ふじの雌伏
HOPE計画は、結局、完全に中止された。
無人補給機HTV計画が本格化したためである。
宇宙開発事業団先端ミッション研究センター某所
「結局、コストか」
醍醐センター長は呟いた。
無人化したHOPE-Xでも、使い捨て型のHTVにコスト面で圧倒的に敵わない。
なら、どうするか?
醍醐はセンター内で意見を募った。
「うん?これは」
使い捨てのカプセル型有人宇宙船
3人乗り、総重量3トン 製造費見積8億
H2Aの最小構成でも十分打ち上げ可能だ。
その場合、H2Aは85億、このカプセルと、別途開発が必要な緊急脱出装置を含めても、約100億程度で打ち上げられるのではないか?
スペースシャトルは1回の打ち上げに約1,000億かかるという、ソ連のソユーズは公式情報は
ないが、一説には1人当たり40億、x3で120億という。
「これはいけるぞ」
醍醐は、久しぶりに心が躍った。
かつてのヤマト計画、そしてHOPE計画、有人宇宙計画は何度も潰れてきた。
だが、このプランなら技術的にも、そして何よりコスト的にも問題ない。
センター内で愛称を募って「ふじ」と決まった・
「ふじ計画」いいじゃないか。
当面は本格的な予算がつかないが、ペーパープランとして進めよう。
2003年2月1日
米国コロンビア号空中分解事故発生
スペースシャトルコロンビア号が、大気圏突入時に空中分解、乗組員は全員死亡するという悲惨な事故
が発生したのである。
ふじ計画は凍結された。
ペーパープランは完成し、2年前に発表している。
だが、今、実際に有人宇宙船開発に着手したら、人命無視としてマスコミ騒ぎ出すのは明らかだ。
また、しばらく雌伏の時は続くのだろう。