十二月一八日 中林洋平
十二月一八日 中林洋平
なんて言ったらいいのか分かりません。学校にも来てないみたいだし、電話にも出てくれないし、家にもいないから、ここに書くね。里央はきっと、読んでくれているよね。
忙しいのを理由にして、里央に会えなかったのは事実だし、あさみんの心配ばっかりしてたのも事実です。それが里央を苦しめていたのも薄々気付いていたような気がします。それくらいのことなら、なんてことないのだろうと考えていた自分がここにいます。里央が俺の言葉を待っているのもなんとなく気付いてました。つらいんだろうなって思って見てたんだよ。でも俺、何も言ってあげられませんでした。どうして何も言わなかったのか。その答えはすごく簡単なことで、ただ単に、俺が卑怯な人間だったから。
里央が何かに悩んでる時は、いつも俺のことを頼りにしてくれて、俺はそのことがすごくうれしかったんだ。だから、すぐに里央の要求に応えたら、そんな俺にとっての嬉しい時間がどこかに行っちゃう。そう思っていたんだ。それが、俺が里央のことを見て見ないふりしてた理由なんだよ。俺ってすごく卑怯なやつなんだ。
デートの誘いを俺からしなかったのも、そうやって連絡しなければ、里央の方から誘ってくれるだろうと思っていたからです。たぶん、俺、里央に甘えてたんだよ。だから自分からは何もしなかったんだ。里央が何かしらしてくれるだろうって期待して。毎日忙しくしてたのだって、その方がかっこいいだろうって思っていたからだと思います。サークルやバイトは大切にしたいけど、飲み会の回数は減らせるものだったと思うもん。もっと時間をうまく使えることができたはずです。今更こんなこと言っても、もう遅いのかな。
色々言いたいことはあるんだ。でも、俺、うまいこと言えません。だって、俺の言葉や態度はいちいち嘘をつくから。今更何を言っても嘘っぽく聞こえるだろうし、今さら何を説明したって里央は納得してくれないと思う。だから、いや、でもね、これだけは覚えておいてほしいんだ。どうしても、覚えておいてほしいんだ。俺はね、里央の隣じゃなきゃいやなんだよ。
俺、うまいこと説明できないし、やさしい嘘もつけないし、プレゼント間違えるし、いざという時は態度も素っ気なくなっちゃうし、ホント、ろくでもない男です。でもね、これだけは言えるし、これだけはちゃんと行動に移せていたと思う。だって、これは俺の本当だから。里央の隣にいたいっていうのは、俺の本音だから。
実際に里央の前にいる俺は、何を言うか分からないし、何をしでかすか分かりません。それは里央を困らせてしまうことかもしれないし、混乱させてしまうことかもしれません。でも、それでも俺は、里央の隣にいるはずだから。きっと里央の隣にいるから。だから、その時は、気付いてくれたらうれしいです。覚えていてくれたらうれしいです。里央の隣にいるっていう事実が、その事実だけは、俺の本音だから。
最後に。
気付いてたよ。里央が泣いてたこと。だって俺、里央の隣にいたんだもん。




