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ビバ☆就活体験記  作者: マナブハジメ
第二章 『自己分析と、他己分析と、ジャイアンムービー』
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十二月一一日  谷本直毅

 十二月一一日  谷本直毅


 地中深くに潜り込むことを生きがいにしておる大根を引っこ抜いて、日経の就活イベントに行ってきた。ドーム球場で行われたイベントだったんだが、人の多さにびっくらこいたぞ。学内セミナーしか行ったことのない俺にしてみたら、就活やってる学生ってこんなにいるのかとちょっとクラクラしてしまった。たった一ドームであれだけの数がいるわけだ。日本全国で考えると途方もない数だなこりゃ。なんだか就活の恐ろしさを見たような気がする。

 さて、俺のお目当ては天通でした。芸術的な無造作ヘアーをほどこした大根を抱えながら人事さんの話を聞いていたわけだが、やっぱし広告業界も面白そうですな。コミュニケーションをデザインするというとこが無形でなんだか魅力的。技術力ではなくライフスタイルを提供提案していこうという姿勢もなんだかスタイリッシュだ。あとは、名刺の裏の色が自由に選べるとか言ってたよ。一〇〇色の選択肢があるそうな。どれにしようか迷っちゃう。求める人物像は、「個人はもちろん、チームでの作業も楽しめる人」「地道な作業にも情熱を持てる人」「多少の失敗では諦めない人」だそうだ。広告業界ではチームプレーもかなり大事だということを改めて感じました。チームプレーの経験も語れるようにしとかんと。

 広告と商社を就活の軸に据えようと決意した俺の隣では、大根が、大根面して、大根垂らしながら、ピーナッツを食ってました。ピーナッツはピーナッツだけにしとけよ馬鹿野郎。飲食禁止という張り紙を目にしてないからっていい度胸だ。俺はそんなピーナッツ大根に感服して終始他人のふりに徹していたよ。それでも芸術的ピーナッツがあんまり目立っておらんかったのは、やつのベクトルがマントルに直進しておるからだろう。

天通終わった後もいろいろ見て回ろうと思ったのだが、人が多すぎてやる気をそがれた。ここまで来てすぐに帰るのも何だったので、仕方ないからドームの休憩用観客席で二時間くらいボケっとしてました。そして気付いた。女子のスーツ姿は素晴らしい。

あの絶妙な襟のたち具合は悶絶必死。胸元に目線が行けば即敗北です。だから俺は目線を下げんことに注力したわけだ。ところが俺の隣でジュース飲んでるピーナツは卑猥な垂れ目でスーツを追いかけておるではないか。俺はいろいろ心配してこやつを誘ったわけだ。マントルばっか見つめておったら視野が狭くなるから少しでも大海を見せてやろうと思ってさ。まったく、俺の良心を返してほしい。ピーナッツか大根か知らんが、まあ、元気になったのはいいことだ。もっと視野を広げてくれたらうれしいぞ。お前の今後の進路に活かしてくれればいいと思う。意を決して下に降りたら、あさみんに会いました。その後は三人でまわったね。まわったって言っても東ラしか見れなかったけど。でも、あさみんの近況を直接聞けてよかったです。なんか、思ったよりも凹んでないね。(笑) いろいろ吹っ切れたのかな。ポジティヴなあさみんらしくていいと思います。

 で、その時あさみんには言ったんだけど、中林と二条院。二二日は都合悪いから、俺、行けません。大変申し訳ない。土下座はせんけど許しておくれ。

泊まりがけで奥飛騨にスキーしに行かねばならんのだ。結構前から入ってた予定、かつ、俺言い出しっぺの旅行だから、ドタキャンするわけにはいかんでしょう。わかってくれ。わかってくれんでも、行けんもんは行けんのだから仕方ない。お前らにあさみん並みの理解力が備わっとらんだけの話だからあきらめろ。サルボボくらいは買ってきてやるからさ。

ついでに業務連絡すると、年忘れクリスマス会の日程はイヴで決まりました。決定事項だからよろしくね。時間は一八時からいつもの教室です。教室と言ってもこの部屋は、もはや金ゼミ教室と化しているから、きっと誰にも怒られまい。角先輩が無駄にでかいクリスマスツリーを持ってきた時点でこの部屋の運命はきまってしまったのだ。お姉さま方が教室を素敵に大人デコレーションしてくれるそうだから楽しみにしとけ。

 それだけだ。ばいちゃ。


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