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ビバ☆就活体験記  作者: マナブハジメ
第一章 「説明会と、学園祭と、木工用ボンド」
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九月二九日  谷本直毅

ちなみに、当時は森見登美彦さんの小説がツボにはまっていたため、このような日記形式で書いてみようと思ったのでした。とても楽しかったです。一人日記。。。

九月二九日  谷本直毅


 今日、初めて学内説明会とやらに行ってきました。

三木森らしきツイストパーマを見かけたんだが、まさかお前じゃないよな? お前だったら、何で俺に連絡してくれなかったんだ。一人で企業ブースを回るのは、ちょっと勇気がいるもんだ。まあ、途中から慣れたがな。俺のこの適応力をもってすれば、ガラパゴスでも生き延びられるだろうよ。このたくましさを企業は見抜いてほしいもんだね。来ていた企業はなかなかよかったぞ。結構有名なところばかりだった。俺が知らない企業は二、三個だったかな。

 最初に説明を聞いたのは、テレビ旭だった。要はテレビを作ってんだろ、と思って話を聞いていたんだが、そのイメージで大枠はあってると思う。というか、あんまし興味がなかったから詳細は覚えてない。だったら日記に書くな! とは言わないでくれ。一番最初に書きたかったんだから、しょうがないだろ。人事の人は、六本木に本社があることをやたら自慢してたかな。俺は六本木に行ったことがないからよく分からんが、テレビ番組とかで六本木がお洒落だということぐらいは知っている。だから、仕事帰りにコンパとかデートするにはいいのかもしれない。要は、お洒落さん向けってことだろう。

 学生の一人が、「テレビ局ってどれくらい忙しいんですか?」という質問をしていた。人事曰く、仕事が楽しいから忙しいとは感じない、のだそうだ。言葉を濁すのも甚だしい、と思ったが、俺は何も言わなかったさ。でもその人は結婚指輪をはめてたから、家庭と両立できるかはその人次第なのだろう。

 次に見たのは二新食品だ。下宿生は結構お世話になってるんじゃないかな。カップヌードルとか作ってる会社だからさ。個人的主観も交えて端的に述べると、かなり面白そうな企業だ。文系の人間でも、商品企画の時にたらふく試食ができるらしいぞ。食費がフワフワ浮いてお空に飛んでいきそうだ。山井さんみたいにスタイルを気にしまくる人はちょっと厳しいかもしれん。でも、営業とかに行けば、動くことも多いだろうから、問題ないと思う。説明してくれている人も、男だったが、メタボではなかったよ。あと、この企業が待ち時間にスクリーンで流していたコマーシャルが、めちゃくちゃ格好よかった。何やら、ワールド・イズ・フリー、がテーマらしい。俺たちみたいに世界をひっくり返してやろうと思っている若者にはぴったりなテーマだと思わんかね諸君。スタイリッシュなアニメーションを使っているところがまた憎いんだなこれが。

 三つ目に見たのは、ビー・アンド・シー、という、コマーシャルでよく見る外資系消費財メーカーだった。ここはすごいぞ。冗談抜きですごい。何がすごいって、社内公用語が英語なのだそうだ。英語ができなきゃ入れんよ、きっと。周りの学生がヒソヒソ話していたんだが、ここの企業のマーケティングがヤバいらしい。何がやばいのかよく分からんが、やばいらしい。たぶん、いい意味でのヤバイだと思うが、確認は取れてませんのであしからず。

 そういえば、なんとかっていう雑誌の、働きやすい企業ランキングで一位をかざってるらしいぞ。人事の人が女性だったのだが、白桃のようにピチピチ輝いていた。だから、女子にも働きやすい職場なんだと思う。でもその人は、男女平等という言葉の意味を取り違えないでほしいとも言っていた。たぶん、女子に向けて。男の人と平等に扱ってもらうというのは、それなりに厳しくて、泣いてしまうこともあるのだそうだ。そういう叱咤激励に耐えうる人じゃなきゃやっていけないよ、みたいなことを言っていたから、俺の中ではかなり印象が良かった。意識の高い人材が集まっていそうな素晴らしい企業だと思う。

 俺が最後に見たのは、デルタ、というベンチャー企業だった。会場をふらふら歩いていると、学生が一人もいないブースがあったから、今日最後の記念にと思って立ち寄ってみたのだ。感想としては、まあ、悪くない、といった感じでしょうか。携帯電話で遊ぶゲームを開発している企業なのだそうだ。文系の人間はほとんど営業だが、ゲームの企画やイベントの企画なんかもできるそうだから、まあまあ面白そうだな。

