5話 「1ヶ月」
俺達がこの世界に来てから1ヶ月が経過した。
思えばこの1ヶ月かなり色々あった。
色々とあった……あれっ?
最初の11日間以外ほとんど何も無かった気がするぞ。
青山とパーティを組み、ペルナが仲間になり、クリーネさんを倒して、家を手に入れた。
あれぇ……これ以外は青山とペルナに連れ回された記憶しかないような……
青山にクリーネさんの店に無理やり付き合わされたり、ペルナにカエル狩りに無理やり連れていかれたり、そんなことしかしてない気がする。
もちろんクエストにも行ってはいたが、特に何の問題もなかった。実際ペルナはグングニルの使用回数を、青山は魔力消費を気をつければ何も問題ないのだ。
もうちょっと意味のわからない出来事が起こってもいいのに逆に何も起きない。
ちなみに俺がちゃんと戦力になっているのかと言うと、まぁそれなりにはなっているつもりだ。
青山に武器エンチャントを教えてもらったりしたおかげでそれなりに戦えている。しかも今持っている黒い剣も本当に業物のようで、普通の魔物程度なら簡単に斬れる。カエルも、まぁそれなりに頑張れば斬れる。
つまりそれなりに冒険者として生活できているのだ。
正直最近は、今日は何に付き合わされるんだろうかということしか考えてない。
あまりにもこの異世界生活順調過ぎるだろ、とか自分ですら思う。嵐の前の静けさってやつかな?いや、これは違うな。
「ユート!キメラ狩りするぞ!!」
「却下」
突然白髪ロングロリっ子ことペルナが入ってきた。せめてノックぐらいはして欲しいものだ。
「何故だ!?グングニルの強さを測るための狩りなんだからいいだろ!?」
「グングニルの強さを測るよりも死ぬ確率の方がたけぇわ!!」
キメラ。ゲームだとかファンタジーだとかでよく聞く合成獣である。
この世界のキメラは面白いほどに色んな種類がいる。何が混ざったらそうなるんだと言いたくなるようなやつまでいる。
だが、どんなに変な形のキメラでも魔力も多く無駄に動きが早い。混ざっている数が多いほど強くなるんだとか。さらには魔法まで使いやがる。
そんな魔物であるため、キメラに挑む際は20人以上のグループで行くことを推奨されている。
そんなやつにペルナは2人で行って、グングニルが効くかを試すと言った
「なぁペルナよ、あのわけのわからない存在自体がチート……異常なやつにグングニルが効くと思うか?」
「グングニルは最強だからね、絶対効くとも!」
「じゃあ1人でも大丈夫だな。それじゃ頑張れよー」
「あたしに死ねって言うのか!?」
「2人で行っても死ぬわ!!」
「ハッ、確かに!!」
絶対アホだよなこいつ。
ちなみにグングニルは実際かなり強くて、圧縮状態で撃てばギリギリとはいえ3発で少し弱めではあったがドラゴンすら倒せる。
すっごーい、つよーい!!
ん?ドラゴンよりキメラの方が強いのかって?キメラはそもそも存在自体が異常でありチートだからね、仕方ないね!!
「荷物持ちくん、買い物行くから付いてきて」
「買い物行く度々俺を荷物持ちって呼ぶのやめてくれないかな青山さん」
まずノックしましょうか。それからちゃんと名前で呼びましょう。
「男なんだからその辺は仕方ないと思うのよ」
ねぇ、これって男女差別だよな?男だからって理由でそんなことさせられるって充分差別だよな?
