3話 「少女は貫き、食べられる」
「話は聞かせてもらったァァ!!」
急に俺たちの前にロリッ子が現れた。
というか2回言ったよこいつ。そんなに大事なことだったのだろうか?
「ところで誰だこいつ」
「私こんな人知らないよ?」
「私が誰かって?ふふふ……あたしだ!!」
「普通に名前言えやァァァ!!」
「フゥゥゥン!?」
青山がキレて殴り飛ばした。
瞬間でキレたな。
女って怖い。
「ハハハァ!残念だったな、バリアを張っていたのだよ!」
「ねぇ山中くん、こいつどうすればいい?」
こいつ自分から現れたくせに、全く名乗ろうとしねぇな。おかげでとなりの青山さんが今にもジャンピングキックかまそうとしてるよ。
「とりあえず名前をどうぞ」
「名乗らなきゃダメ?」
「はよ名乗れやロリッ子」
ヤバイ、青山さんが暴走してる。
「女ァ!お前今あたしのことロリッ子っつったなぁ!?」
「ロリッ子だよねぇ!わかるとも!」
どうやって止めたらいいんだろうこいつら。
青山がまたまた俺の知らない部分出してるし、急に出てきたロリッ子は事実言われてキレてるし。
もうそっとここから消えた方が良いのでは?
しかしこのまま争われても迷惑なのでどうにか抑えることにした。
「青山、新しいアイスだぞ!」
「ハッ、アイス!」
俺の観察眼からの情報。
青山藍奈はアイスが大の好物。冬だろうが毎日食べているのを見たぐらいだ、しかも外で。
そして俺はもう1人を見て、
「名前は?」
「我が教える名などない!」
「これからそこの今は落ち着いてるやつにぶん殴られまくるか名前出すか選べ。あと今は俺も落ち着いてるがこのままだと俺もキレて何するかわからんぞ……?」
「ひ、ヒィ……」
めっちゃビビられた。
どうやら相当怖い顔をしていたらしい。
「ぺ、ペルナ・カミルドです……」
「山中くん、流石にそれはどうなの……?」
まぁ確かにちょっとした脅しにも見えかねんからなぁ……でも俺は悪くないからね。
悪いのは勝手に暴れだした女2人だからな。
何を言われようが俺は知らん。
1分後……
「先程はすみませんでした……改めて、あたしはペルナ・カミルド。あなた達の話を聞いてパーティに入れてもらえないかと思い、話をしに来ました」
「ねぇ山中くん、私この子入れたくない」
「そんなこと言うなよ、こいつだって悪気は無かったんだからさ」
「そういうことじゃないの……なんか後後争いそうな気がするの……」
うん、お前さっきも争ってたよな?
「それでえっとペルナさん?職は?」
「バーサクウィザードです」
「はい?」
「バーサクウィザードです」
「山中くん、この子はハイウィザードよ」
「なんでわかったの!?」
「冒険者カードにそう書いてあるじゃない」
「出してたの忘れてた!」
こいつ、アホっぽいな。でもかなり丁度いいのではないのだろうか?