 今日の報告はこれくらいです。

 ここからは就活自体には関係ありませんが、前のページでこの日記への参加を宣言してくれた、田中さん、山井さん、二条院、ありがとう。この大学ノートも賑やかなものになりそうでなにより。べつに参加の宣言をせずとも書きこんでくれてかまわんから、他の奴らもちょくちょく顔を出してくれたらうれしいぞ。どうせ阿呆なお前らだから、既にこのノートを手にして、目を通しているはずだ。落ちている飴でも躊躇なくねぶりそうなお前らだから、放置ノートなんぞ開かずにはおれんのだろう。まあ、何でもいいから情報を書いていけ。

 腹が減ったから帰る。それでは。


(追加)  二条院


 日付は変わったが、べつにたいしたことではないのでここに書く。ビー・アンド・シーについてもっと詳しいことを教えてくれ。

 以上。


(追加)  田中麻美


 おはようございます。日付が変わったっていうことは、さっきまでこの部屋に二条院君がいたってことかな。どこかですれ違ったかもしれませんね。実は私も、昨日の学内説明会に参加していました。確かにツイストパーマいたよね。(笑) 私が見た企業は、ほとんど谷本君とかぶってるから、代わりに二条院君の質問に返事するね。ビー・アンド・シーは、谷本君が書いていた通り、外資系の企業です。マーケティングがものすごく上手な企業で、この部門の人たちは世界中のトップ企業から引き抜きがかかるくらい優秀なのだそうです。マーケティングとか営業とか、部門ごとに採用してるらしいから、それぞれ難易度は異なるらしいよ。私も詳しいことは分かんないから、今度会った時にでも、パンフレット渡すね。あと、十月中に私たちの大学向けのセミナーを開いてくれるらしいよ。だから、インターネットでプレエントリーしておいた方がいいかも。私がわかるのはこれくらいです。役に立ったかな?


(追加)  笠井一(はじめ)


 谷本、人を阿呆呼ばわりするでない、この阿呆が。お前にいいことを教えてやろう。テレビを作っているのは電機メーカーだ。番組を作っているのがテレビ局だ。だからテレビ局にテレビは作れない。メーカー志望として一言言いたくなったので足跡を残した。じゃあな。


(追加)  二条院


 田中さんありがとうござります。早速パソコン室でプレエントリーしてきました。

 まだ大学は始まっていないと思うのですが、田中さんは何をされているのでしょうか。サークルでしょうか。俺は図書館で勉強をしていました。涼しいから、なかなか快適ですぞ。ついでに、家庭教師として試験問題も作っていました。パソコンで問題を作ると、どこか機械的でよそよそしくなってしまうから、私は手書きで作るのです。その方が人間っぽくて生徒の方もやる気が出るのです。

 ところで笠井。経済学部である俺たちは所詮文系人間だ。メーカーはテレビを作るが、テレビを作るのは理系の人間だ。この命題からわかる真理を考えても見ろ。だから、お前が偉そうに吠えるでない。

以上。


(追加)  山井里央


 結構書かれてるからびっくりだよ~。その命題からわかること? なんだろぅ? メーカーは理系の人間ってことかな? あれ、メーカーが人間になっちゃった。(笑) メーカーが歩いたら、ちょっと面白いかも。(笑)

 あのさぁ、笠井君も、二条院君も、喧嘩っぽいのはやめようよ~。もっと楽しい感じがいいと思います。就活は楽しんだもん勝ちって先輩言ってたよ。だから、楽しもうね。


(追加)  笠井


 確かに山井の言う通りだ。言葉の端々にトゲがあったこと、謝ります。谷本、ごめん。

しかしだ、二条院。メーカーは決して理系だけの企業ではないぞ。ここだけは譲れないから反論しておく。文系は文系の能力を活かして活躍しているんだ。これ以上はまた喧嘩っぽくなるからやめておく。口頭での議論なら二四時間受け付けているから、かかってこい。

飛ぶ鳥跡を濁さず。さらば。


(追加)  二条院


 俺の前文「ところで笠井」以降は良くなかった。俺もこれは楽しい日記にしたいから、詫びます。すまぬ。そして、後輩に無様な書面を見せつけた己自身よ、憐れなり。

 ところで笠井、待っておれ。

 以上。


(追加)  田中麻美


 二条院君。私はサークルの用事で学校に来ていました。もうすぐ学園祭があるので、出し物の練習をしていたのです。私たちの部室にクーラーはありません。だから、ものすごく暑かったです。でも、すっごく楽しかったよ。学園祭本番は、みんなで見に来てくれたらうれしいなあ。家庭教師のアルバイトをしているなんて、なんだか素敵です。二条院君は頭がいいから、その生徒さんはラッキーだと思います。手書きで問題を作る姿勢も、心がこもっていて、感心してしまいます。私だったらすぐにパソコン使っちゃうなぁ。ちょっと反省です。

 今日はもう遅いので帰ります。バイバイ。


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