そんなことを言っても青山が聞かないのは分かっているので黙って外に出る準備をすることにした。
「あー、ユート連れ出しは今日はアイナの勝ちかぁ……」
「山中くんを連れ出すのにはこれが1番楽だと思うのよね」
「お前ら何勝手に俺をいかに連れ出すか勝負みたいなことしてんの?」
こいつら1回ぶん殴ってやろうか。
そして結局3人で行くことになり外に出た。
改めて今住んでいる家を……いや、サイズ的には小さめではあるが屋敷だなこれ……屋敷を見てみたのだが本当によくこんなものを貰えたなと思う。
クリーネさんには感謝してもし切れない。クリーネさんからは「私を1度倒してくれたことへのお礼です」と言われてはいるが、正直お礼されるようなことは一切していない気がする。
だってあれ青山とペルナが金目当てでさっさと殺しにかかっただけだもの。それどころか魔王が残機をクリーネさんにあげていなかったら、死んでたわけだし感謝されるようなことをしているとはとても思えない。
ちなみにクリーネさんの魔王幹部としての縛りが無くなったのは本当らしく今はこの街で一般人と同じようにのんびり暮らしている。
クリーネさん曰く、冒険者に負けた地点で魔王幹部として認められないとかいう魔王の意思によって解放されたらしい。もしかすると魔王は数合わせ的な形で幹部にしてしまったとか考えてクリーネさんに残機をあげたのかもしれない。
ただそれは確認のしようもないので考えないことにした。
そしてクリーネさんの店に到着。
まず自分の服を買いたいのだとか。お前、さんざん俺を連れてここ来て服買ったくせにまだ買うのか。こいつたぶん、金があったら使っちゃうやつだな、覚えとこう。
「いらっしゃいませ〜、あ、ユートさん達でしたか」
「またまたまたお邪魔してます、何回目かもうわかりませんけどね」
「アイナさんとよく来てますからね。正直ここまで彼女に好評だとは思ってませんでしたよ」
「もうあいつの「これ似合ってる?」って言葉聞きたくないです。疲れましたよ……」
「男の人の考えはよく分かりませんが、シロさんが「女は若いうちに見れる時に見とかねぇと後悔する」とか言ってた記憶がありますよ?だからいいんじゃないですか?」
「クリーネさんの仲間なかなか大胆ですね……」
そのシロさんとかいうやつ絶対変態だろ。クリーネさんそういうの疎そうだからわからないだろうけど絶対変態だわ。絶対言葉によるセクハラ常習犯だっただろ。
俺の中でシロさんとやらはとりあえず変態と呼んどこう。
「おーい、中山くーん」
いつもの似合ってるタイムが始まる……もう適当に似合ってるって言っときゃいいかなぁ。
そんなことを考えながら青山の所に向かい青山を発見した。
発見したんだが……
「ど、どう?」
「…………えぇ……」
そんな服まであるのかここ。
はい、まさかのゴスロリです。あのめっちゃヒラヒラのついてる基本白黒構成のやつ。中二病の女子がよく着てそうなあれ。
なんでこんなもんあるんだよこの世界。この世界でこの服の需要あんのか。
「あっ、それはシロさんのアイデアを元に私が考えた服です。ゴスロリ……とかって名前でしたっけ?ちょっと作ってて楽しかったですこれ」
よりによって作ったのあなたでしたか。
というか今ものすごいこと聞いたような。
なに、シロさん考案?しかも名前まで知ってる?いや、そんなまさか……もしかしてそのシロとかいう変態さんも俺達と同じ境遇にあった人間なのか……?
「クリーネさん、シロさんのフルネームわかります?」
「もちろんですとも」
「山中くん、こっちの質問に反応してよ!!」
青山の服の談義は今は重要なことじゃない。今はそのシロさんとかいう人のことを聞いてみなければ。
「えっと、確かヤマダナシロでした。なんだかユートさんやアイナさんとちょっと似てますよね」
わーい、名前的にバリバリ日本人じゃないですか。
そりゃ似てるよ。
似てないけど並びは同じだからな。
こりゃ今度考えて見るべきかもしれない。もしかしたら他にもいるかもしれないし。
すると急に頭を思いっきり叩かれた。
なんで、いやなんで?
「いい加減に答えなさいよッ!こ、こっちだってこの服ちょっと恥ずかしいんだから!」
そんなことをめっちゃ顔近づけて言ってきた。
ごめん、やめて。
黒髪ロングゴスロリとかやめてくれ。
元の世界で中二病女キャラが好きだった俺からすれば色々とキツい。普通に恋に落ちてまう、惚れてまうからやめて。
「ま、まぁいいんじゃないですかね……?」
「よし買った!!」
買うのかよ。
なるべくコイツが着ないように祈っとこう。
「なぁユート!!これどうだ!?」
お前もか。お前も似合ってるタイムするのか。もうしんどいぞ流石に。興奮的な意味で。
覚悟してペルナを見てみるとただポニーテールにしていただけだった。
「うん、バカみたいでかわいいぞ」
コイツにはこれで充分だ。
それを聞くとペルナは、店の角に座り、
「バカってなに……バカみたいでかわいいってなに……」
そんなことを言い始めた。
いや、事実を言っただけだからどうもならん。
「山中くん……いくらペルナがやんちゃだからって彼女にも乙女心はあるんだよ……?」
「乙女心?そんなもん知らんな」
なんとなくわかるけど知らん。
つまり青山はバカみたいでって言葉が蛇足だったと言いたいのかな?あれ、蛇足ってこの使い方でいいのかな。
ちなみに俺がそんなことを考えているうちに青山とペルナはいつの間にか購入していた。
ペルナに関してはなんで落ち込んでたのに買ったんだ……
ちなみにこれを持たされるのは俺である。
この後に食材の購入を済ませ俺たちは帰った。
ちなみにこれを持ったのも俺である。
晩飯を食べ終え、俺はこの家を手に入れてからの習慣を済ませてしまおうと思った。
家事である。
実際家事をするのは普通のことなのだが、元の世界では親がやってくれていた部分もあるので楽だった。
しかしここには俺ら3人しか住んでいない。
つまり自分たちでやるしかないのである。
まずは洗濯だ。
この世界での洗濯は元の世界とあまり変わらない。
なんかよく分からん魔法の入れ物に突っ込んで必要な魔力を流し込めば洗剤生成、洗い、すすぎなどすべて済ませてくれる。しかも機械じゃないので砂などで壊れることもない。
だいたい1時間で終わるのでその間に食器洗い、部屋の掃除などを一気に済ませる。
自分で言うのもなんだが、俺は確かに超インドア系野郎だが、ずっと部屋に篭っていた訳ではない。
父子家庭だったので家事やらないと色々とやばかったのだ。妹もいたがいつも友達と遊びに行っていたので正直に言うと完全に役立たずだった。
つまり俺は高校へちゃんと行き、家で家事や料理をしっかりとしていたうえでゲームまでしていた。ちなみに1日の睡眠時間は3時間だった。よく生きてたな俺。
ちなみに掃除と言ったが掃除機なんて便利道具はないので箒とちりとり、たまに雑巾である。
ん?1時間で終わるのかって?
