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ビバ☆就活体験記  作者: マナブハジメ
第二章 『自己分析と、他己分析と、ジャイアンムービー』
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謝罪文  三木森

 謝罪文  三木森


 みんなのおもちゃ的げっ歯類、ミッキーだよ~。

よく食べて、よく飲んで、よく投げたパーティーお疲れ~。メリクリって最高だな。楽しい、楽しい、メリクリメリクリ。さあ皆さんもご一緒に。楽しい、楽しい、メリクリメリクリ。

 俺としては場所が場所だからそんなに雰囲気出ないと思ってたんだよ。クリスマスチックなね。ところがどっこい、教室入った瞬間からイルミネイションがチカチカ光ってたもんだから一気にテンション上がっちゃいました。お姉さま方の気合いの入れようには脱帽です。常に全力投球っていう姿勢は見習わにゃいかんね。

だから、俺の全力ボイスのジングルベルは誰にも責められたりしないはず。だいたい、大学生にもなって、「みんなで歌いましょう」なんて展開なかなかないよな。事前に歌詞カード作ってきた堀先輩の念の入れようには恐れ入りました。一番真面目に歌ってたのはキム先生でしたね。はっきり言って、和みます。

 歌が終わった後はパーティータイムでした。手作りケーキ、うまかったです。俺はカボチャケーキばかり食ってましたが、皆さんはいかがだったでしょうか。なんか、ムースのもあったらしいんだが、俺、食べてません。洋平あたりが犯人でしょうか。なんか、ムースっぽい胃袋してそうだもん。これだからお洒落さんは困っちゃうよね。どうせ、里央と、「あ~ん」とかやってたんだろ? いい加減にしろよ~。この色男!

俺は角先輩と二人で、お前らが別れた後の予定を立てていたんだぞ。さぶそうに鼻水垂らしながら学内歩いてるいたいけな純情男子どもに、里央とデートさせてやるという殺し文句で仲介手数料五百円を頂いて、こちらの懐を温めようという魂胆だ。このパッとしない大学を一変させる一大センセーショナル事業になるはずだったのに。

ここでツンデレ的展開を見せると、まあ、仲直りできたことはよかったんじゃないか。べっ、べつに、喜んでなんかないんだからネ。どんな手使ったか知らないけど、里央が笑ってたからまあいいさ。里央からニコニコスマイルプライスレスを奪った日には、学内中から石ころ投げられるから気を付けろよ。だいたい、お前らが別れる別れないの話をしだした時に、相談役として俺を大抜擢するのはやめてくれ。特に里央。居酒屋のおじちゃんは、俺が里央を泣かせたんだと思ってるぞ。絶対に誤解してる。なんか視線が軽蔑してたもん。かわいい子泣かせんじゃねえ、っていう目してたもん。

ところで、里央。俺のアドバイスは役に立ったのでしょうか? 男はね、普段見ない彼女の姿を見ると、危機感的電気信号が走って、「もっと愛してやらねば」ってな具合になるわけよ。平たく言えばギャップです。里央だって、普段いじめっ子なやつが、急に正義感あふれる頼れるにいちゃんになったら、ホロリとしてしまうだろ。それと同じ。世間じゃそれを「ジャイアンムービー」というのです。覚えておきましょう。

 お腹膨れてお酒も飲んで、いい感じになってきたところでプレゼント交換でした。なんだかんだで、そんなにめちゃくちゃなものを持ってきた人はいなかったね。どのプレゼントが当たってもうれしいと感じられるレベルだったと思います。

チョコレート温泉のモトとか、へんてこな温泉のモト詰め合わせセット欲しかったな~。キム先生がゲットしてたもんな~。強奪できないよな~。俺が持ってきたプロテイン(バナナ味)は角先輩の手に渡り、これ以上ないベストなマッチングとなっていたのではないでしょうか。

ちなみに、俺が手にしたのはキム先生からのプレゼントでした。キム先生ほど空気の読める教授はいないでしょう。俺がもらったプレゼントは、「四単位引換券」です。単位だよ単位。キム先生の授業の単位。マーケティングの授業だっけ、キム先生が教えてるのって。俺、一回も出てないから分かりません。まあ、単位もらえるんだから何でもいいか。俺の辞書には、疑う、という言葉は載ってませんから、よろしくお願いします。

その後は、まったりしながら水風船でしたね。

 俺は思うのだよ。プールって楽しいじゃん。海って楽しいじゃん。温泉って最高じゃん。ようするに俺たちは、身体の中からも、外からも、水分を求めているわけだ。俺たちは生まれながらにして、水、大好きなの。だから、水風船投げ合うのも大好きかなと思って、たんまり用意してきたのです。やっぱ濡れるとテンション上がるね。一回服濡れると、後はどーでもよくなっちゃうもん。教室べちゃべちゃになって掃除大変だったけど、明日からは冬休みです。キム先生は、「僕は何も見ていません」 と言い張ってらっしゃったが、次に学校来る時までには教室も乾いていることでしょう。ドライな世の中に少しだけ感謝です。

水風船の的と化していた二条院は、風邪などひいていないでしょうか。メイドさんがべたべたになる姿が、少しも卑猥に見えなかったのは、お前の貢献によるところが非常に大きいと思う。あらためて、土台が大切なのだと思い知りました。日々精進です。

ちなみに、馬鹿は風邪をひかないそうだからきっと大丈夫です。気になるようなら、日頃から乾布摩擦しておきましょう。

 ところで、あさみん。あさみんも楽しそうにしていてよかったです。この前のこともあったから、怖い思いをさせて申し訳なかったなと思ってたんだけど、全然気にしてないみたいだね。

あの時あいつらが怒っていた理由は、いまいちよくわかりません。俺たちが到着した時からカンカンだったもんね。煙草の吸殻も山のように積まれてたし、貧乏揺すりか地震か分からないくらいのブルブル具合だったし。

向こうが怒鳴ってきたから、俺も声張っちゃった。俺はタンクトップのやつらのワキが臭いって言っただけなんだ。そしたらあいつら怒りだして、「全然臭くないね。エイトフォーしたもんね」とか言ってきたから、「無臭にしろよ似非マッチョ」って言い返したの。学生証どうのこうのっていう話は一回も出ませんでした。

ただあいつらは、あさみんを呼び出してエッチな動画を撮りたかっただけみたい。ありえないよね。で、ふざけんな、っていう話になって、向こうが小突いてきて、四対一はちょっとまずいかなと思ったから、テコンドーを炸裂させてしまったわけです。

なんか、テコンドーが汚れた気がするー。あんな狭い空間に変態が四人もいたわけだ。思い出すだけでも気味が悪いね。だから、忘れよう。全部忘れよう。二条院の予想通りの戦力ぶりも忘れよう。殴られて、のびてただけなのも、忘れよう。

 あさみんの質問に答えると、二年の時にフラれて以来、彼女はいません。今はテコンドーが彼女といったところでしょうか。フラれた理由もテコンドーだし。まあ、俺の人生の大半はテコンドーでできてるから仕方ありません。そんなところです。

ああ。ちなみに、俺がこの意味不明な謝罪文を書いているのは、二条院がどうしても書けと言ってうるさいからです。こいつのしつこさは、何とかホイホイの粘着テープばりのしつこさですから、俺が折れました。メイドさんを着せたのを怒っているのかと思ったら、どうやらそうではないようです。謝罪の対象も、あさみん個人に向けてせよとのことなので、あさみんに対して謝ります。それでは謝罪します。この前の件についてのことです。

 集合時間に、二時間も遅刻してごめんなさい。お昼寝が過ぎました。反省してます。

 謝罪文お終い。


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