自分からバーサクなんて言ってるぐらいだ。きっと俺が求めていた遠距離攻撃役にぴったりだろう。
「青山よ、俺はこいつを入れることを推奨する」
「山中くん、私、さっきも言ったけどなんかこの子とは色んな意味で争うことになりそうだからやめてくれない?」
「そんな訳の分からん理由が通じるとでも?」
「ですよね……」
「えっと、つまりどういうことで?」
「ペルナが俺らの仲間になった」
「もう仲間になったって扱い!?テストとか無し!?」
「よかったな。テストとかするのめんどいし、なんかなんとなく必要になりそうな気がしたからな」
「じゃあ明日から早速あたしの力を見せてやる!びっくりして腰抜かしたりすんなよ!」
なんというか元気なやつだなぁ……。
あとで青山も渋々承諾してくれたので無事ペルナが俺たちの仲間になった。
そして次の日……
「見よ!これは全てを貫く炎の槍なり!グングニル!!」
俺たちは唖然としていた。
普通に強すぎる。
現在、俺たちは初心者の苦戦する魔物の1つ、巨大ガエルと戦っていた。巨大ガエルは魔法だろうと接触だろうとなかなか攻撃が通じないことで有名だ。しかも母ガエルを倒したりした場合、なんと何故か体全体から粘液を振りまくように出してくる。これが臭いので色々とキツいのだ。
俺も1度戦ったのだが倒すのに30分ぐらいかかった記憶がある。しかも母ガエルという運の悪さだった。
そしてそんなカエルをペルナは今たった1発で倒してみせたのだ。
なるほど、彼女自身が言っていた通りこれはビックリして腰を抜かしてもおかしくはない。
「ちょっと待って、グングニルなんて魔法があるの……?私の魔導書に載ってないんだけど」
なんと、青山のチート魔導書に載ってない魔法だって?ペルナっていったい何者なんだよ。
「そりゃこの魔法神級魔法だし」
神級魔法?なんだそりゃ。
よくわからんがつまりペルナはチーターってことだな。
「神級魔法ってのはこの世界で稀に見かける神殿の跡とかで稀に発見できる魔導書に載っているとんでも魔法なんだ。しかも1回使うと消えるからね。知らない人の方が多いだろうよ」
やっぱりチートじゃないか。
「ちなみにグングニルは狭い範囲に広い範囲にも使える魔法でね。狙いを1つにして魔力を圧縮した槍を飛ばすのと大きめの槍を作って広範囲燃やし尽くすのとどっちも出来るのさ。当然火力に差はあるけどね」
それでも充分おかしいだろ。
お前女神かなんかか?
「ペルナ、そんな強い魔法持ってるのに私たちみたいな初心者パーティに入ってていいの……?」
それは俺も思った。
どんな攻撃も基本受け切るカエルをたった1発で倒せるような魔法を持っているのだ。他のもっと強いやつらに勧誘されていてもおかしくない。何か理由があるのだろうけれど……
「別にあたしはこの魔法が撃てるならどんなパーティでもいいよ。使う魔法を指定してくるやつらとかあたし嫌いなんだ。それにあんたらはこの魔法を見る前から仲間だって言ってくれたしね」
本当に俺がめんどくさがり屋で良かったと思った。もしもテストとか言ってたら入ってくれなかったかもしれない。
こんな心強い仲間がいるならもう何も怖くない。というか本当にこれもうこいつ1人でいいんじゃないか?
「あ、でもグングニルは消費魔力が多くてさ、1日に2回しか撃てないんだよね……3回目も撃とうと思えば撃てるけど魔力切れで動けなくなっちゃう」
前言撤回。
よく聞くような、よく見るような展開だがダメ系だわこいつ。
まぁ1回で魔力切れになるよりかはマシだろう。そもそも俺みたいに何も無いよりかはマシだ。
……あの剣売らなきゃ良かったかなぁ。
「山中くん、考え事してるところ悪いんだけど、ものすごい悪い知らせがあるの」
「おう、なんだ言ってみろ」
「巨大ガエル4匹に囲まれた」
「おう!詰んだな!!」
どっからどう見ても詰みである。
ペルナのグングニルはあと限界でも2回。俺と青山が協力しても1匹倒すのが限界。しかもペルナがさっさとグングニルを使った場合、ペルナを守りながら戦わなければならない。
例え2匹だけ倒して逃げ道を作って逃げたとしてもカエルの方が足が速いので捕まってゲームオーバーだ。このカエル共、人間だろうと容赦なく食べるらしいしな。
どう切り抜けたものか。
「おい、ペルナ!」
「なんだキャプテン!」
「なんで俺がキャプテンなのかは置いといて、広範囲グングニルでカエルを同時に倒すとか出来るか!?」
「うーん、そこは済まない!流石に広範囲版だと倒しきれない。正直広範囲版グングニルはラウンドファイアの火力が少しだけ上がった程度のものだ!」
マジかよちくしょう。
となるとペルナが倒せるのは2匹が限界か。それでも1匹残る。
ダメだ、方法が思いつかない……!