終わるわけねぇじゃん。
そんなこんなで軽く1時間経過したので確認へ。
そして謎の入れ物の前に先客がいた。青山だ。
でもなんで急にこんな所に来たのだろうか。俺の観察によるとこいつが歯磨きなどをするのは2時間ぐらい後だったはず。
「……ねぇ、ちょっと質問していい?」
「はい、なんでもどーぞ」
「これって洗濯物よね?」
「全くその通りですが」
いったい何が聞きたいんだこいつは。
「……これ使ったのって誰?」
「俺ですよ?」
これとは洗濯できる魔法の入れ物のことだ。
「もしかしてなんだけどね?本当にもしかしてなんだけど……」
「さっさと用件言えや」
前置き長い。
「私のも……洗った感じ……?」
「ここにあった本日青山様がご購入されたゴスロリフリフリ服以外全部ぶち込んだぞ?」
「全部……ということは、下着とかも全部入れたのね?」
「突っ込んだな」
あれ、青山がグーパン準備してる。
なるほどあれか、男の俺が勝手に女子の下着を洗濯するということを許せないやつか。
確かに何かあってもおかしくはないとは思うよ?
あと、エロ系のことを基本考えもしないしそういうこともしない俺でも言えることはある。
こんなんでも俺男だからな。まぁ人によって意見は違うだろうけど。
「あのなぁ、青山」
「なにか言い残すことでもあるの変態?」
いや、変態認定早すぎるだろ。
よくこういうシーンで「俺は何もやってないから!」とか言うやついるけどここでその言葉は何の意味もなさない。結局殴られるだけだ。
どうせ殴られるなら俺は考えていることをそのまま言ってやろうと思った。
「青山よ、男としての意見を言わせてもらうが、下着ってのはなぁ……着けてるのが1番いいんだよ。それ単体であったところでただの布なんだからさ」
「そんなこと力説しなくていいわこの変態野郎ー!!」
いつの間にか俺は宙を舞っていた。
そんな中考えていたのは「反省はしている、だが後悔はしていない」だった。
その後青山に「これからは女子のものを勝手に洗わないこと!」と言われ青山と入れ違いで来たペルナに「ドンマイだな」と言われたところで意識が途切れた。
朝、俺は自分の部屋で起きた。
自分の部屋?
誰かが運んでくれたってのはわかるけど誰が運んだんだ。まぁどっちでもいいか。
時間は9時。俺にしては目覚めるのが遅かった。
大広間に行くと青山だけいた。聞いたところペルナは見事に睡眠中とのこと。
青山は昨日の俺への攻撃のこともあって俺に話しかけにくそうにしていたので言ってやった。
「昨日のことは気にする必要ないぞ。俺は本能に従っただけだからな」
「そ、そんなことはわかってる!」
なんで恥ずかしそうなんだお前は。
そこで急にアナウンスのようなものが聞こえてきた。
「冒険者の皆さん、至急ギルドへ集まってください!!魔王のきまぐれが街の近くで発生しました!!」
……うん、寝よう。
今回でこの3人、雄人、藍奈、ペルナの状態が終わるので(たぶん増える。たぶん)なんとなく日常的な何か(どこが日常なんでしょう)が書いてみたかった。反省はしている、だが後悔はしていない。
ちなみに作者はどんな下ネタだろうと淫〇ネタであろうと面白ければ使います。許してくれ……