LE-4エンジン開発ヲ阻止セヨ
N-Iロケット
第1段エンジンは米国製MB-3だが、第2段エンジンは国産のLE-3だ。
日本はQロケット用に開発していた液体エンジンLE-3を、無事完成させていたのである。
米国ペンタゴン某所某高官
「日本にデルタロケットを導入させたのはいいが、2段目で国産エンジンを使われてしまった。
このまま開発が進めば、我国のコントロールを離れる恐れがある。
次のロケットでは全段米国製にできないか」
ジェットエアロ社幹部
「以前、アポジモーターでは、当社は泥を被りました。次は是非、当社製で・・・」
ダインロケット社幹部
「いい方法があります。それは・・・」
宇宙開発事業団某所
新型ロケット用2段目エンジンLE-4試作品を前にする技術者2人
「N-IロケットではLE-3エンジンが問題なく動作したし、このLE-4も成功間違い無しだな」
「そうですね、このLE-4が成功すれば、世界に通用する2段目液体エンジンを持つことになる」
「だな、そして、液体エンジンを世界に輸出するきっかけになるかも知れないな。これは凄いことだよ」
LE-3エンジンをベースに開発しているLE-4は、大幅な推力アップを狙っている。
そして驚くべきことに、再着火能力まで備えるのだ。
2段目エンジンとして、世界一流のエンジンだ。
そして、優秀なダインロケット社の技術指導も受けて開発は順調に進んでいる・・・かに思えた。
ジェットエアロ社から2段目用として、AJ-10エンジンの魅惑的な売り込みがあった。
なんと、ライセンス生産も米国政府の許可が下りるという。
結局、新型ロケットN-IIの第2段エンジンは、ジェットエアロ社AJ-10エンジンが選定され、LE-4の開発は中止された。
現状の試作品では、まだ推力が上がっていない。このまま開発を進めるより、確実なライセンス生産が選択されたのは、理屈では分かっている。
「悔しい。あと1年あれば・・・いや、もっと開発スピードが速ければ・・・」
醍醐主任は心の中で、密かに涙を流した。
米国ペンタゴン某所某高官
「日本の新型エンジン開発を上手く中止させたようだな。素晴らしい手腕だ。一体どんな手を使ったんだ?」
ダインロケット社幹部
「技術指導の対応を遅らせました。日本の連中には訳が分からないでしょう」
素晴らしいダインロケット社の技術指導。
チェック・アンド・レビューによる技術指導だが、安全性を装って意図的な開発遅延が行なわれていたのだ。
またしても、米国にしてやられたのだ。そして、ジェットエアロ社の逆恨みなリベンジでもあった。
しかし、日本側の誰もそのことに気づかなかった。醍醐主任でさえも・・・