ここはもうかけるしかないか。
「青山、俺たち2人で1匹倒す!ペルナはグングニルで2匹頼んだ!!」
「残りはどうするの!?」
「そこは完全に運勝負でもあるしペルナが耐えれるかによると思う!」
「えっ、なんであたし?」
「そんなことは今はいい!とりあえず倒すぞ!」
「なんであたしが鍵になるのかは知らないけど、やってやるさ存分に!我が力により造られし獄炎の槍よ!」
「山中くん、私達も行くよ!」
「あぁ!俺は攻撃を行う!!」
そう言って斬りかかる。
ただ、まぁなんとなくわかってはいたが、ほとんどの攻撃が肉に刺さるどころか切り傷もつけれずに跳ね返される。
「フレイムスピアが全く効かないんだけど!?」
「こいつ基本ほとんどの攻撃が効かないんだよ!」
「なんで私達ここに来たの!?」
「それはペルナに言ってくれ!!アイツが力見せるとか言いながら連れてきたんだからな!」
正直このカエルを相手にするのはホントにキツい。
いくら2人で攻めても基本結果は変わらない。
「すまなーい!魔力切れで動けないんだ、早く助けてー!」
ここに連れてきた当の本人はもうグングニルに魔力を使い切ったらしい。
いっそ食べられてしまえ、とか考えてしまうがまだなりたてとは言え仲間なのだ。早く相手してる1匹を倒して助けに行かなければならない。
考えろ……ゲーム脳な考えでもいい。今は早く倒す方法を……!
「そうだ!青山、お前武器にエンチャントとか出来るか!?」
「そういう魔法もあるけどどうするの?」
「あるんだな?なら俺の剣に雷系のエンチャントをかけてくれ!」
「とりあえずわかったわ!エンチャント・ボルト!」
青山がそう言うと、俺の剣が少しだけ黄色に輝き始めた。きっとこれが雷系のエンチャントなのだろう。
そしてまた俺はカエルに斬りかかる。ひたすら斬りかかる。
俺はこう考えた。巨大ガエルの表面はどんな魔法だろうがきっと弾いてしまう。剣での攻撃でもほとんど傷を付けることは出来ない。
しかしやっぱり剣は刃物なのだ。たまにならこのカエルでも傷をつけることが出来る。
そして今俺の剣には雷のエンチャントがかかっている。もしこの状態の剣で傷をつけれたならカエルはきっと麻痺するだろう。
そして動けないカエルを肉の少ない部分、頭から斬ってしまえばフィニッシュ出来るのではないかと。
まぁカエルがデカすぎて頭まで届くのか怪しいという問題があるが、今はやるしかない。
「あぁもうめんどくせぇなぁ!!」
俺はそう叫びながらカエルに攻撃を始めた。
縦切りだとか横切り、思いっきり突いたりもしてみた。
しかし見事に刺さらない。このカエルの体ホントにどうなってんだちくしょうめが!!
そして斬りかかった回数30回目程でやっと傷つけれた。
すると、俺の思った通りカエルは見事に麻痺し痙攣していた。
ただやっぱり1番肉の少ない部分である頭の位置が高すぎる。きっと登ってなんかいたら麻痺から回復して俺は振り落とされるだろう。
ああもう!全然上手くいかねぇなぁ!?
