ゆっくり、ゆっくりです。私もそうなんだけど、こんなに自分自身と対話してる時間って、今までの人生の中で初めてだと思うの。だから、この時間は大切にするべきです。笠井君が納得のいく進路が見つかることを祈ってます。それじゃあね。バイバイ。


(追加)  二条院


 あさみさん。お疲れさまでした。あさみさんの端的でロジカルな論述に惚れぼれ致しましたぞ。俺は小さい頃から算数が得意で、その流れが今でも続いておるというだけの話です。だから、金ゼミの中で俺が一番数字に明るいと言っても、それは全然大したことではないのです。

それに比べて麻美さんのロジカルシンキングの何と美しいこと。論理で整列させられた文字列は、もはや神秘の対象です。あのような美しき論述を目にした教授どもは、一秒と待たずに満点の成績を献ずることでしょう。そもそも、字が綺麗です。字は書き手の心を映し出す鏡だと聞いたことがあったりなかったりするのですが、麻美さんの美しき文字はまさしくそれですな。清らかな心がせらせらと俺の前で流れておりました。そんな美しき文字を書く手を休めてはオレンジジュースを飲まれる麻美さんの姿はまるで絵画。ルーヴルが全力で探し求めているのではないかと思う程のひと時でした。ちなみに俺がいささかキョロキョロしておったのは、ルーヴルの手先がおるのではないかと警戒しておったがゆえですのであしからず。

ブラックの話がありましたが、べつにコーヒーを飲む必要などないのです。俺は香りと苦みにうるさい男ですからブラックイズベストなだけで、学食がオフィスに感じられたのも、俺が偶然着ていたジャケットがそれっぽかっただけでしょう。まあ、俺はよく落ち着いていると周りから言われますが、それは性格なので仕方ありません。つまるところ、あさみさんの明るい性格からいえばオレンジイズベスト。これは不変の真理で絵画の奇跡!

 ところで笠井。お前はつくづくどろっとした黄色が似合う男だ。なんだ、あれか、貴公は邪魔しに来たのか。返せ、俺の集中力。返せ、あのひと時。タイムイズマネーで、マネーイズインポータントだ。要するに、タイムイズインポータント。

そんな大切なひと時を、貴公の大根論議で花を咲かせるとは何事か! 発声の極意とか、指先の角度とか、そんな細かいこたあどうでもよいよい。なこと気にする暇あるなら己の毛先を気にしろくるくる。

そもそも舞台やりたいなら、その道に進めばいいだけの話。「将来のこと考えると―――」とか、「俺の演技力で―――」なんて話するなら辞めちまえ辞めちまえ。所詮お前は、大根、大根。漬けられるか、おろされるか、味噌汁なんだから諦めろ。

「でもやっぱり―――」とか、ウジウジ方向転換するなら余所へ行け。麻美さんの素敵オレンジに付け込んで頭撫でてもらえるなんぞと思うでない。大根なら大根らしく真っ直ぐ生きてみろ。うん。いいこと言った、いいこと言った。ここらで打ち止めだ。

 なにはともあれ、俺の数字とあさみさんのロジカルシンキングが詰まった過去問解答は、会心の出来だから誰も単位を落とすまい。いや、三木森は例外か。むしろ特例。ま、頑張れ。

以上。


(追加)  山井里央


 麻美、二条院君、ありがと~。まだ見てないけど、二人が作った解答なら間違いないよぅ。メッチャ感謝です。お礼に、あさってのゼミにお菓子作ってくね。堀先輩にコーヒーゼリーの作り方教えてもらったんだぁ~。こんなことしかできないけど、食べてくれたらうれしいです。麻美にはオレンジゼリー作ってあげるから大丈夫だぞ。応用もできちゃう里央でしたぁ~。

 じゃあ、またねー。


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