そんなことを考えた瞬間だった。
「グラビティ!!」
そんな声が聞こえ、同時にカエルの顔面が勢いよく地面に打ち付けられた。
やったのは青山だった。まぁ普通に考えて青山以外にこんな魔法を使うやつはいない。
「山中くん早く!効果時間は短いんだから!」
「了解!」
俺はすぐ目の前にあるカエルの頭を思いっきり斬った。
そしてカエルは完全に動くのをやめた。
俺たち2人の勝利である。
「山中くんお疲れ」
「青山もサンキューな。あそこであの魔法使ってくれなかったらたぶん終わってた」
「えっ、あ、その…どういたしまして」
「うんうん、実にいいコンビネーションだったなぁ……ところでお2人さん」
「なんだペルナ?」
「……そろそろあたしを助けてくれないかな……?」
あっ。
勝利の余韻に浸ってて忘れてた。巨大ガエル4匹いたんだった。
残っているその巨大ガエルはもうすでに倒れて動けないペルナの腹から下を口の中に入れていた。
つまり、ペルナは食べられ始めていた。
「ぬおおあああああ!!間に合えぇぇぇ!!」
倒れているペルナを捕食していたのでカエルの頭が下にあった。
猛ダッシュでそこへ向かい、カエルの頭を思いっきり斬ってやった。
カエルは力を失いペルナは無事口から脱出した。
「ゼェ、なんとか、ゼェ、なったか……」
「ねぇユート。下半身がヌメヌメしたもので濡れてるせいなのかあたしちょっと変な気分になってきたんだけど……」
なんかペルナがうねうねし始めた。
「助けられて最初にいう言葉が感謝じゃなくて下ネタとかお前どうにかしてるだろ……」
「ねぇ山中くん」
「なんだよ青山」
「1回死んでみる?」
「えっ」
この後、俺はペルナが言った下ネタが原因で青山にボコボコにされた。
さらに動けないペルナを俺がおぶって帰ることになり、街に着くと当然周りの人――主に女性――から変な目で見られる羽目になった。
マジで泣きそう。というかこれは泣いていいよね?だって俺は何も悪くないんだし。後先考えずあんなカエルのいる所に連れていったペルナが悪いんだし。
「それで結局ペルナをパーティに入れるの?」
「昨日入れてくれるって言ってたよね?」
俺たちはまた昨日と同じように大浴場にて風呂に入りそして飯を食っていた。
変わったことといえばペルナが追加されたという事だ。
風呂上がりの女子が目の前に2人もいるとかすごい光景だなぁ……
冒険者生活始めて5日。あれ、6日だっけ?まぁそんなことはどうでもいいか。
今日のことを振り返ると、どう考えても駆け出し冒険者のパーティがする事じゃないことを今日はしたなと思う。
巨大ガエルを30分のうちに5匹も倒したのだ。
クエストの受付の人にそれを報告するとすごい驚いた顔で反応された。
そりゃそうだ。あの巨大ガエルをいくら強い仲間が増えたからと言って、冒険者になってまだ間もない俺たちがそれだけ倒したのだ。
普通ならありえない出来事だろう。
ちなみに他の2人はそんなことも考えずに唐揚げの奪い合いをしていた。女ってこんな所でも争うの?
俺の冒険者生活は今の地点ではかなり順調だし、充実していると言えるだろう。
しかしここで俺は女神様に言われたことを思い出していた。
俺たちを勇者的な存在としてこの世界に送る。
あの女神様からすれば俺と青山は魔王を倒すかもしれない勇者の1人なのだろう。
ただ、俺はこんなに順調に進んでるのに全く魔王を倒そうという気にはならない。
やっぱり勇者なんて柄じゃない。俺は目立つのも嫌いだし、なにより面倒くさそうだしな。
「ねぇユート、聞いてる?」
「さっきからボーッとしてどうしたの?」
おっと、何か話をされていたのか。
「すまん、考え事してて聞いてなかった」
「まぁ私は別にいいわよ、大した内容でもなかったからね」
「それで明日はどうする?あたしは出来ればちょっと強めの魔物を討伐したいんだけど」
「いーや、私がちょっとやりたいクエストあるの。今日のことを考えれば私の意見が優先されてもおかしくないよね?」
明日もクエストやるのかよ……こいつら疲れとかないのかな。
「お前ら疲れとかないのか?今日だってギリギリだったってのにさ」
「当然疲れてるけど、私は楽しいからいいの!」
「あたしはパーティに入れただけで充分だ。今は疲れよりも喜びの方が大きい」
楽しい……か。
確かに、楽しいことは否定しない。実際あんなことがあったにもかかわらず俺も内心は「明日はどうしようか」という考えの方が大きい。
ただやっぱり疲れがあるからな……癒しが欲しい。
しかしそんな俺の思いも全く考えられることなく予定は埋められるのであった。
なんというか適当すぎてすまない。誤字脱字とか変なところあったら指摘ください。どうにか直します。あと、たぶん最初のうちはこれぐらいの短いやつを出し続けると思います。想像力が足りないんです……すみません。
それでは今回もこのグチャグチャ内容の話をお楽しみ……できたらしてください。